北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム2012
エネルギー政策を考える
   〜エネルギー選択と社会・経済の行方〜

(10-10)

各パネリストから最後に一言

宮崎 会場からいただいたご意見も踏まえて、まとめのコメントを最後にお一人ずつお願いしたいと思います。

 

 私が当時の通産省に入ったのは昭和56年。その頃と今を比べて全然違うのは、国が原子力の政策的必要性について説明責任を持っていたことです。そして運営・実施の責任を電力会社が負う。大きく分けてそういう役割分担がありましたから、地元のほうも「反対の人がいても最終的には国の政策に協力するんだから、誘致をするんだ」ということで決着しました。

澤 昭裕 氏 ところが震災以降、政府が揺らぎ始めました。民主党政権だからというわけではないと思います。デモで表わされるような世論を見ながら、原子力が政策的に本当に必要なのかについて、政府自体が悩み始めた。

 ところが、電力会社は資産を作って運営しているわけですから、運営責任が解かれたわけではありません。経営に役立つように運営していくことが自分たちの責任なので一生懸命やっているわけですが、逆に政府がちゃんと言ってくれないから、電力会社自身が政策的必要性を説明し始めたというところに変なことが起こるわけです。そんなことをする必要はない。むしろ運営・実施面で、安全性向上のために何をしているかを皆に示し、それに専心してほしいというのが今の気持ちです。

 

小沢 現時点では、福島の復興が最優先課題だと思います。土の除染が1%もできていないと聞きました。1年7ヵ月が経ち、復興予算が計上され増税も決められた。それでも、多くの住民が、生活基盤を失い、行き場のないままだというのでは、国中にひろがった不安は、とうてい拭えるものではありません。安定供給という言葉は、供給されるものの質、供給する方法などが信頼されることもふくまれているのだと思います。でも、まだ福島で何が起こったのか、どうして起きたのか、誰がどう責任をとれば良いのかもはっきりしていません。こんな状態のまま新しいエネルギーが語られても、心もとない感じがつのります。

小沢 遼子 氏 まだ都会中心かも知れませんが、鉄道の駅にエレベーターやエスカレーターが増えて来て助かるんですよね。電気に助けられれば、少子化がすすむ世の中で年輩者がやれる仕事もけっこうあるんじゃないかと思うんですが。

 これからは、電力が本当に必要なところはどこか、どれだけの量か、何から得るのがいいのか、など考えなければならないことが色々あります。どう言われようと「原子力はもういやだ」と思わせている今までのありかたについて、「原子力 ムラ」の人たちには、よくよく考え反省してもらいたいと思います。「何もわからないであれこれ言うな。原子力こそは大事なんだ」とヒトの無知をあざ笑うかのような思い上がった態度はやめてほしい、そう思います。

 

奈良林 先ほど重要なご声援・ご指摘をいただいた通り、原子力の安全性については、次の世代も含めて何百年も続いていくものだと思います。高レベル放射性廃棄物についても、100年、500年という単位で考えなければなりません。現在は、建物に保管する技術が確立されています。ただちに埋めるのではなく、建物で保管できる40〜100年をかけて科学技術を進歩させ、評価をして、いろいろな方々とディスカッションをして、海外の埋設処分方法なども踏まえて安全性を担保し、合意形成を図っていくことが必要だと思います。

奈良林 直 氏 3.11のあとにも関わらず原子力を学びに来てくれている学生たちに対しては、どうしたら原子力発電所の安全性を確保できるかを教え、将来の英知を見続けていかなければならないと思います。今日いただいたご声援は非常に嬉しく、涙が出そうになりました。ただ、それは「しっかりやってほしい」という叱咤激励であると認識しております。先ほど「原子力はコントロールできないでしょう」というご意見もありました。確かに福島の事故ではコントロールを失っていましたが、電気がなくてポンプで冷却水が入れられない、バッテリーが切れてバルブが開かないという、本当に些細な準備ができていなかったことが原因です。真剣に検討し、準備しておけば防げた事故でした。

 万一のことが起きても、きちんと備えを用意しておくことが必要だと思います。安全性を高める研究については、私だけでなく世界中の多くの人が取り組んでいます。仮に日本から原子力がなくなったとしても、韓国や中国、サウジアラビアなど、日本の技術を必要としている国がありますから、世界に向かって情報を発信していかなければならないと思います。

 私は今年5月、ロシアのモスクワに行きました。「福島の事故はこうだった」「フィルターを付けないとダメだ」と言ったら、500人の専門家が「ロシアの全原発にフィルターを付ける」というのを大会宣言に入れてくれました。そのように、世界に向かって安全性を高める情報を発信することが重要です。今日は私の話を聞いていただき、ありがとうございました。

 

宮崎 緑 氏 宮崎 「水を飲んだら井戸を掘った人を思い起こせ」という言葉があります。これはとても大事な感覚だろうと思います。電源立地村からいらした方のご意見にもありましたが、エネルギーを使う人自身が、それがどこから来たかを想像してみることが大切です。

 エネルギー問題は、政治や国際社会、文化に関わる問題であると同時に、生きるとは何か、命とは何かということにも関わる根源的な問題であると改めて思った次第です。こういうディスカッションの機会を少しでも増やし、よりよいエネルギーのあり方を私たちの内側から生み出していく姿勢も大切だろうと思いました。

 パネリストの先生方、会場の皆さん、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。

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