北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム2012
エネルギー政策を考える
   〜エネルギー選択と社会・経済の行方〜

(10-3)

エネルギーシンポジウム2012『革新的エネルギー・環境戦略』について検証

日本のエネルギー戦略はどうあるべきか

宮崎 小沢さん、今のお話をお聞きになっていかがですか。

 

小沢 私も「革新的エネルギー・環境戦略」を読みました。おそらく何人かで手分けして書いたのだろうと思いますが、一部、かなり若い方が書いているらしい文章があります。

小沢 遼子 氏 「はじめに」というページの文章を紹介すると、「平成23年3月11日に発生した、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故。それは、私たちが選んできた過去と思い描いていた未来に、根源的な疑問を突きつけた」とあります。ここで言う「私たち」とは日本国民のことだと思いますが、「私は原子力を選んでこなかった。前から反対だった」という人もいらっしゃるはずなのに、こういう言葉で始まるところが実に子どもっぽい(笑)。しかも、途中から主語が「政府は」と変わり、冒頭の文学的な表現によって何を言おうとしたのか、誰が選んだどんな過去と未来なのかが内実として見えてきません。ですから、お役人がずいぶん気軽に書いたんだなと思うわけです。

 原子力について、私が一番に思うのは環境問題との関連性です。原子力はCO2削減に貢献する大型電源ですから、環境問題が深刻化し始めたときから、原子力業界は「しめた!この線でいけば原子力を増やすことができる」と思ったことでしょう。強硬な反対派が少なくなっていったのもその頃ですから、それに伴って原子力関係者の気が緩んでいった面が間違いなくあると思います。

 ですから私は「革新的エネルギー・環境戦略」について、先ほどのような文学的表現から始めるのではなく、これまでの原子力政策はどうだったのか、それに政府がどのようにコミットしたのかなどをきちんと総括するべきだと思います。そのうえで現状の問題点を提起し、原発ゼロにしなければならない必然性をまず言うべきだと考えています。

 

奈良林 澤さんのお話にもありましたが、再生可能エネルギーが今後日本の基幹電源にできるという保証はまだありません。現在は試験段階で、バイオマスなど一部の分野では成功していますが、太陽光は海外のほとんどの国で失敗しています。ですから、まだ保証が取れないのに「原発をゼロにして、再生可能エネルギーを増やせばいい」という単純な考えでは、私はうまくいかないと思います。

 

宮崎 エネルギーの中身については、後ほど解説していただくことにしましょう。澤さん、政府はこれまで一体何をしてきたのかという気がしますが、どう思われますか。

 たぶん民主党は、エネルギー政策に対する十分な知見と経験はありませんので、難しい面があるのだとは思います。ここで図をご覧ください。

日本の発電電力量の推移

 これは、日本の発電電力量の電源比率の推移を示しています。原子力は、約40年の歴史があるとわかります。エネルギー政策、特に電力政策を考えるときには、全体に目配りをして俯瞰的にものを見なければなりません。ところが、今の脱原発の考え方は、原子力をなくすことを急ぐあまり、その不足分をどんな電源で埋めるのかが現実的に考えられていなく、再生可能エネルギーに対する期待だけが大きすぎると思います。この図で見ると、グラフの一番上にある小さな赤い部分が再生可能エネルギーですが、未来は非常に大きなものになると思い込んでいるとしたら、考えが甘すぎると言わざるを得ません。

講演の様子 メリットとデメリットを組み合わせていくという地道な作業をせずに、主張したいことだけを並べただけの戦略のない政策になってしまっています。最後は総理に全部預けて決めてもらわないといけないし、総理が決めても党の中が割れてしまう。特に今回のエネルギー政策のように、非常に複雑で多岐にわたり、広い視野で考えなければならない案件に直面したときが民主党政権だったというのが、日本にとって不幸な出来事だと思います。

 だからといって、自民党ができるかというと別問題です。今の状況では、自民党も問題を先送りしようとしているだけで、何も具体的な対案が出ていません。日本全体が政治主導と言いながら、政治が責任を取らないという矛盾が大きく出ていると思います。

 

宮崎 そういう政治家を選んだ私たちが悪いのかもしれませんが、だからしょうがないというわけにもいきません。小沢さん、ご意見がありそうなのでどうぞ。

 

小沢 民主党政権になってから3年経ちましたね。しかし、原子力はずっと昔からあります。その間に重なってきたものが、ここに来て矛盾として噴出したわけです。

 津波は想定外だったかもしれませんが、福島第一原発事故で爆発したものの実体さえ、いまだに解明されていません。原子力やエネルギーに関する考え方として、前の政権から受け継いだ良い面が継承されていればまだしも、そうした蓄積が政治の世界にないことが問題だと思います。それまでは、エネルギーについて国会で真面目に討論されることなく来たわけですから。

小沢 遼子 氏 ですから、今さら「革新的エネルギー・環境戦略」を民主党が作っているのは、原子力とどう向き合っていくかについて、政治家としてきちんと議論してこなかったからです。「原子力は危険だけれども、日本のエネルギー安全保障や安定供給、経済性を考えたときに、これは必要なものだ」という確固たる考え方を構築できないまま、気がついてみたら日本で54基も原子炉ができているわけです。

 今までの原子力行政がどうだったのかについては、お役人もメディアも全体で考えなければならない問題だろうと私は思います。民主党以外に、この党なら原子力政策やエネルギー政策は信頼できるという選択肢があればいいんですが。目の前のものを批判するよりも、今後どうしたらいいかについて真剣に考えなければならないと思います。

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