北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える
【第二部】 地球温暖化対策と原子力

(9-6)

チェルノブイリ事故は日本で起きない

宮崎 さて、先ほどから「NIMBY」の話もありましたが、原子力というのはイメージで怖いと思いがちなのか、本当に危ないのかについて確認しておきたいですね。

 「安全」と「安心」は、わが国の政策では「安全・安心な」とくっつけて使われることが多いですが、本来は質の違うものです。安全は技術で追求できますが、安心は心理ですから、仮に120%安全なものがあったとしても、不安を持っていれば安心はできない。逆に、危険なものを認識しないでいたら、安心してしまうかもしれない。

 そこで、原子力技術は安全なのかということを奈良林先生からお話しいただきたいと思います。

ウラン235とウラン238の変化

 

奈良林 原子力の安全というのは非常に大事なものです。おそらく皆さんは誤解されていると思いますが、チェルノブイリ事故は日本では絶対に起きません。

 日本の原子力発電所は軽水炉といい、冷却材として水を使っています。核分裂をすると中性子ができますが、そのスピードが水の中でゆっくりとなって、ウラン235に近づくとまた核分裂をします。このときに重要なのは、水を使ってスピードを落としていることです。チェルノブイリの原子炉では、炭が使われていました。水は温度が上がると密度が下がる。つまり、水が少なくなると、中性子のスピードを落とす能力が弱くなります。ですから、日本の原子力発電所で炉心を操作しようとしても、自動的に出力を下げてしまうしくみです。これが日本の原子力発電所です。

 

小沢 つまり、水のおかげで弱ってしまって、自分では爆発できなくなるわけね。

 

奈良林 おっしゃる通りです。そういうことについて、専門家が声を大きくしてしっかり皆さんに発言しないといけない。私も含めて責任があると思います。今日はこれだけ大勢の方に集まっていただいたので、それだけはしっかりお伝えしたいと思います。

 チェルノブイリのような大事故は、日本やアメリカ、ヨーロッパの原子力発電所では起きません。ただし、原子力では2大事故があり、チェルノブイリ事故の前にアメリカで起きたスリーマイルアイランド事故があります。そのときは、炉心を空焚きにしてしまいました。水が抜けたときに緊急炉心冷却装置が働きますが、それが働いて水がちゃんと入っていれば、炉心が損傷することはなく安全に止まったはずです。しかし、そのときに中の水位を示す計器が恣意誤差を起こしていた。運転者はその恣意誤差を見て「水はいっぱいになった」と勘違いし、スイッチを切ってしまった。これがスリーマイルアイランド事故の原因です。

加圧水型原子力発電所(PWR)

 もう一つ大事なのは、原子炉格納容器です。先ほど日本製鋼所の原子炉圧力容器の話をしましたが、その外側に、ガスタンクのような厚さ40ミリ近くの原子炉格納容器があります。原子力発電所では、仮に炉心で放射能が漏れても、この格納容器で閉じ込めるようになっています。スリーマイルアイランド事故で炉心が損傷する事故が起きても、放射能は全く外に出ませんでした。一方、チェルノブイリ事故では天井がコンクリートだけで、鉄板がなかった。だから天井が抜けて世界中に放射能をまいてしまった。そういう大きな違いがあります。

 ですから、技術で放射能を閉じ込めることはできます。大事なことは、さまざまな計器が正常に働くように点検をしっかりすることです。それには日々の努力しかありません。日本でもちょっとしたトラブルはありますが、どこにも放射能は出ていません。しかし全部事故と報道されています。美浜原子力発電所でお湯をかぶって亡くなってしまった人がいますが、原因は放射能ではなく、お湯によるやけどです。そういう点検をきちんとやることが、わが国を含めて原子力発電所のいちばん大事なことです。

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