奈良林 おっしゃる通りです。そういうことについて、専門家が声を大きくしてしっかり皆さんに発言しないといけない。私も含めて責任があると思います。今日はこれだけ大勢の方に集まっていただいたので、それだけはしっかりお伝えしたいと思います。
チェルノブイリのような大事故は、日本やアメリカ、ヨーロッパの原子力発電所では起きません。ただし、原子力では2大事故があり、チェルノブイリ事故の前にアメリカで起きたスリーマイルアイランド事故があります。そのときは、炉心を空焚きにしてしまいました。水が抜けたときに緊急炉心冷却装置が働きますが、それが働いて水がちゃんと入っていれば、炉心が損傷することはなく安全に止まったはずです。しかし、そのときに中の水位を示す計器が恣意誤差を起こしていた。運転者はその恣意誤差を見て「水はいっぱいになった」と勘違いし、スイッチを切ってしまった。これがスリーマイルアイランド事故の原因です。

もう一つ大事なのは、原子炉格納容器です。先ほど日本製鋼所の原子炉圧力容器の話をしましたが、その外側に、ガスタンクのような厚さ40ミリ近くの原子炉格納容器があります。原子力発電所では、仮に炉心で放射能が漏れても、この格納容器で閉じ込めるようになっています。スリーマイルアイランド事故で炉心が損傷する事故が起きても、放射能は全く外に出ませんでした。一方、チェルノブイリ事故では天井がコンクリートだけで、鉄板がなかった。だから天井が抜けて世界中に放射能をまいてしまった。そういう大きな違いがあります。
ですから、技術で放射能を閉じ込めることはできます。大事なことは、さまざまな計器が正常に働くように点検をしっかりすることです。それには日々の努力しかありません。日本でもちょっとしたトラブルはありますが、どこにも放射能は出ていません。しかし全部事故と報道されています。美浜原子力発電所でお湯をかぶって亡くなってしまった人がいますが、原因は放射能ではなく、お湯によるやけどです。そういう点検をきちんとやることが、わが国を含めて原子力発電所のいちばん大事なことです。
|