北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える
【第二部】 地球温暖化対策と原子力

(9-7)

日本の原子力推進を阻むもの

 

(2)リバーベント(BWR)の調査

 

奈良林 これはアメリカのリバーベンド原子力発電所です。1980年代当時、アメリカの原子力発電所の運転成績は非常に悪かったんです。何か少しでもミスがあったり故障があったりすると、その人を呼んで「なぜこうなったんだ。責任を取れ」と言う。

 同じ時期、日本の原子力発電所の運転成績は世界でもトップクラスでした。そこでアメリカが調査団を作って日本に来て、各発電所をつぶさに観察しました。昔の日本には「ほめる」という文化がありました。頑張った人やよく働いた人を表彰するのが日本の文化でした。そうした日本の良さを取り入れ、原子力発電所が安全になるよう、少しでも工夫して運転成績が上がった人を表彰するようにした。

米:リバーベント(BWR)

 リバーベンド発電所では、そういう人を社内報でほめたり、ワインパーティーをして皆の前で「この人たちはよくやった」とほめるようにしました。

 冒頭で私は「愛」が大事だと言いましたが、原子力発電所で働いている人たちにも愛が必要です。

 私がリバーベンド発電所に見学に行ったときは、発電所ですれ違う人たちが皆「こんにちは、よく来ましたね」と声をかけてくれました。皆自分の仕事に誇りを持って働いています。

 日本はどうかというと、近年は原子力発電所で働いている人たちの元気がなくなってきています。なぜかというと、定期点検に入る前に、ビルの4階建てくらいの厚さの書類を作ることを国が義務付けているからです。その書類に少しでもミスがあると、違反・罰金扱いです。原子力発電所を停止しなければならないこともあります。いまの日本はそういう環境です。

 つまり、日本とアメリカの文化が入れ替わってしまっている。日本がいちばん反省しなければならないのはそこだと思います。

 

小沢 何でそうなっちゃったの?

 

奈良林  そこなんです。アメリカは「Japan as No.1」と言って、日本が輝いているときに日本の制度を全部勉強して取り入れました。日本はだんだん規制を厳しくして、少しでもミスがあったら、マスコミから集中砲火を浴びて社長が謝る事態になる。それで余計に厳しくなる。それがだんだん定着してしまっています。

 私はいま日本各地の原子力発電所を回って「もっと元気を出してほしい」と言っています。「あなたたちの仕事は世界にとって大事なんだ。二酸化炭素を出さないために頑張っていらっしゃるのでしょう」と励ますと、「元気が出ました」と言う。原子力に限らず、自分の仕事に誇りが持てるような国にしなければなりません。だから日本全体に元気がないんです。それぞれの相手を大事に思って、皆がニコニコしながら働けるような元気な国にもう一度しなければいけないと思います。

 

橋本 おそらくその原因は、いまの日本社会が短期的な効率を追求するというか、短い期間で人を評価して、長い目で見ようとしないからじゃないでしょうか。どんなに技術が発達しても最後は人間なんだということを、しっかり定着させないとダメでしょうね。

 

小沢 この国には、人を責めることで自分を正当化する傾向がある。少しは人を認めたっていいですよね。原子力にしても、先生のような方からお話を聞くと「ああそうか、大丈夫だ」となるんですが(笑)、「でもやっぱり安心できない」というのも大事な感覚です。「まだ安心できないから、安心できるまで研究を宜しくね」「よしわかった、任せとけ」という関係になるといいんですが(笑)。

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