北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える
【第二部】 地球温暖化対策と原子力

(9-3)

世界に誇る日本の原子力技術

 

世界の原子力発電所建設計画

 

奈良林 原子力発電所については三菱、日立、東芝という3大メーカーがあります。これらが海外メーカーと合弁あるいは提携したり、買収したりして、世界中の原子力発電所を建設しようとしています。

 世界では、2020年までに約130〜150基の原子力発電所が建設される予定です。2030年までにさらに200基の計画があります。合わせると350基くらい。いま世界で運転されている原子力発電所は435基ですから、それと同じくらいの数が世界に作られることになります。

 日本には今後9〜12基の建設計画があり、アメリカもこれから建設しますが、すでに日本の企業と契約を結んでいるところもあります。中国でもウェスティングハウスが原子力発電所を建設しています。ウェスティングハウスは東芝が買収したメーカーです。ですから、今後は日本の技術が世界を豊かにするわけです。先ほどお話しした通り、原子力技術のすそ野は非常に広く、世界で役立っています。原子力発電所1基3000億円として、それを350基作るのですからすごい数字です。日本が全部受注できるかどうかわかりませんが、かつて私にとって良きライバル会社だった日立は、工場で作ったものを船で運んで一気にクレーンで下ろして建設する技術を最近のアメリカの国際会議でPRしていました。もちろん東芝にも三菱にも同じような技術があります。

日立製作所の大間でのモジュール工法

日立製作所の大間でのモジュール工法

 こうした技術は青森県の大間原子力発電所でも使われています。工場で精巧なものを作り、大型クレーンで据え付けます。これだけたくさんの鉄筋を敷設して、コンクリートでしっかりした基礎を作り、その上に原子炉を作っていきます。だから原子力発電所で地震が起きても、原子炉の中の重要な機器はびくともしません。

タービン建屋は東芝、廃棄物処理建屋は三菱

 タービン建屋は東芝、廃棄物処理建屋は三菱。このように、3大メーカーが大間原子力発電所で技術を磨いています。

「人材不足」世界共通のネックに

 原子力分野で最も大きな課題は人材育成です。原子力発電所を1基作るのに1カ所で2,000〜3,000人が働くことになります。それを100基、200基と作っていくときに人材をどう確保するか。また、でき上がった原子力発電所をきちんと点検して、安全に運転していく人たちも確保しなくてはならない。人材不足は国際会議で最も大きな課題です。そのために大学に役割が求められていると思います。

北大に於ける原子力人材育成教育

 現在、北海道大学では原子力の勉強をしたいという学生がどんどん増えています。学生たちには原子炉の組み立て方から説明しています。女子学生もいて、原子炉を建てるための計算を行い、設計のしかたを勉強しています。

 第1部で地震時の報道の話が出ましたが、以前私は40人くらいの委員を募り、柏崎刈羽原子力発電所の職員が地震のときにどんな対応をしたかを調べたことがあります。その結果、すばらしい努力をしていることがわかりました。

柏崎刈羽発電所の運転チームの表彰

 地震発生後にいち早く発電所に向かい、3週間もかけて各所を必死に点検した。ある人が「休暇を取らせてください」と言ったので理由を聞くと、「家が傾いているので取り壊さなければならない」と。傾いた家を壊すのを、奥さんに頼んで待ってもらっていたそうです。そういう人がたくさんいました。

 それで委員の先生方に審査してもらい、すばらしい対応を讃えて表彰させてもらいました。表彰のときに挨拶をした若い職員のスピーチがすばらしかった。

地球環境問題と原子力・倫理(全学教育)

 私はその内容を大学の講義で学生に聞かせました。学生の多くは、柏崎刈羽原子力発電所の報道を見ていて、日本でチェルノブイリ事故が起きたと思ったそうです。「マスコミ報道じゃなくて、真実を知ることがどれくらい大事かがわかった」という感想があり、学生は大事なことを学んでくれました。

ゼロエミッション時代・君たちの未来

 学生たちはこれからのゼロ・エミッションの時代をどう生きるか、そのためにどんなものを開発する必要があるか。原子力分野に進む人や、燃料電池のバスを開発する人もいるでしょう。そのように、学生たちにはいろんな分野で活躍してほしいと願って人材育成を行っています。

サウジアラビア:日本の石油輸入量の30%

 また、先ほどお話ししたサウジアラビアのことですが、石油が出なくなるから「助けてください」と協力を求めてきました。なぜ北海道大学に来たかというと、原子力研究の他に、北大には水を大事にする研究を進めている先生がたくさんいます。「原子力」、「水」、「口蹄疫」、この3本が揃った大学は世界中で北海道大学だけです。そこまで調べ上げて北海道大学に来て、総長に会い、協定を結びました。これから人材育成の面でも、北海道あるいは日本が世界をリードしていくことが必要です。日本がいちばん石油を買っているのはサウジアラビアですから、大事に付き合っていかなければなりません。

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