北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える
【第二部】 地球温暖化対策と原子力

(9-4)

国民との相互理解を生む対話の場

宮崎 ここまでのお話を受けて、橋本さんからご意見がありそうですね。

 

橋本 いまのお話のように、日本ではやはり原子力に頼らざるを得ないのが現状だと思います。ドイツでは原子力の廃止を決めていますが、見直されて、ある時期までは原子力に頼らざるを得ないという姿勢です。その点で、ヨーロッパに学ぶことがずいぶんありますね。

パネリスト 橋本 五郎 氏  先ほどのエネルギー政策基本法の中に「国民の相互理解」というのがありました。国民の理解を得ることなしには先に進めないという意味ですね。実はヨーロッパの事情を聞いてみると、最も重要なことは国民の理解。2つ目は、行政がきちんと情報提供をしていること。3つ目は、技術者がさまざまな機会を通じて国民と対話している。その3つが揃っているんです。

 例えば日本では、高レベル放射性廃棄物の最終処分場をどこに作るのか。これは公募していますが、どこも名乗りを挙げません。地元の反対があるからです。「Not In My Backyard」という言葉がありますね。頭文字を取って「NIMBY」と呼ばれますが、施設の必要性は理解するけれども「自分の裏庭にはあってほしくない」という心理を表しています。つまり原子力の問題においては「自分に関わらなければいいんだ」という心理がどうしても出てしまう。これをどうやって突破するかということです。そのときに国民の理解、行政からのちゃんとした情報提供、技術者と国民との対話が大事になってきます。

 先ほどのお話のように、フィンランドでは最終処分場の建設時期を決めたうえで工事が始まっている。スウェーデンもそうです。これらの国では小規模な住民集会をたくさん開いています。日本もいままでやってきましたが、何度もやりながらできるだけ情報を明らかにして、不利な情報も開示すべきです。いちばんわかっているのは技術者ですから、技術者が小規模な集会を通じて、住民と膝を交えて話をしたほうが納得しやすいはずです。そうした積み重ねがあって、初めて認められていくものだと思います。日本はその点でもっと努力する必要があると思います。先ほど国の大きな戦略の話をしましたが、それとは別に、きめ細かく対話を重ねる必要があると思います。

 また、原子力については子どもたちへの教育が大事ですね。中国での反日デモに見られるように、子どものときに反日教育を受けると大人になってもその考えが影響します。きちんとした原子力教育を行った上で、どう判断するかを考えればいいわけですから。そういうことを我々マスコミも含めてやっていかなければならないと思います。

 

宮崎 実は私の本務先の大学が上海の大学と提携しているので、毎年、集中講義等に行っているのですが、今年はちょうど滞在中に例の反日デモがありました。デモの指令がインターネットを通じて出回るんですね。

コーディネーター 宮崎 緑 氏  実際、現地の学生にメールの内容を見せてもらいました。チェーンメールのように自由に情報が飛び回ると、あるところからコントロールが利かなくなり、国家の戦略などとは別に、情報が一人歩きしてしまう怖さがあります。もしもそこに間違った情報が含まれていたらどうなるでしょう。尖閣諸島の問題でも、日本がぶつかってきたなどの歪んだ情報が出回っているようです。橋本さんはどうお考えになりますか。

 

橋本 ちょっと話はそれますが、尖閣諸島の問題は、船長を逮捕したこと自体は間違っていないと思います。日本の領土ですから、逮捕は当然です。それを内外に明らかにすべきだった。問題は一地方検察庁が判断したことです。検察のやることに政治が口出ししてはいけないという指揮権の発動の問題があるからでしょう。

 しかし、今回は大きな外交問題になっているわけですから、最高責任者である総理大臣が緊急に記者会見をして「ここは日本固有の領土である」ときちんと説明したうえで、「逮捕は正当だった。ただ、日中関係が悪化している状態を政治は見過ごすわけにいかない。検察は起訴すべきだと言うが、今回は最高責任者の名において釈放する」と表明すべきだった。私が総理大臣なら、大局的な見地から考えて釈放するのだということを内外に明らかにしますね。日本がそういう態度を示せば、中国だって大局的な見地に立たざるを得なくなりますから。

 インターネットをはじめいろんなメディアにはデマを含む情報もありますが、そういうものを抑えるのは政治の責任です。姿を見せ、意思を明確にすることだと思います。

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