橋本 いまのお話のように、日本ではやはり原子力に頼らざるを得ないのが現状だと思います。ドイツでは原子力の廃止を決めていますが、見直されて、ある時期までは原子力に頼らざるを得ないという姿勢です。その点で、ヨーロッパに学ぶことがずいぶんありますね。
先ほどのエネルギー政策基本法の中に「国民の相互理解」というのがありました。国民の理解を得ることなしには先に進めないという意味ですね。実はヨーロッパの事情を聞いてみると、最も重要なことは国民の理解。2つ目は、行政がきちんと情報提供をしていること。3つ目は、技術者がさまざまな機会を通じて国民と対話している。その3つが揃っているんです。
例えば日本では、高レベル放射性廃棄物の最終処分場をどこに作るのか。これは公募していますが、どこも名乗りを挙げません。地元の反対があるからです。「Not In My Backyard」という言葉がありますね。頭文字を取って「NIMBY」と呼ばれますが、施設の必要性は理解するけれども「自分の裏庭にはあってほしくない」という心理を表しています。つまり原子力の問題においては「自分に関わらなければいいんだ」という心理がどうしても出てしまう。これをどうやって突破するかということです。そのときに国民の理解、行政からのちゃんとした情報提供、技術者と国民との対話が大事になってきます。
先ほどのお話のように、フィンランドでは最終処分場の建設時期を決めたうえで工事が始まっている。スウェーデンもそうです。これらの国では小規模な住民集会をたくさん開いています。日本もいままでやってきましたが、何度もやりながらできるだけ情報を明らかにして、不利な情報も開示すべきです。いちばんわかっているのは技術者ですから、技術者が小規模な集会を通じて、住民と膝を交えて話をしたほうが納得しやすいはずです。そうした積み重ねがあって、初めて認められていくものだと思います。日本はその点でもっと努力する必要があると思います。先ほど国の大きな戦略の話をしましたが、それとは別に、きめ細かく対話を重ねる必要があると思います。
また、原子力については子どもたちへの教育が大事ですね。中国での反日デモに見られるように、子どものときに反日教育を受けると大人になってもその考えが影響します。きちんとした原子力教育を行った上で、どう判断するかを考えればいいわけですから。そういうことを我々マスコミも含めてやっていかなければならないと思います。
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