北海道エナジートーク21 講演録
 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 【第2部】 「原子力を巡る最近の諸情勢」
(7-6)


使用済み燃料プールの水はいかにして外部に漏れたか

6号機微量放射性物質の海水への放出


これが有名な放射能が漏れたというやつです。原子炉建屋の中に使用済みの燃料プールというのがあります。地震がきたらプールの水が揺れて動くスロッシングといいますが、これは、当り前ですね。これを防止せよと言っていますが、そんなことをしても意味がないと思います。出るものは出る。出た水はどうなったかというと、原子炉の上の床の上に出ていきました。ところが、床の上に溝があります。溝はなにをするかというと、いろいろなものの電気の配線を引っ張っている、これが床の上にあると作業勝手が悪いから、溝があるわけです。その溝に使用済み燃料プールの水が入り込んだ。


6号機微量放射性物質の海水への放出


その溝には、コンジットという電気の線を入れるパイプがあり、そこにパテのようなものを詰めてシールをしています。やはり長年の間にクラックが入っていたと思われます。そこへ入り込んで管理区域から外に出ていった。非管理区域に出ていくと、建屋の一番下にはサンプというのがあって、ここに水がたまっています。自動的にポンプが働いて水を送り出すというシステムになっています。そこから水が放出量1.2立方メートルですか、それ位の水が出ていった。出ていった放射能の量はどれぐらいだったか? 使用済み燃料のプールの水ですから、燃料の外側に付着したようなもの、放射能を多少持っているかもしれないが、それが薄まっているわけです。鳥取県の三朝(みささ)温泉、これは日本で一番ラジウムの濃い温泉水ですけれども、ビール瓶を6本分から9本分ぐらいこれを汲んできて、海の中に投げたのと同程度です。本当にごく微量ですが、このことを新聞が10日から二週間にわたって漏れ出た、漏れ出たと書きました。
 以上のようなものが、東京電力柏崎刈羽発電所の地震被害の実状でございます。



原子炉を「止める」「冷やす」「閉じこめる」機能は健全に作動

 地震発生とともに7機ある柏崎刈羽発電所のうちで4機が運転中でしたが、それが全部きちんと止まりました。「止まる」ということは制御棒がきちんと原子炉の中に下から上へ入り込んだということです。制御棒は1基に180本、それの4倍ということで大体700本が全部きちんと入った。反対派の人に昔よく言われたのですが、BWRは地震がきて制御棒が入らなかったらどうなるとよく責められたのです。しかし、このように全部が入るんだ、そしてその信頼性、ものを造る信頼性は非常に高いということが言えるのだろうと私は思っています。外国の方々もアメリカの方々もその点は非常に良かったと評価していると言っておられるわけです。

 その次に、「冷やす」という操作ですけれども、これは原子力発電所の温度というのは、300度ぐらいで、大量の水がありますから、原子炉が停まったからといって直ぐに冷えていくものではありません。お風呂の水とは違います。そして原子炉の中には埋もれ火のようなディケイ・ヒートというのがあって、これは放射能が出す熱ですけれども、ずっと冷やしてやらないといけません。20時間位かかります。地震発生と同時に発電所の職長さんは所員と運転員を集めて、これだけの頑丈に作られているのに、これだけの地震がきた。発電所敷地の外へ出たら何が起こっているか解らないぞ、家のことも心配だろうけれども我々のやることは、きちっとこの原子炉を冷却することだ。みんな覚悟せい、飯も食えないかもしれない、交替も来ないかもしれない、だけどやろう、ということでやってくれたようです。しかし、こういうことは一つもマスコミの人は言わない。私は本当に表彰しても良いくらいだと思います。外国の人はこの話を聞いて、外国人だったら直ぐ電話を取って、「ダーリン無事か!?」と聞くだろうと、そういうことをしない日本人というのは、どういう民族なのだろうかということを言っております。どの機械にしても、制御棒にしても壊れているかどうか解らない中で、ですから非常に忙しい状況で冷却を全てきちんとやってくれたということは、尊敬して良いと思います。
 ですから、「止める」、「冷やす」という裏にはそういうことがあったわけです。「閉じ込める」というのは、先ほどのプールの水は、原子炉の中の水とは違います。原子炉の水は全く出ておりませんので、この三つは完遂したというわけです。評価としては、私は想定した3倍の大きな地震がきた、それを我々がそれを初めから解っていなかったということについては十二分に反省の余地がありますが、しかしながら、その3倍の地震に原子力発電所が耐えた。原子力発電所はそれほど頑丈に造られているものです。これは泊発電所も同じですから、どうぞその点ではご安心ください。平成5年の北海道西南沖地震、あの震源地は奥尻島青苗と泊との中間点でした。しかし泊発電所はびくともしませんでした。ところが奥尻島の青苗地区は、地震直後に巨大津波がやってきて、大変な災害を受けたわけです。泊発電所は非常にきちんと造られていると考えいただいて良いかと思います。

  6/7  
<< 前ページに戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) 続きを読む >>