北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 【第2部】 「原子力を巡る最近の諸情勢」
(7-1)


講師:石川 迪夫氏 (いしかわ みちお)
(元:北海道大学教授、現:日本原子力技術協会理事長)


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 今年もまた沢山お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

 さて、昨年は「原子力ルネッサンス」のお話、それからその中で日本の原子力が奮わないというお話をいたしました。そして昨年度こそ、それをしっかり立て直さなければいけないというお話しましたが、これは見事に狂いました。その理由の一つは北陸電力志賀原子力発電所の臨界事故、これは全電気事業者の不正調査に伴って出てきたもので、これが昨年3月15日に発覚いたしました。その後、この余波もそろそろ収まったかなと思う夏になり、新潟県中越沖地震が起こりました。そのため、東京電力柏崎刈羽原子力発電所は今も止まっております。今週月曜日(1月28日)からはまた、IAEA(国際原子力機関)の調査団が入って、今頃は東京で原子力安全・保安院、東京電力と調査を行っている筈です。この影響によりまして本当に1年間足踏みをしてしまったというところです。今日は主にこの話をしたいと思います。

 さて、今日は「地震」と「臨界」の二つをお話しておりますと、時間が相当タイトですので、先に結論を言わせていただきます。現在、青森県の六ヶ所村で行っている「再処理工場」の、試運転が最終段階に入っていますが、最後のガラス固化体を造るところで少し難航しているようですから、ひょっとすると少し延びるかもしれませんが、今年はこれを完成させなければなりません。
 それから「高速増殖炉もんじゅ」が秋頃に臨界になるであろうと思います。この両方が揃うと、私たちの悲願の核燃料サイクルが確立していく第一歩になるわけです。そして核燃料サイクルというと、これまでに一度か二度お話をしましたが、核分裂をしないウラン238、天然ウランの中に99.3%ありますが、これがプルトニウムになって、核燃料に変わっていくわけです。ウラン235が燃えた量、それ以上の燃料が出来てくる、そうするとウランの資源が少なくても60倍ぐらいにはなるだろうと言われている夢のサイクルが出来ていくわけで、それらが今年始まります。
 最後の結論を今お話させていただきましたので、早速、北陸電力の臨界事故のお話に移らせていただきます。

北陸電力志賀原子力発電所の臨界事故とは

8年間隠された事故は何故発覚したか

 さて、北陸電力の臨界事故ですけれども、これがどうして8年間も隠されたまま発覚をしなかったのか、これが非常に大事な点ですので、そのお話をさせていただきます。

 水力発電所のダムは、これは壊れてはいけませんから、毎年、毎年変位を測っているわけですが、そのデータに誤りがあったという話が原子力安全・保安院にあったそうです。その調査をしている時に、火力発電所の冷却水に使っている海水の温度データにもどうやら不正があったという話が出てきました。火力発電所の海水温度の不正ということになると、これは全ての電力会社に係る問題に繋がります。そこで原子力安全・保安院としては、全電力会社に対しまして、この際きれいに過去を清算しようと、遡る期限も設定せず、出来るかぎり正確に調査をするように指示を出したわけです。原子力安全・保安院は火力、水力に加えて原子力も入れたわけです。原子力については、この3年ほど前の東京電力の「シュラウドひび割れ不正問題」の時に、過去の記録に従って全部きちんと調べ、問題は出尽くしているはずなので、原子力からはあまり出てこないと、少し甘い睨みもあったようです。
 一昨年になりますが、冬の頃にこういう指示を受けて、電力会社のほうはこのところ真面目でございますから、遡る期限を設けず、原子力などではデータのないところは、延べ7万人といわれているOBにヒアリングを行い問題はなかったかということを調べましたようです。期限がないので水力などは明治時代まで遡って調べたという噂もされております。



発電設備総点検に係る事案数・件数一覧表


 (図1)の左側の表が件数です。水力の約9000件、火力が約1200件、原子力は459件の不正が出てきました。事案数というのは大体同じようなものという意味です。全部で1万件余り出てきました。しかし、皆様方の目に留まっているのはほとんど原子力ではなかったかと思います。
 それは、原子力安全・保安院ではこれを全部集めて3月末にまとめて発表しようとしたのですが、原子力の場合は地元との協定があり、見つけた時にはすぐ出す決まりがあるため459件のうちの大きなものが、ポロポロというふうに不正が出てきたわけです。
 ところがこれが報道されますと、過去のものというふうにはみなさんの目には映らないわけで、現在不正がどんどんと起こっているという感じをお持ちになられたのが、去年の2月から3月頃ではないかと思います。そうしてその極めつけのような最大の問題が北陸電力の臨界事故です。

 今ご覧いただいた先ほどの(図1)です、原子力の評価区分と事案数、この中で原子力については右に改めて示しておりますが、ABCDEとなっており、Aというのは、安全問題に多少なりとも関係のあるもので、下にいくほど影響が小さくなるとわけです。

発電設備総点検結果

 保安院が安全上問題があるとしたものが(図2)にまとめられています。私が見るかぎりは、大きな安全問題と言えるのは北陸電力の臨界事故、それから東京電力で同じく5本の制御棒が落ちていたというものの赤で囲っている二つの事案です。その他は見解の相違というところで宜しいかと思いますが、なにしろ問題があったのは、以上のようなものです。
 しかしながら、原子力では少ないとはいえ、こういった問題が起きていたこと自体は素直に反省しなくてはならないわけです。

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