北海道エナジートーク21 講演録
 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 【第2部】 「原子力を巡る最近の諸情勢」
(7-4)


北陸電力臨界事故と東海村JCO臨界事故の違い

志賀1号機とJCOの比較


さて、次の(図8)お願いします。
同じ臨界事故でも東海村JCO臨界事故と北陸電力志賀1号機臨界事故はどう違うのかについてです。JCOはもっともっと小さなもので、しかもタンクの中のウラン溶液の暴走でしたが、大きな違いはどこかということです。志賀原子力発電所の場合は、原子炉の中に小さな原子炉が出来たわけですから、五重の壁という遮蔽体があり、なおかつ住居とは随分と離れていますから、これは住民の方に対してご迷惑はお掛けしていないわけです。
 ところがJCOは臨界の起きないようなタンクの中にじゃぼじゃぼとウランの溶液を入れていったために起こったわけです。この作業者はこの図のような状況でタンクの中に入れていったわけです。普通は臨界が起きない工場ですから、遮蔽体を作っておりません。

 従って、住宅地の近所で臨界が起きたから避難騒ぎも起きた。この作業者二人は原子炉のすぐ側に体を寄せてウラン溶液を入れていたわけですから、お気の毒なことに放射線の被曝を受けて亡くなられたわけです。
臨界事故というものは、説明してきたように極めて良く解っているわけです。



4,000回の原子炉暴走出力実験

NSRRの概念図(パルス運転中)


 ご覧の(写真1)がNSRR(日本原子力研究開発機構の原子炉安全性研究炉)という原子炉でして、真ん中にある太い長いのが実験孔で、この中に燃料を入れているわけです。白く輝いたところが燃料棒で、ここのところがパッと先ほどの暴走出力で光るわけです。ただ、暴走出力といいますと、嫌がられますから、私たちは計画的に出す出力だからパルス出力と言っています。何をやっているかというと、原子炉の炉心の燃料が溶けない、蒸発しない範囲でぼんぼんと実験をやっているわけです。これまでに4千回位暴走出力を発生させている原子炉ですが、今もなお日本原子力研究所(現:日本原子力研究開発機構)で使っています。従って、暴走出力事故が起こったというと、怖いと思われるかも知れませんが、そういう範囲というのもあるんだと、それから、それが行き過ぎるとチェルノブイリのような事故になるというふうにお考えください。
(省略:NSRRを使った実験動画映像)



北陸電力が事故を隠した本当の理由は

 説明してきましたように入った熱量が少ないものですから、燃料棒にはなにも変化が起こっていません。従って、北陸電力の人は、隠し得ると考えたのでしょう。出力計のチャートの中にキュッと出力の上昇のところがありますが、それを制御棒の試験をしたことにしたのです。隠すと決心した北陸電力の人はすごい原子力の知識を持っていた方ですね。ですから技術的には非常に惜しいと思っています。そして恐らくその原因は、一つは隠し得ると思ったこと、それからもう一つは2号炉の建設を目の前に控えて、もしもこんなことが起きたとなれば、地元に対してまずいだろうという配慮があったと私はそれ以外にないと睨んでいるわけです。


「原子炉の暴走」本の写真


 実はNHKはこの本を見て「特ダネ」を掴んだということで、朝のニュースで北陸電力が即発臨界でチェルノブイリみたいのが起こったと報道しました。この本は北海道大学にいる時に書いたのですが、マスコミからも北陸電力の臨界事故やJCO臨界事故を入れて書き直して欲しいという依頼があり、今書き直しています。多分今年3月頃には書名「原子炉の暴走」は変らずにサブタイトルは変わって出る筈です。

  4/7  
<< 前ページに戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) 続きを読む >>