北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 【第2部】 「原子力を巡る最近の諸情勢」
(7-3)


燃料エンタルピは安全制限値を大きく下回っていた

志賀1号機と福島第一3号機の事象の相違


次の(図5)をご覧ください。
この制御棒が抜けていったのに一つの数値があります。制御棒が離れた時の時刻が解っていて、停まった時刻が解っていますが、これが70秒掛かっています。そこから1秒間に抜けた長さを計算すると、一番最大で抜けたのは1.6cm/秒位のスピードでした。しかしながら、いつそこがどのように抜けたか、もっと早く、例えば一番長いやつではなく、一番短いやつは急にポンと途中で抜けたかも解りませんね。それで北陸電力では実験を行いました。その結果、最も早く抜けるのは1秒間に4.6cm抜けることが解りました。この二つの数値を覚えていてください。


原技協解析結果(1)


次の(図6)をご覧下さい。
さて、制御棒がもし北陸電力の実験結果である4.6cm/秒のスピードで抜けたとすると、この図に書いてあるように、原子炉の出力はぐんぐん上がりまして、原子炉の全体の出力(定格出力)の大体14%位までの出力になり、その後暴走状態が終了して下がって、出力は大体定格出力の0.3%という状態になったことが計算で明確になりました。その暴走出力の状態というのが大体0.3秒位です。本当に短い時間ですが、何もなかったところから定格出力の15%位まで、大きいですよ、15%というと。一気に10万kW近くにまで上がって、そして一定になったという状況です。

制御棒の引き抜け速度の影響-原技協解析結果(2)


次の(図7)をご覧ください。もしも、これが先ほどの制御棒の下降数値が1.6cm/秒、緑の線ですと、暴走出力は起きておりません、という計算になっています。このあたりの計算は難しいから信用してください。ということは北陸電力の状況というのは、私たちが考えても暴走出力が発生したのか、しなかったのか本当にギリギリの状態だったのです。発生をしていても、前の(図6)の中の表の一番下を見てください、燃料エンタルピの最大値約49カロリー、これは一番高いポイントですが、黄色くなった炉心の平均のところで大体約15という数値が赤で出ています。この表の右側にある安全の制限値は、230という値ですから、比べると随分小さかったことがお解りいただけると思います。安全制限値の230はどこから出てきたか、これをお話すると解るのですが、なにしろ0.1秒とか0.2秒でものすごい出力が出るわけです。それはどこで起こっているかというと、核分裂なので、燃料棒の中で起こっています。熱は短い時間ですから、とても外に伝わりません。燃料のUO2(二酸化ウラン)というのは煉瓦みたいなものですが、3千度位になると溶けます。3千5百度になると蒸発します、煉瓦でも。それ位の熱量が仮に入ったとすると、燃料の中でものすごい温度の高いガスが出来るので、燃料の鞘なんかブワーッと壊して中から燃料が水の中に出ていきます。そうすると水蒸気爆発が生じます。これが起きたのがチェルノブイリの事故です。

 こういう実験は日本原子力研究所(現:日本原子力研究開発機構)で、実は私は30年間位やってきていて、随分と燃料棒をぶっ壊しています。
 実験の結果から大体どれぐらいで実際上破壊力が出るかというと、少なくても330カロリー位の値が必要なことが解っています。そこで、それより低い230カロリーを安全審査の制限値としたわけです。北陸電力は燃料エンタルピが15カロリー位ですから230カロリーに比べて比較的小さなものだったとお考え下さい。

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