次の(図7)をご覧ください。もしも、これが先ほどの制御棒の下降数値が1.6cm/秒、緑の線ですと、暴走出力は起きておりません、という計算になっています。このあたりの計算は難しいから信用してください。ということは北陸電力の状況というのは、私たちが考えても暴走出力が発生したのか、しなかったのか本当にギリギリの状態だったのです。発生をしていても、前の(図6)の中の表の一番下を見てください、燃料エンタルピの最大値約49カロリー、これは一番高いポイントですが、黄色くなった炉心の平均のところで大体約15という数値が赤で出ています。この表の右側にある安全の制限値は、230という値ですから、比べると随分小さかったことがお解りいただけると思います。安全制限値の230はどこから出てきたか、これをお話すると解るのですが、なにしろ0.1秒とか0.2秒でものすごい出力が出るわけです。それはどこで起こっているかというと、核分裂なので、燃料棒の中で起こっています。熱は短い時間ですから、とても外に伝わりません。燃料のUO2(二酸化ウラン)というのは煉瓦みたいなものですが、3千度位になると溶けます。3千5百度になると蒸発します、煉瓦でも。それ位の熱量が仮に入ったとすると、燃料の中でものすごい温度の高いガスが出来るので、燃料の鞘なんかブワーッと壊して中から燃料が水の中に出ていきます。そうすると水蒸気爆発が生じます。これが起きたのがチェルノブイリの事故です。
こういう実験は日本原子力研究所(現:日本原子力研究開発機構)で、実は私は30年間位やってきていて、随分と燃料棒をぶっ壊しています。
実験の結果から大体どれぐらいで実際上破壊力が出るかというと、少なくても330カロリー位の値が必要なことが解っています。そこで、それより低い230カロリーを安全審査の制限値としたわけです。北陸電力は燃料エンタルピが15カロリー位ですから230カロリーに比べて比較的小さなものだったとお考え下さい。
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