竹内 将来のエネルギー構成を考えるうえで、値段というのは一番大事な要素ですから、政府はちゃんと試算しました。
これもインターネットに載っていますが、一番左が原子力で、太陽光は大規模用と住宅用とを二つに分けています。2014年にこういう発電所を建てて、どれぐらいのコストがかかるかを全部洗い出して分子に乗せ、生み出す電気で割ったときに、1kWhの電気がどれくらいできるかを表したグラフです。2030年に再エネの技術が進展し、もっと低コストになるであろうことを反映した試算もあります。
イメージ的には、原子力にはさまざまな見えないコストがかかっていて結局は高いはず、再エネの方が安いと思われている人も多いかと思いますが、実は再生可能エネルギーはあまりたくさんの電気を生産してくれないので、1kWhあたりの電気の値段が高くなってしまうのです。原子力は生み出す電気が莫大なので、コストの点では優位なのです。
日本の平均で太陽光発電の稼働率は12%です。例えば、12%しか働かない工場を建てますか。12%しか働かない人を社員として雇いますか。たぶん皆さん雇われないと思います(笑)。
私もこういう仕事をしているので、太陽光発電について実感を持って捉えなければ皆さんにものを言うことができないと思い、太陽光発電をわが家にも導入してみました。発電量のパネルを一日見ていたこともありますが、稼働率は確かに12%程度です。さらに悪いことに、いつ働いてくれるのか、予測が難しいのです。太陽光は年間平均12%、風力発電は日本で平均すると20%ぐらいは働きます。風況のいい場所だと24〜25%働くところもあります。
電気のコストは、かかるコストを分子に持ってきて、生み出す電気の量で割るわけですね。そうすると、1kWhの電気がいくらでできるかということが計算できます。グラフを見ていただければおわかりいただけると思いますが、確かに再エネは採算性という点では厳しいといえます。
特に、ヨーロッパでは風力が増えているといわれますが、ヨーロッパは偏西風の地域です。日本は、爆弾低気圧が来てものすごい風が吹いたかと思うと、凪でまったく風が吹かないときもあります。そのように風況が違う国ですから、ヨーロッパでできているからといって日本できるわけではない。ご指摘の通りで、日本でのコストを考えると厳しいといえると思います。

二点目のご質問のイギリスについてですが、イギリスのエネルギー政策も混沌としていて、おっしゃる通りです。いままで北海油田が出たのですが、油田が枯渇してきました。
さらに、電力を自由化していると電源が全体として足りないという慢性的な状態があり、温暖化で高い目標を掲げたいので石炭を廃止し、原子力と再エネという低炭素電源を増やしていこうということで、固定価格買取制度のようなものを立ち上げて、原子力もそれに入れています。原子力の電気も市場価格の倍で買い取ることを条件にして、原子力の新設計画がようやく決まりました。
ただ、久しぶりに原子力発電を新設しようとしたら、イギリスの国内には実はもう技術がなくて中国企業が参画をするということです。先日、中国の首脳が訪英していましたが、そういう理由で中国の技術を使うということです。そこで、イギリスの研究者に「中国の技術を使うんだね」と言ったら、「お金がないから仕方がないよね」と言っていました(笑)。エネルギーの安定供給や環境性、経済性を総合的に考えると、もう原子力を新設するしかないというのがイギリスの判断です。ドイツとは真逆の判断をしています。
「同じヨーロッパの国でどうしてこんなに違う判断をするのか」という質問をされますが、イギリスの方に聞くと、ドイツは大陸の中央部に位置し、送電線が多くの隣国とつながっています。イギリスは日本と同じ島国なので、イギリスの方は「我々はドイツみたいに能天気なことは言っていられなんだから」と言います。そういう状況の違いがあるのだろうと思います。
|