北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム2015
「エネルギーの行方について考える」

(8-3)

国際交渉から見えるエネルギー事情

 

温室効果ガス排出量は急増

 

竹内 最後の「環境性」についてお話しします。発電するときにCO2を出さない原子力発電を止めていることによって火力発電がこれだけ増えているので、震災前と比べて日本のCO2排出量は1億トンぐらい増えてしまいました。ちなみに、それまで日本が1年間に出すCO2は13億トンぐらいでした。

 ちなみに国連の会議は皆さんのイメージと相当違うと思います。なぜあんなにまとまらないのか、不思議に思う方も多いようです。その理由はいくつかありますが、根本的には「自国の経済成長制約になるような炭素制約は負わない」ということが言えます。

GDPとCO2排出量の相関関係

 その意味は、グラフを見ていただくとよくわかると思います。横軸はGDPで、経済活動の活発さを表し、縦軸はCO2排出量。GDPが伸びると排出量も増えるわけです。よく「グリーン成長」といって、経済活動を活発にするけれどもCO2排出量は増やさないという考え方がありますが、歴史的にはそういった成長に成功した事例はほとんどない。ということは、国際交渉の場で「わが国の排出量をここまでに制限する」と交渉官が約束することは、「わが国の経済成長をここまでに制限する」ということを約束することにもなりかねないわけです。

 そのため、国際交渉の場では「わが国は一生懸命やっている」、あるいは途上国であれば「わが国はいままで何も発展していなかった、温暖化は先進国のせいだ」と言って先進国に削減をさせようとします。そういう形で「あなたがやるべきだ」という押しつけや批判をするのが国際交渉で行われている議論の本質です。

 日本では「わが国の目標が足りないと批判された」というのを嬉しそうに書く日本のメディアが多いですが、それは当たり前とも言えます。

温室効果ガス排出量:主要国の比較

 2015年11月30日〜12月11日、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)がパリで開催されます。温暖化対策でいま本当に必要なのは、このようにCO2排出量の伸びが著しい中国と、先進国で一番大きいアメリカに参加してもらうこと。主要排出国が全部参加する枠組みを作るために、COP21に向けて議論が進められています。

 日本はCOP21に向け、「2013年を基準として2030年に26%削減する」という目標を掲げました。ちなみに、アメリカの目標は「2005年を基準として2025年に26〜28%、EUは「1990年を基準として2030年に40%」です。基準年も目標年もなぜこんなにバラバラなのかと疑問に思うことでしょう。これは、どの国も自分の数字が大きくなるように選んでいるわけです。

 EUは、1990年という四半世紀前を基準にしています。なぜかというと、1990年ごろから東西ドイツの合併など東欧革命が始まりました。それまで効率の悪い機器を使っていた東ヨーロッパに西側の技術が流入しました。そこから経済成長はしたけれども、CO2排出量は減り始めたわけです。そこで、減る前を出発点にしておくと、現時点からの削減分は小さくてもすごくたくさん削減しているように見えるのです。

 アメリカも同じです。2005年を基準年にしているのは、この年ぐらいからシェールガスの使用量が増えてきたから。それまで石炭を使っていましたが、国内にシェールガスという天然ガスが出たので、それを使い始めたらCO2排出量が減り始めました。減り始める前を基準年にすると大きく見えるからこうなったということです。このように自分たちの目標が最もきれいに見える“お化粧”をしていることがよくわかります。

26%削減目標をどう実現していくか

 

長期需給見通しの政策目標

 

竹内 26%削減目標を出す前に、政府は「自給率」「電力コスト」「温室効果ガス排出量」の点から三つの目標値を置きました。エネルギー政策のところから考えたわけです。いくらコストをかけてもいいのであれば、26%でも30%でも目標を高くいえますが、やはりコストは無尽蔵にはかけられないし、自給率も高める必要がある。

 エネルギーはバランスだという話を最初にしましたが、特に電力コストについては、震災前からは家庭用で25%、産業用で4割も上がっています。以前と同じに戻すのは無理でも、いまよりは上がらないようにしようというのを目標にしました。

電力需要・電源構成

 そうして描かれたのが、このエネルギーミックスです。経済成長に伴って電力需要は増えますが、そこでかなり省エネが進むだろうと期待して、実際の電力需要は大きくないだろうということにしました。これをどうやってまかなうかという割り振りをしたのが右側のグラフです。再エネ、原子力をそれぞれこういう割合で描いたわけです。

 ただ、この省エネはオイルショックのときと同じぐらいの進み方です。オイルショックのとき、日本では電力価格が約1.5倍になり、しかたがない状況で省エネがものすごく進みました。それと同じぐらいの省エネが見込まれています。また、再生可能エネルギーも非常にコストが高い中でこの割合を見込んでいます。

 さらに原子力についても、現在のように規制もどうなるかわからない不安定な環境に事業者を置いていると、政治の影響を非常に大きく受けることになります。何より自由化して、投資した資金が回収できるかどうかわからなくなれば、銀行がお金を貸してくれなくなるでしょうから、特に原子力の割合を維持するのは可能なのだろうかと疑問に思います。

 このエネルギーミックス非常に厳しいものですが、これを前提として日本は26%削減目標を掲げたところです。

 これから日本が考えていくべきことは、目標を描いたのはいいけれども、それをどうやって実現していくかということ。特に、これから自由化をしていく中でどう実現するのか。さらに温暖化については、オイルショックのときと同じぐらいの省エネを求められれば技術革新が必要になり、これをどう引き起こしていくかについても考えなければなりません。

 以上で私の話を終わらせていただきます。

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