北海道エナジートーク21 講演録

 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム2015
「エネルギーの行方について考える」

(8-5)

廃炉の技術向上とコスト低減に向けて

 

原子力発電所の廃止措置プロセス

 

小崎 廃炉についてお話しします。廃炉の手順というのは、最初に使用済み燃料を出し、中を洗って、取り除くことのできる放射性物質はできるだけ取ります。放射性物質は半減期で消えるので、しばらく置いてから壊します。こういう話をすると「廃炉の技術が確立されていないのが課題だ」といわれますが、実は日本では廃炉の実績があります。

 また、「JPDR」という日本で最初に発電をした原子炉があります。廃炉は1986年から1996年にかけて行われました。日本にはこうした技術が当時からありますし、そこから20年以上経ったいまはコンピューターも遠隔操作も格段に進歩しているので、技術的にはまったく問題ないといえます。

廃止措置コストの内訳

 ただし、問題なのはコストです。廃炉の費用は600〜800億円といわれています。この根拠として、人件費や解体機器、エネルギーに関する経費が分類され、それぞれの単価も報告されています。それによると、廃止措置の費用というのは人件費が半分ぐらいだということもわかります。

 実はいま、私の研究室で准教授と学生たちが、このデータを使って一番安く解体できる方法を調べる研究をしています。例えば、容器サイズを200lのドラム缶から3m3容器に変更することによって、圧力容器の切断経費を24億円ぐらい安くできるという計算などをしています。

将来を見すえた人材育成

小崎 最後に人材育成についてお話しします。先ほどお話しした高レベル放射性廃棄物の処分事業は100年プロジェクトです。スタートしてから、掘って、埋めて、最後に全部閉じるまでに100年かかるといわれています。中には、大学出て就職すると最後まで見届ける人がいるかもしれませんが、多くの場合はプロジェクトを最後まで見られないだろうと思います。そうすると、知識の継承をしながら人材を育てることが絶対必要です。廃炉も20〜30年かける場合が多いといわれますが、やはり人材を育てなくてはいけません。

原子力人材育成・講義のオープン教材化

 北海道大学では、工学部だけでなく他学部の先生方と協力しながら、原子力に関する講義をビデオに撮ってインターネットに無料で流すという試みを始めています。これは「オープン教材」といい、誰でもどこでもいつでも、先生や講師がリタイアしてもそれを学べる環境を作り、維持する試みです。

 北大のホームページから辿っていけるこのようなホームページに動画があり、それでいつでも自由に無料で勉強できます。いま19講義が収録され、再生回数は5000回ぐらいになっていて、少しずつ認知度が上がっています。

小崎 完 氏 また、2015年度は「グローバルMOOC」という英語版の公開講座を行いました。日本では唯一、北大の私どものプログラムにオファーがあり、7〜8月に開講して世界133カ国の約3600人が受講しました。国内外に原子力の知識をできるだけ広めると同時に、安全に対する考え方や技術に対する考え方をしっかり学んでもらえる環境を維持していくことが重要だと考えています。

 また、原子力人材、特に放射性廃棄物の処分に関わる人材を育てるためには、講義だけでなく実際の研究施設も必要です。道内には幌延町に深地層科学の研究施設がありますので、こうした施設を活用させていただきながら、北海道の地の利を生かした人材育成を進めていきたいと考えています。

 

橋本 最終処分地について、フィンランドでは国民が原子力の廃棄物を出すという責任を感じているという話がとても印象に残りました。私たち日本人は、そうした意識が薄いのかもしれないですね。

ページの先頭へ
  5/8  
<< 前へ戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) 続きを読む >>