北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
世界のエネルギー情勢と日本の進むべき道

(6-6)

●原子力が止まった分の負担は大きい

震災・FIT施工以降の電力コスト負担の推移

 赤い部分は追加の化石燃料費です。東日本大震災を機に原発が停止して以降、追加分は結構増えています。その後に減っているのは、原子力が再稼働したのと為替レートです。為替レートは他力本願ですね。

 太陽光でも風力でも、この国に資源がふんだんにあるのなら、原子力はやめてもいいと思います。でも、他に安定電源がありません。だったら、電気を貯める装置などの新しい技術ができるまでの間、今ある原子力を使えばいいと思います。泊発電所だって、計算上は50年ぐらい使えます。新しい発電所ですから。動かしたほうがいいと思います。皆さんもそう言わないでしょう。不思議ですね。その間に北海道電力管内は電気料金が高くなっているんです。

日本での電気料金の推移

 これは東京電力管内の電気料金の推移です。東日本大震災以降、日本の電気料金はこのように推移しています。一番左が2010年で、ずっと上がっています。為替レートの分や再生可能エネルギーの賦課金が入っていますが、天然ガスを入れても、原子力が止まった分の負担は大きいです。再生可能エネルギーの賦課金も、安くなりようがありません。電力自由化といっても、全員の電気料金は下がりません。一部セットメニューだとか、大口の需要に関しては下がることもありますが、自由競争の世界ですから、勝ち組も出てくれば負け組も出てきます。しかし、生活保護世帯や住民税非課税世帯は電力自由化の何の恩恵も受けません。そういう人たちの声を聴くのが政治だと思うんです。

 原子力が危ないのはわかります。核燃料は危ないですよ。でも、危ないからあれだけ規制して、原子炉も使用済み燃料も封じ込めているわけですね。ですから、容器の中にある限りは危ないと思いません。ガソリンもそうです。皆さんはガソリン車に乗られると思いますが、あれは危ないですよ。しかし、装置が技術的にきちんとしているからガソリンの爆発事故は起きないですね。灯油ストーブもガスヒーターも、今は安全装置があります。安全のためにコストをかけています。原子力発電所も何も恐れることはないと思います。

 原子力発電所の現場に行って自分で聞いたり見たりすると、まったく怖いと思いません。使用済み燃料だって高レベル放射性廃棄物だって、実物をそのまま持てと言われたら無理ですが、容器にきちんとしまって、何らかの対策を講じると大丈夫です。

 私はツイッターとフェイスブックをやっているんですが、先週、写真を替えました。福島第一原発のタンクのところで撮った写真を載せて、かつビーカーの処理水を持っているのをアップしたんです。行ったときに職員の方にリクエストしたんです。「汚染水と処理水の両方を持たせてほしい」と。そしたら「汚染水は放射線量が高いからダメだ」と言われました。でも、処理水は大丈夫ですよ。手に持っている写真もあります。職員の方に「飲めますか」と聞いたら、「やめてくれ」と言われました。「でも、トリチウムは大丈夫でしょう?」と聞いたら、「それより大腸菌だ」と言われました(笑)。

●世界は決して脱原発ではない

世界の原子力事情(2):原子力発電量の推移

 これは、世界の原子力発電量の推移です。東日本大震災の年、増え続けていた発電量がガクンと減りました。減った分は日本です。でも、その後はまた増えています。原子力の発電量は増えていますから、世界は脱原発ではありません。

世界の原子力事情(6):1F事故後の世界の動き

 世界の原子力事情を見てみましょう。原子力については、この人たちはやめると言っています。左下のグループ、韓国、ドイツ、台湾、ベルギー、スイス。もともと原子力を使っていないイタリア、オーストリア、オーストラリア。多くの国は原子力を将来的に使うということを政治的に表明しています。

世界の石炭事情:脱石炭は「世界の潮流」とは言えない

 また、石炭は逆風です。石炭をやめると宣言している国は多いです。下は石炭を「将来的に削減していく国」、上は「将来的が増えていく国」で、上にはトルコ、中国、インドなどがあります。特に中国とインドはだけで世界の石炭火力発電の4分の3を占めていますから、中国とインドがやめないのだったらどうにもなりません。日本の技術を中国やインドに持っていけばCO2が相当削減されます。

 本当は小泉進次郎環境大臣に言ってもらいたいのは「石炭をやめる」などではなく、「日本の技術をあなたたちに供与するので使ってください」というのが資源外交だと思います。

 ちなみに、北海道は炭鉱が多かったですね。今は空知地方の一部で再開しています。CO2を出さない技術が日本に今あるので、石炭はしばらく続くと思います。ドイツにもあります。そういった技術を活用していけば、石炭はCO2を今よりも出さないエネルギーとして使っていけるのではないかと思います。時間が来ましたので、ここで閉じさせていただきます。

講演会の様子

≪講演会の様子≫

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