北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
世界のエネルギー情勢と日本の進むべき道

(6-2)

●世界の電気は何でできているか

 さらに、この中から運輸部門を除いて電気だけにしたのがこのスライドです。

世界のエネルギー事情(2):世界全体の電力供給量の推移

 北海道電力が供給しているこの会場の電気も、石炭火力が中心だろうと思います。ただ、どこから来ているかはわかりません。送電網の中に入ったらミックスされてしまうので、どこから来ているかはわからなくなります。

 「再生エネルギーの電気だけ買いたい」という人がいますが、あれは難しい概念ですね。自分の家の屋根に太陽光パネルを付けて、そこからだけもらっているなら太陽光の電気を使っていることになりますが、電力会社の送電線から来る電気を使っている場合には、これが太陽光あるいは水力の電気だというような特定はできません。「再生可能エネルギー100%の電気を供給します」という謳い文句で電気を販売する電力小売会社がありますが、あれはあくまで概念的なものですね。実際に送電線を経由してしまうと、何の電気かはわかりません。

 スライドに戻ります。一番太い水色の部分が化石燃料です。石油はあまりありません。ほとんどが石炭と天然ガスです。圧倒的に多いのは石炭で約38%。ここ数年、新聞では「世界は脱石炭に向かっている」などの論調が多く見られますが、それでも一番多いのは石炭です。次に多いのが天然ガスで約23%。ということは、石炭と天然ガスを合わせると、化石燃料で50%を超えてしまいます。

 毎年COP(COP-FCCC略。気候変動枠組条約-締約国会議)が開かれていますが、最初に始まったのが1992年です。当時は宮沢喜一総理大臣。なぜ覚えているかというと、私は資源エネルギー庁でCOPを担当していたからです。ブラジルのリオデジャネイロで開催されるということで、当時は大変でした。第1回COPが開催された当時から化石燃料を減らそうと言われていたにもかかわらず、現在もこれだけ化石燃料は増えています。

 他のエネルギーに替えるべきだという意見がたくさん出ていますが、実際の数字を見るとそううまくいっていないということがわかると思います。一度エネルギーを使い始めて便利さを実感すると、その既得権からはなかなか抜け出せないですね。身近なものだとガソリンでしょうか。

 我々一人一人も既得権を持っています。もしCO2を減らそう、電気を減らそう、ガソリンを減らそうとしたら、我々が自動車や電気を使うという便益を捨てなければなりませんが、それはできませんよね。だから効率化や技術開発を進めるなど、これからも人類の努力で少しずつ進めていかなくてはならない。いきなり「脱原発」「脱石炭」とすぐに変えることは現実的には無理です。

 北海道では泊発電所が停止していますから、原子力の電気はストップしています。私はあまりいいことだとは思っていません。なぜかというと、北海道の電気料金は上がっていますね。私のいる東京電力管内の電気料金も上がっています。福島第一原発が止まったでしょう。福島第二は事故をしのいだのに、なぜか廃炉ですよね。新潟には、世界で一番大きい柏崎刈羽原子力発電所があります。敷地はものすごく広くてまちのような規模ですが、あれもずっと止まっていてもったいないと思います。北海道の泊発電所も止まったままですからもったいないですよ。再稼働できる日がいつか来ると思いますが、早くそうなってほしいですね。それが北海道経済のためだと思います。北海道胆振東部地震でブラックアウトが起きたときも泊発電所は止まっていましたが、もしも原子力が動いていたら、ブラックアウトを防げたかどうかはわかりませんが、回復は早かったんじゃないでしょうか。電気は大事だと思います。

 産業革命以降、電気は水、空気、食料の次に我々の生活にとって大事なものだと思います。自分の生活を考えても、電気がないと、照明はもちろん点きませんが、冷蔵庫もダメになるし、お風呂にも入れません。化石燃料や原子力に対する好き嫌い、太陽光がいい悪いなどさまざまな評価がありますが、あまり感情論に走らずに、冷静に、いろいろなエネルギー源をミックスして使う「ベストミックス」という考え方が大事だと思います。

講演会の様子

≪講演会の様子≫

●再生可能エネルギーはなぜ増えているか

世界のエネルギー事情(2):世界全体の電力供給量の推移

 スライドに戻ります。左の円グラフが1973年、右が2016年です。比べると、45年前は石炭が38.3%、天然ガスは今も38.4%で変わらないことになります。変わったのは、円グラフの水色の部分の石油です。当時約25%だったのが、脱石油を目指して頑張ってきたので、今は約4%です。その代わり、濃い青の天然ガスが約12%から約23%に増えています。石油の代替は天然ガスと原子力です。黄色い部分の原子力は当時約3%でしたが、今は世界全体で約10%です。今をときめく再生可能エネルギーは、太陽光やバイオマスが含まれますが、当時0.6%から現在は8.0%になり、健闘しつつあります。

 あと50年経ったらどのような比率になるかを想像すると、石炭は多少減り、天然ガスは増えるだろうと思います。原子力も増えると思います。再生可能エネルギーがどこまで伸びるかですね。世界的には再生可能エネルギーは非常に増えています。

 日本も増えていますが、北海道で再生可能エネルギーというと、太陽光以外では風力が身近でしょうか。北海道は風力が多いですね。2年ぐらい前に稚内に行きましたが、あそこは風況がいいですね。ああいうところは風力が適している土地柄だと思います。僕は札幌によく来るので、飛行機から見下ろすと、太陽光パネルがたくさんありますね。

 世界はそのような状況だということを、イメージとして頭に入れておいていただけるとありがたいです。世界で最も使われているエネルギーは化石燃料。その大宗は、電気だけだと石炭と天然ガス。これで半分以上です。運輸を入れると石油が一気に増え、化石燃料は8割近くになります。

 化石燃料はCO2を出します。CO2は温暖化の原因とされています。なぜ「されています」という言い方をするかというと、科学的にわからないからです。我々人類が化石燃料によって排出しているCO2が本当に地球温暖化の原因となっているかどうかは誰も断言はできません。ただ、そうなんじゃないかと言われています。

 実際、CO2の地球上の大気濃度は毎年更新しています。過去最高です。ですから、CO2濃度が右肩上がりで高くなっているのは間違いないと思います。それを翻ってみると、「人類が出しているCO2=化石燃料の消費」ということになっていくのだろうと予想はつきます。しかし、確証はありません。だからアメリカのトランプ大統領は、インチキだと言っていますね。地球温暖化の原因は化石燃料の消費ではないと言っています。オバマさんはそうは言っていませんでしたが、その前のブッシュ政権のときには「違う」と言っている政治家はいました。世界でもそういう人はいます。日本ではあまりいませんが。日本政府はCO2が地球温暖化の原因とされていることを前提に政策を進めているので、原子力や再生可能エネルギーなどCO2を出さないものを使っていきましょうという政策が浸透してきています。

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