北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
世界のエネルギー情勢と日本の進むべき道

(6-3)

●日本のエネルギー自給率は非常に低い

諸外国との比較(一次エネルギー自給率)

 エネルギー自給率についても、意外と知られていないので紹介します。運輸や電気を入れた自給率のグラフです。OECD35カ国で見ると、日本は下から2番目の34位です。直近の数字で、日本のエネルギー自給率は9.5%。エネルギー自給率とは、外国から輸入せずに自分の国だけでエネルギーをどれだけ賄えるかということです。

 33位は韓国です。韓国と日本は非常に似ています。韓国は北朝鮮と地続きですが、それを除けば海に囲まれています。国土は日本よりもかなり狭く、日本と同じように地下資源がほとんどないので、韓国はエネルギーについては日本の縮小版といえます。日本が以前、韓国よりもエネルギー自給率が高かった理由は、原子力があったから。でも、現在は原子力が止まってしまったので低くなりました。

 原子力はエネルギー自給率の中に入っています。ものすごく小さな体積で莫大なエネルギーを作るので、燃料を一度輸入したら長く使うことができ、「準国産エネルギー」と言われています。いずれにしても、水力や太陽光など再生可能エネルギーと合わせてもエネルギー自給率はずいぶん少ないですね。

石川 和男 氏 上位を見ると、ノルウェーはすごいですね。エネルギー自給率796.2%ですから、約800%です。オーストラリアは306.0%。カナダは173.9%。アメリカはあんなに国土が広いのに100%まではいかず92.6%。でも、9割以上を自給できているので良いでしょう。

 国土があまり広くないにもかかわらず、イギリスは11位で68.2%。イギリスは日本よりも面積はかなり小さいのに、7割ぐらい自給しているんですね。フランスは52.8%。ドイツは石炭大国で36.9%。ドイツは近年、風力が多く、太陽光も頑張っていて、再生可能エネルギーの先進国と言われています。私はドイツに何度か行っていますが、風況が良いせいか、風力はたくさんやっています。

 日本は太陽光が多いですね。日本は東日本大震災の翌年2012年に固定価格買取制度(FIT)が始まり、それをきっかけに太陽光が著しく伸びました。今、日本の太陽光は、アメリカと中国に次ぐ世界第3位です。発電量ではドイツを抜きました。ちなみに水力は世界8位です。世界ベスト10に太陽光と水力が入っています。

  前回のCOPのときも、日本は再生可能エネルギーが遅れているとか、再エネ後進国などと新聞の見出しにありましたが、私に言わせれば、日本は再エネ後進国ではありません。日本は相当、再エネにお金をかけて頑張っています。ただし、風況という点では風力の適地があまりありません。だから目立たないだけで、太陽光は相当に導入されています。

●再エネ賦課金は今後も上がり続ける

石川家の電気料金(2019年4月検針分)

 ここで皆さんに挙手していただきたいんですが、毎月の電気料金の明細を必ず見ている方はどれくらいいらっしゃいますか。(会場を見て)手を挙げた方は、ざっと半分ぐらいでしょうか。私は仕事柄もあり、毎月見ています。

 わが家は4人家族で、2階建ての家です。屋根には太陽光パネルを付けていませんが、夏に付ける予定です。これは2019年4月分のわが家の電気料金明細の一部。この月の電気料金の合計額は約21,000円です。「消費税等相当額」というのが皆さんのお宅の明細にも必ず記載されています。また、「再エネ発電賦課金」というのも載っています。日本は再エネをこれだけ頑張っているというのを見せるために。あるいは、再エネに関する我々の負担は毎月これくらいかかっているということをお伝えするために、私は講演で必ずこれをお見せしています。

 今は消費税が10%になったので金額が上がっていますが、再エネ賦課金は2,038円、消費税は1,587円です。消費税というのは社会保障の財源ですね。消費税10%のうち8%は主に高齢者福祉に使われます。具体的に言えば、年金・医療・介護などです。あとの2%は幼児教育の無償化財源です。何を言いたいかというと、こうした社会保障財源よりも、再エネ賦課金のほうが高いです。これから2035年くらいまでにもっと上がり続けます。皆さん、知らなかったでしょう。ほとんどの方は明細を見ないですよね。

●社会保障費に圧迫される日本

 エネルギーも大事ですが、我々が生きている日本がどういう国かを理解するために、駆け足で俯瞰してみたいと思います。

日本全体を俯瞰する(1)

 このグラフもイメージでとらえてください。左端は1950年(昭和25)年です。つまり戦後5年目です。右は2060年で、未来の見通しを表しています。日本の総人口は戦後から増えていき、2008年でピークになって、現在は減っていっています。2060年ごろの人口は8,800万人ぐらいになると言われています。戦後に人口が増えたのは、医療環境が良くなったからです。ある講演を聴いてなるほどと思いましたが、日本人の寿命が延びたのは、下水道の普及が理由だそうです。

 私は昭和40年生まれです。先ほどご紹介にあったように、生まれは福岡ですが、幼稚園までは盛岡で過ごしました。暖かい土地から寒い土地に移って、トイレにハエがたくさん飛んでいました。今はそういう光景がなくなりましたね。理由は、水洗トイレが普及したからだと言われています。私は54歳で、その話を聞いたのは40代の頃です。以来ずっと、どこのホテルでも旅館でも、トイレにハエがいるかどうかを必ずチェックします。それくらい、病気を媒介するものがいなくなっているということです。

 2060年に「高齢化率38.4%」とあります。約4割です。高齢化率とは65歳以上人口の割合のことで、歩いていて10人とすれ違ったら4人がお年寄りということです。今は28%ぐらいですから、2人から3人の間ですね。

日本全体を俯瞰する(3)

 次に平均寿命についてお話しします。直近のデータでは、男性の平均寿命は約81歳です。女性は約87歳です。これは世界的な傾向で、どの国でも平均寿命は女性のほうが長いです。2065年ごろになると、女性の平均寿命は約91歳と予想されています。すごいですね。男性は約85歳です。

日本全体を俯瞰する(4)

 もう一つは健康寿命です。平均寿命よりも概ね10年ぐらいマイナスです。男性は平均マイナス10年、女性はマイナス12〜13年です。つまり、男女を平均すると、10年ぐらいが「不健康な期間」ということになります。この不健康な期間に消費税がかかるわけです。その人数が増えるので消費税が必要だという理屈です。別に財務省が「借金が多いからやれ」と言っているわけではありません。実際には全体的なパイが増えるから医療・介護・年金も増えますね。しかも少子化なので、納める若手が少なくなっています。だから保険料だけでは足りなくて、「お年寄りも自分で負担してください」という意味で消費税を上げているという理屈になります。消費増税に賛成か反対かについては、我々も有権者なので選挙のときに意思表示をすればいいと思いますが、私ははっきり言って嫌いです。嫌いだけど賛成です。しょうがないです。僕には高校生と中学生の子どもがいますが、この子たちに一方的に保険料を払わせるのは忍びないです。だからしょうがないと思います。消費税について嫌だという声がありますが、理由はそういうことです。財務省の説明が「借金が多いから、それを返す」などと言うからおかしくなるんです。

 「借金が多いのは政治のせいじゃないか」という話になりますが、そうではないです。なぜ借金を抱えるようになったかというと、少子化、高齢化というのもあるし、なかなか景気が良くならないなどいろいろな理由があります。そういう国に生きているわけです。

 私は2060年のときに95歳です。皆さんはその頃はおいくつでしょうか。人生100年時代だそうですので、頑張って生きましょう。健康なまま終わりたいですよね。

 私は54歳ですが、医療や介護のお世話にならないよう今から準備をしています。食べ物や運動なども心がけています。皆さんも気をつけていらっしゃることがあると思いますが、それが一番大事なことだと思います。健康なまま、朝起きたら死んでいるというような「ピンピンコロリ」がいいですね。私の両親がどちらもそういう亡くなり方でした。ですから、年金保険料を下げる方向でいきましょうよ、という話です。

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