北海道エナジートーク21 講演録

エネルギー講演会
世界のエネルギー情勢と日本の進むべき道

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エネルギー講演会「世界のエネルギー情勢と日本の進むべき道」

講師 石川 和男 氏

(社会保障経済研究所 代表)

石川 和男 氏

1965年福岡生まれ。1989年東京大学工学部卒業、同年通商産業省入省(現経済産業省)、資源エネルギー庁、生活産業局、環境立地局、産業政策局、中小企業庁、商務情報政策局、大臣官房などを経て、2003年専修大学客員教授に就任。2007年経済産業省を退官し、その後は東京女子医科大学特任教授、内閣府規制改革会議専門委員、内閣府行政刷新会議WG委員、政策研究大学院大学客員教授、東京財団上席研究員などを歴任。2011年より社会保障経済研究所代表に就任。2017年から算数脳育研究会代表理事も務める。現在、テレビやインターネット番組などでMCやコメンテーター、クイズ番組の回答者など出演多数。主な著書に『原発の「正しいやめさせ方」』(PHP新書)など。

●私たちの暮らしとエネルギー

  今日はエネルギーの話をさせていただきますが、エネルギー問題というのは幅が広いですね。報道記事の検索をしていると、2011年の東日本大震災に伴う福島第一原発事故以降は、毎日と言っていいほど報道などでエネルギーの話題が取り上げられ、それは今も続いていると思います。

 その前は、私が小学生の頃でしたが1973年のオイルショックについて記憶にある方もいらっしゃると思います。そういう危機的な状況になるとエネルギーの話題は一気に膨れ上がりますが、オイルショック後は、それほど話題が続きませんでした。エネルギーの話題が日本国中を駆け巡ったのは、やはり福島第一原発事故のときだったと思います。

 一昨年は北海道胆振東部地震が発生し、日本では恐らく初めてだと思いますが、広範囲なブラックアウトが起きました。やがてその傷も癒えると、何事もなかったかのように話題が消えていくわけですが、一方で、2011年の福島第一原発事故に関しては現在も話題に事欠きません。それだけ原子力事故というのは、世界的にも大きな話です。

 世界のエネルギー情勢に目を向けてみると、原子力事故といえば1971年、アメリカのスリーマイル島原発事故がありました。次に、1985年のチェルノブイリ原発事故がありました。旧ソ連で、現在のウクライナです。そして、日本は3番目の大きな原子力事故を経験しました。日本国内にいるせいか、福島第一原発事故は長く尾を引いている感じがします。

石川 和男 氏 ただし、その後にいろいろと新しい動きも出てきて、例えば固定価格買取制度(FIT)では、太陽光を中心とした再生可能エネルギーが日本ではだいぶ増えました。ややバブル的な増え方をしてきたので課題もありますが、再生可能エネルギーを進めなければいけないという気運が高まってきたことは事実です。

 再生可能エネルギーの中でも太陽光は身近ですね。会場の皆さんの中で、太陽光パネルをご自宅の屋根に付けている方は手を挙げていただけますか。(会場を見渡して)2人だけですか。少ないですね。

 太陽光発電はそれなりの発電をしますが、発電量があまり多くないので、地産地消だからといって再生可能エネルギーにばかり頼るのは無理です。暖かいところだと太陽光だけで過ごせるとか、SNSなどでも太陽光が非常に多くなったのでそれだけで暮らせるなどと言っている人がいますが、無理です。太陽は夜になったら沈んでしまうので、夜は発電しません。夜に何もせずに、昼だけ電気を使うというわけにもいきません。冷蔵庫などは24時間付けっぱなしですから。

 再生可能エネルギーだけでは生きていけないので、化石燃料や原子力などの安定した大型電源をもう一度評価するというのが大事なことですが、福島第一原発事故以降、原子力は止まってしまいました。

●世界のエネルギー情勢を俯瞰する

世界のエネルギー事情(1):世界全体の一次エネルギー供給量の推移

 このスライドを見ていただけますか。地球上で最も多く使われているエネルギー資源は何だと思いますか。一番面積の大きい水色の部分が石油。意外と知られていませんが、石油が世界で一番使われているエネルギー資源です。直近のデータが2017年ぐらいなので、今とそれほど変わりません。石油は、世界で使われているエネルギー資源の約32%を占めています。

 石油が多く使われているのは、発電所ではありません。運輸、つまり輸送です。具体的には自動車や飛行機です。その次に使われているのが、一番下の茶色い部分、これが石炭です。割合は約27%です。その次が、濃い青の部分の天然ガスで、割合は約22%。石油と石炭と天然ガスで4分の3以上を占めています。残り4分の1以下を原子力や水力、最近出てきた風力や太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーで賄っているというのが世界の現状です。

 エネルギーを語るときには日本だけを考えるのではなくて、世界全体を見ることから始めると、日本の状況が今どうなっているかという想像がつくわけです。

 次に大きいのが黄色い部分で、これは原子力です。約5%しかありません。これを多いと見るか少ないと見るかは感じ方によるので、何とも言えません。次に水力は2.5%。原子力の半分です。ちなみに日本では、水力は電気の1割しか占めていません。また、緑色の部分はバイオマス。わかりやすくいえば「ごみ発電」です。さらに1〜2%に満たない部分に、太陽光、地熱、風力があります。世界では、再生可能エネルギーはそれぐらいの割合です。まだまだこれからのエネルギーですね。

 グラフは、1971年から2016年までです。この間の半世紀弱はこのように推移してきたということをイメージしていただければ結構です。

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