北海道エナジートーク21 講演録

 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム2014
「これからの日本のエネルギーについて
 〜新しいエネルギー基本計画を知る〜」

(6-6)

質疑応答

橋本 では、会場の皆さまからご質問をお願いいたします。

 

質問者1 奥家さんから「エネルギー基本計画」に関するさまざまな資料を提供いただき、感銘を受けております。買取制度の導入によって、昨日あたりのニュースでは、認定容量を制限するということが報道されていました。これについてお聞きしたいです。

 また、杉山先生に質問ですが、ここ最近、原子力工学を希望する学生が減少しているのかどうかについて教えてください。

 

奥家 固定価格買取制度についてのご質問ですが、九州や東北が接続保留、特に状況が厳しいのが九州電力と報道されています。

 何が起きているかというと、九州電力管内で、昨年度は4〜2月に認定を求めてきた件数が7万件でしたが、年度最後の3月に7.2万件の駆け込み申請がありました。要するに36円から32円に切り替わるタイミングの3月に、突然飛び込んできたわけです。果たしてどれぐらいの量が接続の希望があるのかわからない状態が続き、これは大変だということになりました。

 なぜ大変かというと、九州電力管区内において年間でいちばん昼間の電力需要が低いゴールデンウィークが800万kWです。それについて「認定を得たので接続してください」ということで申し込みにきたのが1790万kWでした。2倍以上来たわけですね。これは、どのようにこなしていいかということで保留をかけたことがニュースになっています。

会場の様子

 実は、北海道においても、最低需要期間の昼間で250万kWぐらいだったと思いますが、それに対して接続希望が330万kWぐらいありました。接続のしかたもいろいろなルールがあって、その一つに、「接続を認めるけれども、30日未満だとちょっと無理だから接続しないので許してくださいね」と、一般的には30日未満であれば電力会社が接続をお断りできるしくみがあります。

 ところが北海道の場合は、需要量よりも供給量のほうが多い時期が出てきてしまったので、「30日以上であってもお断りすることがありますが、それでもよければ接続しましょう」という特例を設けることによって、いま北海道では九州のような大騒ぎは起きていません。

 九州については、突然3月に駆け込みで大量に入ってきてしまったので、手加減をどの段階ですればいいかわからない状態で突然2倍まで達したということです。しかも、30日未満しか接続拒否ができないので、順番に皆さんから接続していただくこともできないということで保留をかけています。

 この件で、いま経済産業省でワーキンググループを立ち上げています。本当にどれぐらいまで受け入れられるのか、出力抑制の30日ルールを撤廃すれば接続できるのか、さらに需要が大きい関西などに電気を送れば取り込めるのか。そういった計算をしたうえで、どれぐらい入れられるのかを検討しています。

 ただ、手続きはいくつかの段階があり、経済産業省の認定を受けても、まだ融資条件の交渉をしていることが多いようです。また、電力会社から接続が許可された段階からお金を動かしているケースも多いようです。逆に、認定前にお金を使っているケースは、土地を先に買ってしまったとか、もともと土地持ちだった方が品薄状態の太陽光パネルをあわてて早めに買ってしまったケースが多いようです。こうした事業リスクをどう考えるかということだと思います。

 九州については2倍の量が入ってきて、社会問題として取り上げられていますが、特に懸念されたのは、分譲住宅の屋根の上に太陽光パネルを張って、ハウスメーカーさんが売り出して、一般の方々がそれを買ったというケースです。売電による売上を含めて住宅ローンを組んでいるケースが結構あって、そうした場合は影響を受ける範囲が広いのではないかということが懸念されていました。

 先日、九州電力さんが「低い電圧のものについては、保留を解除してもう一回接続申し込みを受け付けます」という形で、安心していただくような形で対応しているという状況です。

 また、賦課金についてですが、初年度は42円で買い取りが決まったら20年間それを保証します。翌年度は36円で売ることができ、これも20年間保証します。実はまだ運転開始している人たちが少ないために、残念ながら賦課はどんどん上がっていきます。

 

杉山 原子力を学ぶ学生が減っているかどうかについてのご質問にお答えします。専門家も含めていちばん心配しているのがその点です。なぜかと言うと、私と同世代の人は、原子力よりも広島・長崎の原爆しかイメージがないからです。

杉山 憲一郎 氏 今年はビキニ島の被爆から60周年。やはり、被爆すると肝がんで亡くなるという報道がされています。しかし、当時は輸血が売血だったために、皆さん肝炎で亡くなっておられます。なぜわかるかと言うと、ビキニ島で被爆した人たちの中には、肝炎あるいは肝がんで亡くなった人はいないからです。これをどう解明するかは非常に大事な戦略だと思います。文科省が方針を変えれば私は変わると思っています。

 ここ20年ぐらいのバイオの研究分野では、放射線を瞬時に浴びるかゆっくり浴びるかによって、人間の体は対応できます。学生たちが自分の父母や祖父母に「お父さん方の情報は古すぎます。日本のためにこういう考え方をしなければ」と新しい考え方を伝えてくれるようになることが、私の最大の夢です。そのように日本が変われるかどうかが、今後の流れを左右すると思っています。

 

質問者2 資源エネルギー庁さんは、どんなことがあっ ても原発を進めるという基本認識があったと思います。私自身は原発を過渡期のエネルギーと考えており、再生可能エネルギーを将来的にはどんどん取り入れるべきだと思っているので、その辺をお聞きしたいと思います。

 それと、原子力が安全だというのであれば、東京電力の原発を管内の堆積層などに埋めれば、地震が来ても大丈夫ではないかと思います。エネルギーロスもなく、東北の方たちに迷惑をかけなくて済みます。ただし、雇用の場を確保するために原発を誘致した経緯もあると、前回のセミナーで知りました。

 また、リスクの考え方ですが、今後本当に原発を進めていいのかどうか。「原発はお金がかかるからやめよう」という意見が北電さんの若い職員の方から出た場合は、経産省の方はどのように考えるかお聞きしたいです。

 

奥家 「エネルギー基本計画」は10年から20年の中長期を視野に入れて作っていくことになります。今後エネルギーミックスという形でどのように一次エネルギー構成、電源構成を考えるかということになりますが、まず原子力発電については「可能な限り低減させます」というのが国の方針です。再生可能エネルギーは3年間最大限加速するとし、その後も着実に導入するとしています。

 一方で、原子力を再生可能エネルギーに全部置き換えられるほどの割合を実現できるかというと、コストの面などを踏まえると難しいかもしれません。ただ、比率は増やすという方向を出しています。

 したがって、20年弱ぐらいのスパンで、原子力を下げて再エネも増やす。省エネも増やす。石炭火力や石油火力、ガス火力の効率化も進める。それらによって原子力の比率を低減させるという方向は出していますが、ゼロになるかどうかというのは、20年ぐらいのスパンでは難しいだろうと考えています。つまり、過渡期をどれぐらいのスパンで見るかによって、考え方が大きく変わってくるだろうと思います。

会場の様子

 一つのエネルギー源ですべてのエネルギー問題を解決することができないので、全体でバランスを取っていくしかないというのが「エネルギー基本計画」の考え方です。ただ、最善のコンビネーションを追求していく作業をいま進めているということです。

 また、日本のエネルギー自給率がこれだけ低く、中東で何かあったときに石油ショック時のように右往左往しないために、原発立地地域の方々と電力会社さんは、さまざまな話し合いを重ねてきています。私自身は「エネルギー基本計画」を作ったあと、立地地域の方々ともお話しさせていただきましたが、日本の最大の問題であるエネルギーの脆弱性を「俺たちの地域で支えるという思いでやってきた」と言われる方々がたくさんいらっしゃることも現実です。特に電力の大消費地の人たちは、立地地域の人たちに経済成長を下支えし、現在の生活を支えてきてもらったということを、私たちも含めて真剣に考えるべきだと思います。

 

杉山 原子力を含めてエネルギーをどう選んでいくかについては、エネルギー自給率の低い日本のみならず、韓国でも台湾でも、この問題に非常に困っています。では、サウジアラビアはいまなぜ原子力をほしがっているか。それは、我々が使っている良質の石油の量が決まっているのと、さらに開発しようとするとコストがかかるという事情もあります。そういう中で、我々日本人はどんなエネルギーを選ぶかということだと思います。

 

橋本 ありがとうございました。会場の皆さまはどのようにお感じになったでしょうか。私は、「原子力エネルギーが私たちを裏切った」「信頼関係を傷つけた」と思うよりも、むしろ背を向けることなく、これからどうしていくべきかについて、さまざまな価値観の人同士でもっと話し合うことが必要だと感じました。以上でシンポジウムを終了とさせていただきます。

ページの先頭へ
  6/6  
<< 前へ戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) 講演録トップへ戻る >>