北海道エナジートーク21 講演録

 
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北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム2014
「これからの日本のエネルギーについて
 〜新しいエネルギー基本計画を知る〜」

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エネルギーシンポジウム2014「これからの日本のエネルギーについて〜新しいエネルギー基本計画を知る〜」
 

コーディネーター
  フリーアナウンサー 橋本 登代子 (はしもと とよこ) 氏
 
パネリスト
  21世紀政策研究所 研究主幹 澤 昭裕 (さわ あきひろ) 氏
  北海道大学 名誉教授
北海道エネルギーシンポジウム実行委員会
代表世話人
杉山 憲一郎 (すぎやま けんいちろう) 氏
  経済産業省
資源エネルギー庁長官官房総合政策課
需給政策室長
奥家 敏和 (おくや としかず) 氏
     

第四次エネルギー基本計画のポイントについて
化石燃料への依存度は90%以上

橋本 福島第一原子力発電所の事故から3年半以上が経ちました。 橋本 登代子 氏以来、日本の原子力発電所はすべて運転をストップしています。そして、この間、原子力についてさまざまな情報が飛び交い、信頼できる情報とは何なのかを考えさせられてきました。皆さまもそうだと思います。現在、北海道電力では、原子力の代わりに火力を8割使っていますね。その燃料である石油、天然ガス、石炭などを輸入し、消費量が増えた分の負担が私たちの家計に重くのしかかっているところです。

 国は2014年4月、「第四次エネルギー基本計画」を策定しました。本日は、国の担当者、エネルギーや環境、経済の専門家にご登壇いただき、エネルギー基本計画のポイントをお聞きしながら、会場の皆さまと一緒に勉強していこうと思います。

 まず、経済産業省資源エネルギー庁長官官房総合政策課需給政策室長の奥家敏和さんにお話をお願いします。

 

奥家 私からは、2014年4月11日に閣議決定した「第四次エネルギー基本計画」についてと、その前提となる日本のエネルギーの状況についてお話しします。

日本のエネルギー自給率

 まず、日本は化石燃料に乏しいとよくいわれますが、実際どれほどのものなのかを見てみましょう。日本国内で採れる、作れるエネルギーのことを自給率といい、国際的には、原子力も自給率に含めて計算することになっています。その結果がこのグラフですが、OECD34カ国中、日本は33位で自給率6%です。日本より自給率の低い国はルクセンブルク。国というよりは小さい県のような地域です。その隣はフランスで、原子力を中心に他国に電力を安定的に売っています。先進国の中で、日本とルクセンブルクだけがエネルギー自給率で10%を切っているのが現実です。

 そうなると当然、海外からの化石燃料に頼る割合が大きくなります。日本の一次エネルギーの供給構造では、第一次石油ショックのあった1973年、海外からの化石燃料の依存率は90%以上でした。その後、少しずつ努力して依存度を下げてきたわけです。しかし、東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故後、やはり化石燃料を使わざるを得なくなり、いま海外からの化石燃料への依存率は再び90%を超えています。

日本の電源構成の推移

 この傾向が顕著に表れているのが電気の世界です。「日本の電源構成の推移」を見ると、第一次石油ショック時の1973年は、トイレットペーパーが品薄になって大変だったことを皆さんも覚えていらっしゃると思います。 この時代、電気はどうやって作られていたのでしょう。地下鉄などはあまり発達していなかったので、電気の需要は今ほど大きくなく、水力がそれなりに役割を果たしていました。また、石炭は国産でした。当時は海外からの化石燃料への依存度は76%で、特に石油に頼りすぎていることがネックでした。そこで、日本は世界で初めて液化天然ガス(LNG)を発電に使ったわけです。さらに、国内で生産できるエネルギーとして原子力をもっと使おうと取り組み始めました。それによって約30年をかけて、海外からの化石燃料の依存度を約15%下げてきました。

 東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所は次々と停止しましたが、それをカバーしたのは化石燃料でした。いま海外からの化石燃料の依存度は90%近くです。第一次石油ショック時よりもずっと厳しい状況だということを、ぜひ頭の片隅に置いておいていただきたいと思います。

燃料の備蓄はどれだけ有効か

奥家 ただし、海外に頼っているからといって、調達先の地域が安定していれば、それほど心配する必要はないかもしれません。

 日本で消費される石油の8割以上は、中東から来ています。さらに日本の発電電力量の約50%を担っているのは天然ガスです。

 そもそも天然ガスが使われるようになった理由は、中東に石油を依存しすぎていることに不安があったからです。そこで天然ガスの調達先は、オーストラリア、マレーシアでした。その他インドネシア、ブルネイなど、できるだけ近いところから調達しようとしてきました。

 震災前、中東のカタールは4、5番目でした。ところが東日本大震災が発生し、原子力発電所の事故が起きて原子力発電所が次々と停止して、ガスを使わざるを得なくなりました。でも液化施設を持っていないと、緊急に供給できないんです。実際、日本で急にガスが必要になったときに、供給する余力があったのはカタールでした。現在、日本はカタールとオーストラリアにほぼ同じくらい依存しています。発電の約4割を天然ガスに頼っていて、そのうちの3割は中東から来ています。

主な電力源の投入燃料規模と在庫状況の比較

 でも、備蓄があれば心配しなくていいと思われるかもしれません。確かに第一次石油ショックの後に、日本は石油の備蓄を始めました。石油は発電用だけで67日分の備蓄があります。さらに、ガソリンなど発電以外のもの、国家備蓄を含めた日本の備蓄は約190日以上分あります。

 ガスは、コンバインドサイクルの場合発電効率が非常に高いので、年間100万kWの発電所を回すのに必要な燃料の量は、石油より少なくて済みます。石油の場合、20万トンのタンカーで8隻弱ですが、ガスの場合は20万トンのタンカー5隻弱で足ります。ただ、備蓄が2週間分もありません。なぜならば、液化ガスはマイナス162℃を保たなくてはならず、高いコストがかかります。さらに、マイナス162℃で管理をしても、毎日0.1%ずつ自然に気化します。すなわち、備蓄していても、横でずっと使い続けなければ無駄になってしまうということと、管理が難しい。効率的に使おうと思えば、そんなに備蓄はできず、せいぜい2週間弱です。産出国の中東でもしも何かあったら、果たしてどうなるか想像してみてください。

 それに比べ、実は原子力はパワーがあります。100万kWの発電所を1年間回すのに必要な燃料は約20トン。10トントラック2台分ですから、燃料の投入量が圧倒的に小さい。日本がすでに受け入れているウランは相当量備蓄されていて、仮に供給が途絶しても、少なくとも2年間は発電を続けられます。

 それぞれの電源ごとに強みと弱みはあり、エネルギーの安全保障を考えたときに、各電源のバランスをどう取るのかということが大きなポイントになってくると思います。

原発停止が経済にもたらす影響

奥家

マクロ経済へのインパクト

 続いて経済面を見てみます。日本は貿易立国でしたが、2011年、貿易収支で31年ぶりに大幅な赤字を出しました。これは化石燃料の輸入量が一気に増えたからで、いまも拡大は止まりません。現在はマイナス19.2兆円で、そのうち化石燃料の輸入の増加分が10兆円です。これは、原子力発電所が止まったせいだけではありません。燃料価格が上がったり、円安になったりなどの理由もあります。ただ、原子力発電所が停止したことによる影響は、2014年度で3.7兆円と私たちは試算しています。1日あたり100億円を余計に支払うことによって、日本はどうにかエネルギーをまかなうことができています。

 こういう環境の中ですから、電気料金も上がらざるを得ません。平成22年度に比べて25年度一般家庭では約20%、産業サイドでは約30%電気料金が上がりました。特に産業界では大変なことです。例えば鋳造、鍛造などの分野では電気を相当使いますが、突然電気料金が上がったことで廃業したという例もあります。

奥家 敏和 氏 さらに、いま電気の市場では6割が自由化されていますが、4割はまだ規制されています。 総括原価方式で規制されているわけですね。その電気料金は、いくつかの原子力発電所が動いていることを仮定して決められていたわけです。しかし、今は動いていません。代わりに、ガスや石油や石炭を使って発電をするわけですが、それは電気料金に乗っかっていません。その分を電力会社が持ち出し、3期連続などで赤字をずっと出していました。しかし、残念ながら11月1日から、北海道電力がもう一段値上げをせざるを得なくなったのには、実はそういう理由があります。他の電力会社も当然、原子力発電所が動いていない分の赤字分は持ち出しているので、値上げをするかもしれません。

 実際に北海道電力の料金改定は、私たちのほうで審査するわけですが、一段目7%値上げしたときの段階で相当リストラをしてもらうということで厳しく査定をし、希望額を削り込んで値上げ幅を抑制しました。今回は、見直す余地が狭かったというのが事実です。17%超で値上げの申請がありましたが、最終的には、トップランナー方式で「一番安い石油やガスの価格を調達したところと同じ条件で買いなさい」という条件で2%弱削り込みました。それでも値上げ幅は15%を超えてしまいました。さらにこれを11月1日、電気のピークが冬に来る北海道でそのまま適用して大丈夫かと私たちは心配でした。したがって、北海道電力ではボーナスなどは全部カットです。冬はどうにか3%カットしてもらうことで折り合ったというのが、北海道電力の料金の審査結果です。それでも残念ながら12%強値上げをするということですね。

 日本はマクロ経済、ミクロ経済ともに相当インパクトを受けている状況ですが、これだけ苦労しているにも関わらず、世界からは「日本はなぜ二酸化炭素の排出を増やしているのか」と見られます。実は電力部門以外のところは非常に頑張っていて、二酸化炭素の排出量は減っています。原子力発電所が動いていない代わりに、排出係数の低いガスがメインに切り替わっているとはいえ、やはり二酸化炭素の排出は増えています。したがって日本の総排出量の約1割にあたる1.1億トン以上が、電力部門の排出量として増加しました。私たちはこういう非常に厳しい状況に直面しています。

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