奥家 ただし、海外に頼っているからといって、調達先の地域が安定していれば、それほど心配する必要はないかもしれません。
日本で消費される石油の8割以上は、中東から来ています。さらに日本の発電電力量の約50%を担っているのは天然ガスです。
そもそも天然ガスが使われるようになった理由は、中東に石油を依存しすぎていることに不安があったからです。そこで天然ガスの調達先は、オーストラリア、マレーシアでした。その他インドネシア、ブルネイなど、できるだけ近いところから調達しようとしてきました。
震災前、中東のカタールは4、5番目でした。ところが東日本大震災が発生し、原子力発電所の事故が起きて原子力発電所が次々と停止して、ガスを使わざるを得なくなりました。でも液化施設を持っていないと、緊急に供給できないんです。実際、日本で急にガスが必要になったときに、供給する余力があったのはカタールでした。現在、日本はカタールとオーストラリアにほぼ同じくらい依存しています。発電の約4割を天然ガスに頼っていて、そのうちの3割は中東から来ています。
でも、備蓄があれば心配しなくていいと思われるかもしれません。確かに第一次石油ショックの後に、日本は石油の備蓄を始めました。石油は発電用だけで67日分の備蓄があります。さらに、ガソリンなど発電以外のもの、国家備蓄を含めた日本の備蓄は約190日以上分あります。
ガスは、コンバインドサイクルの場合発電効率が非常に高いので、年間100万kWの発電所を回すのに必要な燃料の量は、石油より少なくて済みます。石油の場合、20万トンのタンカーで8隻弱ですが、ガスの場合は20万トンのタンカー5隻弱で足ります。ただ、備蓄が2週間分もありません。なぜならば、液化ガスはマイナス162℃を保たなくてはならず、高いコストがかかります。さらに、マイナス162℃で管理をしても、毎日0.1%ずつ自然に気化します。すなわち、備蓄していても、横でずっと使い続けなければ無駄になってしまうということと、管理が難しい。効率的に使おうと思えば、そんなに備蓄はできず、せいぜい2週間弱です。産出国の中東でもしも何かあったら、果たしてどうなるか想像してみてください。
それに比べ、実は原子力はパワーがあります。100万kWの発電所を1年間回すのに必要な燃料は約20トン。10トントラック2台分ですから、燃料の投入量が圧倒的に小さい。日本がすでに受け入れているウランは相当量備蓄されていて、仮に供給が途絶しても、少なくとも2年間は発電を続けられます。
それぞれの電源ごとに強みと弱みはあり、エネルギーの安全保障を考えたときに、各電源のバランスをどう取るのかということが大きなポイントになってくると思います。
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