北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム2014
「これからの日本のエネルギーについて
 〜新しいエネルギー基本計画を知る〜」

(6-2)

再生可能エネルギーの現状と課題

奥家

再生可能エネルギーの導入状況

 そこで、私たちも「エネルギー基本計画」で、再生可能エネルギーの導入を明確に訴えており、3年間最大限に加速します。

 実際、再生可能エネルギーの導入は急ピッチで伸びています。2013年は導入が30%以上増えました。ただしこれは、高い価格で買い取るという固定価格買取制度のおかげですから、その分の賦課金も増加しています。

 2012年は、賦課金は1900億円でした。当時、水力を除く再生可能エネルギーの電力の総供給に占める割合は1.6%。2013年は2.2%まで増えましたが、賦課金は3500億円です。これは皆さんに負担をしてもらっています。2014年度の賦課金は6500億円にまで増えました。いま認定が得られている設備がもし全部本当に動いたとしたら、単純計算で賦課金は2.7兆円になります。これもまた、再生可能エネルギーを入れることには、やはり私たちもまた負担をし、いろいろな努力をしていかなければなりません。

 再生可能エネルギーは国産エネルギーなので、この重要性を私たちは高く評価すべきだと考えています。一方で、最大限に導入するけれども、だから石炭や原子力と置き換えるというスケールのところについては、やはりよく考えなければならないと思います。

 再生可能エネルギーの総電力供給量に占める割合を1%増やすためには、風力発電の場合、風車約2690基を新たに作る必要があります。いま日本にある風車の総数は2000基もありません。1%を増やすことが実際どういうことなのか、皆さんもこれで具体的にイメージしていただけると思います。置き換えるというのはそんなに簡単なことではないというのもまた事実です。

省エネと電源構成はバランスが大事

奥家

再生可能エネルギーの導入状況

省エネルギーの取組状況

 では、省エネについて考えてみましょう。日本は、世界で最も省エネを進めた国の一つです。左上のグラフを見ると、日本よりもイギリスのほうが省エネ効率は良くなっています。イギリスは金融国家なので、製造業があまりないからです。そう考えると、日本は製造業がこれだけあるにも関わらず、エネルギー効率が高いことがわかります。下の2つのグラフを見ると、鉄1トンを作るのに、あるいは銅を精錬するのに、日本はどれだけ少ないエネルギー量でできるかということ。世界を圧倒するほど努力を積み重ねているわけです。

 皆さん、省エネは電気や石油を節約して使わないことだと思うかもしれませんが、実は省エネを進めることは、新しい設備への入れ替えや、新しいコストが発生する要因にもなっています。日本は何しろ省エネ技術を磨き込んできているので、省エネ効率をさらに上げるためのコストは、むしろ年々上がっています。

 それを示すのが右上のグラフです。例として、日本のセメントの製造効率は世界ナンバーワンですが、その代わり、約10年前に比べて省エネを1単位進めるのに必要なコストは約7倍になっています。そう考えると、やはりバランスが大事なのじゃないかと思えてきます。

電力需要に対応した電源構成

 例えば、電気の需要を考えたとき、皆さんは夜に電気を使いませんね。電気をいちばん使うのは昼間です。つまり電気は、昼と夜では需要量が全然違います。また、季節でも違います。北海道では冬にいちばん電気を使います。さらに、旅行中は家庭で電気を使いませんね。そのように、年間を通して需要のピークとボトムの差は大きいわけです。

 また、電気は貯めておくことがとても難しく、まさに生鮮食品と同じ。これを安定的に供給するためには、できるだけコストが高くならないよう、うまく調整することが重要です。そのため、電源ごとの特性を踏まえてバランスを取る必要があります。

 グラフの下から見ていくと、「ベースロード電源」はコストが安くてずっと回し続けるのに向いているもの。水力だと水の流れを止められないので、ずっと発電し続けるのがいい。これは原子力も同じです。次に「ミドル電源」は、ベースロード電源よりコストは高いですが、出力調整は比較的早く、1時間単位でも可能です。さらに「ピーク電源」は、石油もそうですがコストが高いです。ただし数分でピークまで持っていくことができる。「いま需要が増えているから供給量を増やそう」というときに、急遽対応できるものです。

 2010年度にこのバランスがどうだったかというと、ベースロード電源で約6割、ミドル電源が約3割、ピーク電源が約1割でした。ところが震災以降はこのバランスが崩れ、ミドル電源を担っていた天然ガスがベースロード電源としても役割を果たし、それでも足りないので、高くて本来ピーク電源で使っている石油がミドル電源のところを担う形になりました。こういう背景の中で、電気料金は上がらざるを得なかったわけです。

「3E+S」と2つの方針

奥家 こうした背景がある中で「第四次エネルギー基本計画」が作られました。「はじめに」のところでは、私たちの意志が示されています。

 まず、エネルギーの安定供給は日本の課題だということ。その上で、福島の復興再生がエネルギー政策の出発点だということです。

 エネルギー基本計画を作った私の部下も、7月から福島の復興支援チームに異動し、いま福島にいます。エネルギーを担当しているチームは皆、福島に行ったり来たりしているせいか「福島を絶対に立て直さなければならない」という思いを持って、エネルギーのこの難しい状況を乗り越えていきたいと思っています。実際、福島の状況についてはあまり知られていませんが、廃炉の対策に30〜40年はかかる長いものです。ただ、取り組みはそれなりに着実に進んできていると思います。

 例えば4号機。燃料プールの中にあった使用済燃料は、すべて取り出しを終わりました。あとは未使用の188本を取り出せば4号機の分は終わりで、予定より早く進んでいます。私も3週間前に福島に行ってきましたが、人も増え、休息所も整って労働環境が相当良くなっていて、いい感じで動いているなというのを自分の目で見てきました。4号機の中には人が入ることができるので、私も見てきました。

 また、汚染水対策もいまの段階で相当進んでいて、来年には、山側から入ってくる水を止める凍土壁も整う予定です。

 こうした取り組みを進める中で、エネルギー政策はどうあるべきかについてですが、バランスが大事です。安定供給(エナジーセキュリティ)、コストの問題・経済効率性(エコノミック・エフィシェンシー)、環境負荷の低減(エンバイロンメント)、そして安全性(セーフティ)。これを「3E+S」と呼んでいます。

 さらに、このバランスを取っていくために、2つの方針を示しています。

 まず、完璧なエネルギー源というのはありません。エネルギー問題を解決してくれて、量も十分にあるというエネルギー源はない。どれも強みがあり、弱みがあります。要はいちばんいい形の組み合わせをどうつくるかです。

奥家 敏和 氏 もう一つは、技術がどんどん進んでいます。皆さんがエネルギーをどう使うのかについて供給サイドがいち早くキャッチし、無駄に作らず、無駄に設備投資をしないということもできるようになっています。皆さんが自動車を電気自動車にすれば、ガソリンを使わないので二酸化炭素の排出量は減るでしょう。燃料電池自動車を使えばさらに減るでしょう。まさに皆さんのエネルギーの使い方が、エネルギー供給を安定化させるための重要なカギでもあります。それを私たちは政策として使いたいのです。

一長一短、各エネルギー源の位置づけ

奥家 では、各エネルギー源はどういう位置づけなのでしょうか。

 再生可能エネルギーは、二酸化炭素が出ないというだけでなく、国産なのでエネルギー自給率を上げてくれます。したがって、最大限導入を加速していきます。ただ、コストが高いことや供給面での不安定さもあるため、どう取り入れていくかです。

 原子力は強みがあります。やはり安定性と馬力があり、電気をたくさん作れる分安いというメリットがあります。ただ、皆さんが不安に思っているのは安全性をどう乗り越えていくかということだと思います。そのために独立した原子力規制委員会を立ち上げ、世界で最も厳しい水準の規制を導入しました。ここで、安全性や規制水準を満たした原子力発電所については使わせてほしいということで整理をしています。

 石炭は、二酸化炭素がたくさん出ますが、経済性、安定供給に優れています。日本は世界でいちばん優れた火力発電所の技術を持っています。日本で使うだけでなく世界の国々でも使ってもらい、石炭を使うときには二酸化炭素の排出量を世界全体で減らすと。それに日本の技術が貢献していく中で、もう一回評価したいと思います。

 天然ガスにはいま非常に頼っていて、使い方を更に拡大していくことで、ますます重要な役割を担っていくことになります。

 石油については、東日本大震災が発生したときに被災地の人たちが最後に頼ったのが石油とLPガスでした。ところが石油は毎年需要が減っていて、昔のイメージで作っていた石油の供給ネットワークが維持できるかどうか難しくなってきています。そこで、石油産業の経営体制を強化しようという方向を示しました。

 省エネルギーについてですが、産業部門では乾いた雑巾を絞っている状態です。そこで、皆さんにもご協力をいただきたい。例えば日本の家は、省エネにあまり対応した形で設計されていません。他の国では、家を建てるときに省エネ基準に適合していなければいけないというルールがあります。いま私たちは、日本でも建物に省エネ基準の適合をかけることについて検討を進めています。

 以上、ここまでお話しした方向で政策を進めています。

火山の噴火規模

 最後に一つ、川内原発と御嶽山の話を簡単にご紹介させてください。

 あまりきちんと報道されていないので心配になりますが、川内原子力発電所は1.3万年前にあった桜島薩摩噴火に対応しています。その当時、積もった火山灰が12.5cm。川内原発は、15cm積もっても対応できるようになっています。実は、火山の噴火の爆発指数は国際的に8段階で管理されていますが、御嶽山の爆発指数はレベル2です。記憶に新しい雲仙普賢岳はレベルの1。マグマだまりが小さいわけですね。これに対して、川内原子力発電所で対応しているのはレベル6。ちなみに、レベル2とレベル6の差は10万倍です。

 なお、桜島薩摩噴火より大きい噴火は、九州では9万年に1回発生していて、直近で起きているのが姶良噴火で3万年前です。このレベルの噴火は富士山がまるごと吹っ飛ぶくらいの、ものすごく巨大なものですが、数万年に1回しか起きません。「川内原発の30〜40年の運転期間内に火山が発生する確率は非常に低い」と規制委員会が判断したのは、このように科学的なバックグラウンドを踏まえたうえでのことだったわけです。

 これについては情報があまりにも提供されていなかったものですから、この機会を借りて私からご紹介させていただきました。

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