北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

’13新春フォーラム「再生可能エネルギー」の可能性と課題
【第二部】
座談会「再生可能エネルギーの可能性と課題を探る」

(9-8)

座談会まとめ

神津 内山先生はいろいろなことを研究されてきましたが、退官なさるまでにどのあたりまで研究が進みそうですか。

 

内山 まだ夢みたいなことも考えています。今は地球規模で持続可能な発展について考える時代ですね。先ほど高嶋先生がおっしゃったように、中国やインドの人口、エネルギー消費などを考えると、先進国と同じようなことを続けたら、どう見ても持続可能な発展にはなりません。だから、そういうことを真剣に考える時期は近いのじゃないかと思います。

内山 洋司 氏 我々は、ライフスタイルや産業構造の転換期を迎えていると思います。ただし雇用問題も大事ですから、そういうものと絡ませながら方策を検討していく必要がある。ここにエネルギー政策の難しさがあると思います。今の流れで、経済の活性化をするとエネルギー消費が増えます。これはやむを得ない。そういう産業構造になっています。日本だけでなく世界の国々もそうです。

 ですから、どう工夫を凝らして産業を変化させていくか。先ほど言ったように「云うは易し、行うは難し」でなかなか難しい問題です。ぜひ皆さん方の知恵を、新しい産業として発展していただきたいなと考えています。

 私も茨城県でいろいろやっています。例えば太陽電池とヒートポンプをハウスの冷暖房などに使って、ハウス栽培で付加価値の高い農業製品を作り、海外に売っていこう、というようなことを働きかけています。茨城県も北海道に次ぐ2番目の農業県なので、いろいろな面で県の委員会で発破をかけてます。北海道は日本一の農業自治体ですから、ぜひ模範を示していただきたいと考えています。

 

神津 高嶋さん、今日はご講演をいただき、内山先生のプレゼンテーションもお聞きになって、いかがでしょうか。

 

高嶋 実は3.11の前に、一冊の本を書いていました。『原発NEXT』という本です。どういう内容かというと、日本が今後世界で伸びていくことは、少子高齢化などの影響もあって非常に難しいと思っています。そこで、現在日本が世界に最も誇れるのは新幹線と下水などの大規模インフラです。それに加え原発です。でしたと言うべきですね。つまり、これらのものを輸出の三本柱にするということです。ちょうど、世界の流れとして発展途上国は「原発を造る」という前提で動いていたからです。

 3.11前までは、僕は日本の原子力発電は、フランスに並んで世界でトップクラスだと思っていました。その非常に安全で効率的な原発を、世界に輸出していってほしいと。今世界の原発輸出でどの国がリードしているかというと、ロシアと韓国です。ロシア製や韓国製の原発が世界中にできていくのは、ある意味非常に怖いと感じます。だとしたら、日本の優れた技術を生かした原発を輸出していくことが、世界のためになると考え、『原発NEXT』という本を書きました。そして、出版社の人といろいろ話していたところに、東日本大震災が起きてしまい、今その本はお蔵入りしています。

高嶋 哲夫 氏 僕は昔、日本原子力研究所、現在の日本原子力研究開発機構に勤めていましたが、そこで関わった友人たちは非常に真摯に研究開発に取り組んでいたし、優秀な人たちでした。その信頼が一気に崩れたのが東日本大震災です。現在、日本中の人たちが、原発というと全部が福島第一原発と同じであるかのように思っているのが非常に残念です。あえて言わせてもらうと、あの原発は40年前の欠陥外車と同じです。そういうものと、2000年代に作られた日本の技術による国産車では、安全性を含めて質が違うわけです。

 そういうことも考慮して、今後の日本のエネルギー政策や世界に対する日本の役割を考えていかなければならないと思います。日本の役割というのは、3.11以降、原子力に関しては今までよりさらに大きくなったといえます。

 僕の友達には大学教授も多くいますが、彼らが言うのは、原子力を志望する学生さんが少なくなったということです。このままでは、福島第一原発をどう処理していくかという重要で貴重な経験を、日本国内や世界に伝えていく人たちがいなくなってしまうわけです。

 日本が原発から撤退しても、世界ではおそらくどんどん原発ができるでしょう。それに対して日本が関係しないほうが、僕はむしろ無責任で怖いと思います。やはりもっと長い目で、世界レベルで物事を考えていく責任が日本にあると思います。以上です。

 

神津 ありがとうございました。今日は「再生可能エネルギーの可能性と課題」というテーマでお話しをいただきました。

最後ですが、私は「変わったこと」と「変わっていないこと」、「変えられること」と「変えられないこと」を分類して考える必要があるのではないかと思っています。

 「変わったこと」といえば、世界の価値観をはじめさまざまにありますが、「変わっていないこと」を見ると、例えば地球環境問題の重要性はちっとも変わっていません。昨年は、北極海の氷床が非常に早く溶けたということがあり、環境問題は突然改善されるわけではないのです。

 また、日本の人口はピークアウトしていますが、世界の人口は増え続けています。いずれ90〜100億人になるだろうといわれる中で、ますますエネルギーの確保は難しくなり、食糧も水資源も奪い合いの状況になるのではないか。いえ、もう始まっているかもしれません。

 我々日本人は割とのんびりしているので、遺伝子組み換えは嫌だとか、無農薬がいいと簡単に言ってしまいますが、研究家の先生のなかには、「農薬や化学肥料、遺伝子組み換えという技術を進めていかなければ、食糧不足に陥る」という危機感を持っている方たちもいらっしゃいます。

 地球の適正人口は30億人ぐらいだという話を聞いたことがありますが、現実的に人口が増え、90〜100億人になったときのことを考えれば、長期的に食糧やエネルギー、水などを確保するためには、それらを下支えする科学技術が進歩していかなければならないと思います。

 日本も「変わったこと」と「変わらないこと」があります。例えば、日本は地震などの自然災害が多い国だということは変わりなく、これからもいろいろなことが起きるだろうといわれています。その中で私たちは暮らしていかなければならないわけで、そこに必要とされる技術をきちんと確立しなければなりません。

神津 カンナ 氏 また、資源も突然増えたわけではありません。メタンハイドレートの開発により、日本は自前の資源を手にするかもしれないという話もありますが、それが現実のものになるまでどのぐらいかかるかはわからず、現在、無資源という事実も変わらないわけです。さらに、日本は金融国でもなければ、農業王国とも言い切れず、製造加工業の国であるということも変わらない。先ほどから出ている連立方程式の話のように、「エネルギー構造だけを変えたとしても、簡単に変わらない部分もあるのだ」という意識をきちんと持つ必要があるのではないかと思います。

 最近、ある新聞社の医療分野の方と話をしていて、私はとてもびっくりしました。今、エネルギー分野では、化石燃料を輸入するために年間3〜4兆円を海外に払っていると大問題になっていますが、同じように、日本で医薬品や医療器具に関して海外に流出するお金は、やはり年間3兆円ぐらいあるそうです。

 つまり、どんなに国内での医薬品や医療機器の技術開発が進んでも、それらをきちんと日本のものとして存続させる努力をしなければ、その技術を海外のメーカーに取られてしまったり、外国のパテントになってしまったりという事態に陥るのです。それゆえに我々が払っている薬代や検査代のうち、3兆円ぐらいは海外に流出しているというのです。

 太陽光パネルにしろ、日本が良いものを作っても、今や大半が中国メーカーで、家電やオーディオ分野でも日本のメーカーは凋落していく。日本が誇る技術力を、ただそれだけで満足するのではなく、自分たちの技術や国力をどのように守り続けていけるかということも、今の時代に大変試されているのではないかと思います。

 長い時間、真剣にお聴きくださいまして本当にありがとうございました。私も昨夜札幌に来て、ホテルの暖かい部屋でテレビをつけたら、北海道電力の「節電のお願い」が出て、慌てて空調の温度を下げました。北海道の友人が「節電していると部屋の中の暖め方が違うので、融雪温度が低くて雪かきがかえって大変になる」と言っていました。やはりエネルギーというのは、生活を支える土台なんだと改めて痛感しております。

 それでは、マイクを司会の方にお返しします。本日はどうもありがとうございました。

座談会の様子

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