北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

’13新春フォーラム「再生可能エネルギー」の可能性と課題
【第二部】
座談会「再生可能エネルギーの可能性と課題を探る」

(9-3)

再エネ特措法と今後の普及見通し

内山

再生可能エネルギー特措法(2012年7月)

 「もっと加速するためには思い切った政策が必要だということで、昨年7月に「再生可能エネルギー特措法」が施行されました。これによって再生可能エネルギーを電気料金の2倍以上、あるいはそれに近い値段で買い取り、機運を高めていこうというものです。こういう法律ができて非常に期待しているところです。

再エネ特措法による普及量

 この再エネ特措法はまだ1年も経っていないので、状況を見ていく必要がありますが、7月以降、全国で約364万8千kWの再生可能エネルギーが導入されています。うち大半は太陽光発電で、特にメガソーラーが253万5千kWとかなりのシェアを占めています。

 北海道を見ると、この間に日本全体の再生可能エネルギーの15.3%に相当する55万7千kWが導入されていて、導入量が一番多いのが風力。これが日本全体の31%近くを占めています。太陽光は17.3%という状況です。

再エネ特措法の認定推移(太陽光発電の導入量:2012年11月末現在)

 これは北海道経済産業局さんの資料を使わせてもらっています。特措法による太陽光発電の普及量は、3,262,283kwです。北海道では件数で1.7%、発電量で13.8%ということ。つまり北海道では、メガソーラーの普及の割に、家庭用の普及が極めて少ないということを意味しています。

電力会社別導入量(2013年3月末推計)

 風力の場合、これは現在までの各電力会社での導入量を比較したものですが、一番多いのは東北電力です。次に九州電力、中国電力、北海道電力という順です。私から見ると、北海道はポテンシャルが高いはずですが、他の電力管内に比べると導入量が低いといえます。これは系統の接続問題、あるいは需要でしょうね。そうしたマッチング問題というのが北海道特有の課題として残されていると判断できます。

風力発電の導入要件

 風力発電の導入要件ですが、まず風況が良くならなければいけません。最低でも平均風速5m以上は必要だということ。次に、土地が広く立地制約がないということ。それから、資材搬入用道路があること。既設送電線への接続が容易であること。さらに環境影響評価が要求されているので、それに適合されないといけません。導入に際しては、地方自治体や住民の協力が得られることが必要であること。さらに経済的であること。そういう要件が必要です。

再生可能エネルギーの普及見通し

 再生可能エネルギーの普及見通しについて、理論的なポテンシャルは非常に大きいといえます。しかし、経済的ポテンシャルとなると、どの国や地域でも非常に限定されてしまうという課題があります。場所によって立地制約と経済性の格差が大きいというのも特徴で、そういう点から、地域ごとに導入可能量を正確に分析する必要があるということが課題です。

 ヨーロッパでいろいろな事例がありますが、地域ごとに特徴があって導入されていて、それらがすべて日本に当てはまるということにはなりません。将来どの程度まで導入できるのか、正直言うと、現時点での見通しは難しいといえます。不確実性が大きいために、あまり過大に評価するのはエネルギー政策上、非常に危険ではないかと考えます。以上です。

 

神津 ありがとうございました。再生可能エネルギーの潜在的な可能性は高いけれども、実際にどこまで頼っていいかというと、経済的あるいは時間軸なども含めていろいろな問題を抱えているということですね。

 

内山 そういうことです。おそらく日本だけでなく、どの国や地域でも同じような課題を抱えていると思います。そういう点でも政策支援や経済支援などが不可欠になると思います。

座談会の様子

 

神津 エネルギーの供給構造は、いろいろな国がそれぞれの形態を持っていますね。日本のような島国の場合、国内の発電だけで需要を賄わなければなりませんが、ヨーロッパは地続きでパイプラインも送電線もつながっています。国同士で電力の融通ができるヨーロッパと一島国の日本を比べると、やはり自ずと考え方を変えないといけないでしょうね。

 

内山 その通りですね。系統接続あるいは電力の融通というのは電力供給において極めて重要ですが、日本の国土は細長く、山も多く、しかも需要地が点在しています。そうすると、ヨーロッパ型の系統接続は非常に難しい。そういう点で、新エネルギーの導入についても非常に障害が大きい。その分どうしてもコストがかさむので、いかにコストを負担するかというしくみを考えていく必要があると思います。

 

神津 先ほど高嶋さんのご講演で、自然エネルギー比率の高い国についてお話がありましたが、アイスランドもその一つだと思います。

 アイスランドも日本と同じように火山国で、温泉も出る地域なので、地熱と風力、水力で電力を賄っているということですが、火山国だけに住めるところが限られています。日本のように山の中の一軒家に送電線が延びることなどほとんどなく、固まったところにしか集落がありません。人口も約32万人で、製造業などものづくりで生きてきた国ではなく、金融国ですからエネルギー消費がより少ない。経済形態や地政などによってもエネルギー事情はずいぶん違うという印象があります。

 高嶋さん、何かそういう点でご意見はございますか。

 

高嶋 高嶋 哲夫 氏風力にしても太陽光にしても、再生可能エネルギーには「地産地消」という考え方がベターだと思います。 やはりエネルギー密度が低いと思うからです。小型のものを多く作って、作った電気も遠くに送るよりは身近で使った方がいい。メガソーラーやウインドファームは日本では非常に限られた場所でしか運用できません。また、再生可能エネルギーの割合が大きい国というのは、やはり小さな国が多いですね。工業のあまり発達していない国、大きな電力消費のない、つまり農業主体の国です。量そのものをあまり使っていない国が多いというのが現実です。

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