北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

’13新春フォーラム「再生可能エネルギー」の可能性と課題
【第二部】
座談会「再生可能エネルギーの可能性と課題を探る」

(9-6)

再生可能エネルギーをどう生かすか

内山

需要の変化に対応した電源の組み合わせ(ベストミックス)

 我々は必要なときに必要な電気を供給することが求められています。ですから、設備の価値が大事です。それは燃料など貯蔵できるエネルギーを使わなければ、その価値が生まれません。必要なときに必要な電気を作るには、燃料をその分増やして焚けば供給できるわけですから。

 そうした点で、太陽光や風力で電源は賄いきれないということ。その分、火力発電所を建設し維持しなければ、電力供給にはなりません。太陽光や風力はほとんどkWhの価値しかないといえます。それだけエネルギー変換から見たエネルギーの価値は低い。そうは言っても環境面などで長所があるので、それを皆さんが理解し、費用を負担しようじゃないかという考え方を、日本でも世界でも普及していくことが大事だと思います。

まとめ

 まとめですが、再生可能エネルギーの利用可能な資源ポテンシャルを正しく評価するということ。また、供給力は火力発電、原子力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電、あるいは電力貯蔵技術で確保されるものであります。さて、日本経済の活性化はどうなるのか。安価な電力コストでエネルギー・原材料費を低減し、付加価値製品を開発していく。これが基本的な日本の技術戦略、産業政策でした。ここへ来て、高い電力コストで再生可能エネルギー産業を活性化する。高い付加価値製品にコストを負担させて国際競争で勝てるのか。

 皆さん、考えてみてください。「アベノミクス」といわれていますが、どういう形で日本の経済再生は成り立つのか。グリーンエコノミクスは、本当に可能なのかどうか。これは今後の大きな課題ではないかと思っています。

 

神津 ありがとうございました。こういうことを冷静に考えると「期待もしたいが難しい」と迷路に入り込みそうになります。

神津 カンナ 氏 先ほど電力供給の図で、設備容量と供給力と最大負荷、その間に予備力というのがありましたね。北海道では予備力が少なくなってきたときに、例えば火力一つが故障したりすると、かなり危険水域に達する状況が何回もあったと聞いています。安定供給というのは、予備力にどの程度の弾力性があるかということにも関わってきますね。

 高嶋さんの著作を拝見すると、原子力や風力を含めさまざまなエネルギーについて、いずれも光と影のような両方の側面が書かれているように思います。こうしたことを、どのようにとらえていらっしゃいますか。

 

高嶋 内山先生がおっしゃった通り、僕が“光”の部分と考えているのは、CO2を出さないということと、稼働に燃料がいらないということです。太陽と風、火山の熱や潮の力など化石燃料を燃やす必要がなく、埋蔵量を気にしないで使える資源であるという点では“光”だと思います。それに対して“影”というのは、やはりエネルギー密度が低いということです。それに昼と夜、晴れの日と曇りの日、風のある日とない日などで違いが出てきます。安定電源としては難しい。そうなると蓄電池が必要になります。

 今後おそらく10年ぐらいの間に電気自動車がかなり普及するはずです。それを蓄電池に使うことも考えられています。そういうものを組み合わせたシステムが一般的になれば、再生可能エネルギーはある程度広がっていくのではないかと。ただ、それだけでは絶対量は全く足りないだろうと思いますね。

 

再生可能エネルギーの普及拡大に向けて

神津 では内山先生、最後に、再生可能エネルギーの利用を今後増やしていくには何が必要なのかという点について、ご説明いただけますか。

 

内山 では、またスライドで説明をさせていただきます。私も30年以上にわたって新エネルギーの研究をやってきただけに、やはりいろいろな形で普及させたいと思っています。そこで、今後の方向性を整理してみました。

普及拡大に向けた今後の方向性

 市場をいかに自立化できるか。それには、技術立国である日本は、コスト低減に向けた技術開発をさらに努力していく必要があるだろうと思います。しかし、資金をどう調達するかというのが非常に大きいものですから、その多様化を図ることが必要です。今回はエコファンドや買取価格制度ができましたが、しばらくはそういう資金援助制度を併用して普及していく必要があります。

 また、どこまで国民に理解してもらうかも大事です。企業の負担がかなり大きいので、それを電気代にどんどん加算されると生活者も大きな負担になり、それだけ産業界も製造原価として上乗せせざるを得なくなる。そういうところを見極めながら、資金調達の多様化の必要があると思います。

 また、立地制約となっている規制緩和についてですが、太陽光や風力などの新エネを導入すると、省庁の縦割り規制があまりにも強い。これを改善しないとダメですね。できるだけ省庁が協力し合って普及環境を整える必要があると思います。

内山 洋司 氏 それから技術革新についてはまだまだ進歩が期待できるので、高性能技術の開発をしてもらう必要があるだろうと思います。もう一つは、高付加価値製品との一体開発として、電気自動車あるいは家庭のさまざまな電力メーターを含め、複合的な形で普及していく流れがあります。その一つがスマートグリッドで、そうした新しい産業として成長させていく必要があると思います。

 また、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは環境価値が高いわけですが、これが今は外部コストとして扱われています。それを内部化し、価値を経済的に評価するというしくみづくりも必要だと思います。実際、導入にあたっては、自治体やNPOの役割、これが分散型ローカルエネルギーには欠かせないので、そうした方たちの協力を積極的に求めていく必要があると思います。

 さらに、日本はこういう技術を作り上げて、世界市場に打って出なければならないと思います。再生可能エネルギーのポテンシャルというのは、日本よりも世界のほうが圧倒的に上です。いろいろな地域性を考えると、そういうところで日本の技術が成長していける環境づくりが必要かと思います。

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