北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

’13新春フォーラム「再生可能エネルギー」の可能性と課題
【第二部】
座談会「再生可能エネルギーの可能性と課題を探る」

(9-9)

質疑応答

質問者A 再生可能エネルギーを42円/kWhで買うというのは、消費者にとっては高いと思います。消費者が負担した高い金を全部中国や韓国に儲けられていると聞きますが、これは一体どういうことでしょうか。

 もう一つ、福島第一原発がああいう事故になったから、日本の原子力が全部ダメだということになっているのは問題だと思います。世界の技術者19人が女川原発を調べて「こんな立派で安全な原子力発電所はない」と言ったそうですが、そういうことを全然書かない新聞がありました。おかしいと思いませんか。私は、原子力の再稼働を早くするべきだと思いますが、ご意見をお聞かせください。

 

内山 再エネ特措法は、脱原子力の流れから法制化されたもので、同じようなことはドイツ、スペインなどでも既にやっていて、すべて失敗しています。実は私も批判的な立場でしたが、政治で決められたことなので、とりあえずやるしかないと思いました。ただ、この法律をよく見ていただくと、毎年見直すことになっています。ですから、うまくいかなくなったら改正する方向になります。

座談会の様子 ご指摘のように、目的は国内自給率を高めると同時に、産業育成という大きな目標を掲げています。確かに高い金を払えばある程度導入されるわけですから、自給率はわずかながら高まるでしょう。しかし、現実にかなりの量は台湾や中国などの安い技術が入ってきてしまっています。そうなると、本来の産業育成になっておらず、結果的には持ち出しで中国や台湾の企業を育成しているところはあります。

 これはドイツ、スペインもまったく同じ経験をしました。円安傾向になってきているので、日本がもっと「中国や台湾に負けてたまるか」となれば、また違うでしょう。法律は1年間動きますので、その中で様子を見て判断していくことになると思います。そういう点で、日本の底力を試す機会になっていると思います。

 また、今日は再生可能エネルギーの話だったので原子力に触れませんでしたが、それを言い出すといくらでも話したくなります。ご指摘の点は私もその通りだと思います。

 日本の原子力は世界一の技術を持っています。いろいろな面で対策は施していましたが、不幸なことに津波により全電源喪失という事故の事態に陥ってしまいました。ただ、今の流れとしては、津波ではなく地震問題になっていますね。あれだけの大規模地震があっても女川などは大丈夫でした。ですから、稼働しながらだって対策はできるのではないかと思います。

 マスコミも多くの国民が、まだ反原発ムードです。だから、そういうことを言うことが何か悪者のような雰囲気があり、専門家も心の中では言いたくても、はっきり言えないというような状況が日本に作られてしまってると思います。

 私も技術者の一人ですから、世界に冠たる安全な技術をこれを機にもう一度根底から考えて、世界に自慢できる技術開発をしていけばいいのではないかと思っています。そのためには、地道な努力を続けるしかないだろうと考えています。

 

質問者B 新エネルギーは分散型だからイコール防災型だと言われましたが、疑問があります。というのは、発電機には同期発電機と誘導発電機があります。電力会社の発電機はみんな同期発電機ですから、仮に送電線が切れたとしても、それを近くの農家へ一軒でも二軒でも送ることができる。

 ところが風力発電は、全部誘導発電機だと思います。誘導発電機だと、元になる電力会社の送電線が切れたら、いくら風が吹いていても鉄塔の足元の農家一軒にも供給できないのじゃないかと思います。もしも防災上、風車が役立ったという実例があれば教えていただきたいのです。

座談会の様子

 
 

内山 防災というのは風車に限定したことではなく、再生可能エネルギー全般のことを言っています。例えばバイオマス発電は同期発電機ですので、そういう点では防災になるわけですし、最近では燃料電池などの技術や、家庭用の屋根設置の太陽光発電もあるわけですから、そういった点で防災には役立ちます。風力に関してはご指摘の通りで、防災にも何もなりません。

 地域のエネルギー計画を考えると、新しい視点から防災を見直すということも、社会の発展のために必要な流れなのではないかと考えています。それがスマートシティなどの考え方にもつながってくると思います。例えば電気自動車などさまざまなものを組み合わせて、新たな技術革新ができることを期待しています。

 

質問者C 再生可能エネルギーがベース電源になっている国はあるのでしょうか。

 もう一つはガスの問題です。ガスの需給方式で価格を決定しているロシアやアメリカ、イギリスなどに比べ、石油リンク式である日本は、それらの国々と比べると高い価格でガスを買っていることになります。これは外交上の交渉力の低下なのかについて伺いたいと思います。

 

内山 まず、カナダとブラジルは水力でベース電源を賄っています。ブラジルは、バイオマスもベース電源です。当然のことですが、太陽光や風力はベース電源にはなりません。そこで「変動ベース電源」と呼んでいます。供給力はどの国もあまり大きく考えていないということです。ヨーロッパの条件が良いのは、陸続きで他国から調達して電気を確保できるという点です。日本のように一国ですべて賄う国は非常に難しいことで、ベース電源の考え方はヨーロッパと日本では変わってくると思います。

 2番目の「アジアプレミアム」についてですが、非常に燃料コストが高いのは何年も前から問題になっています。政府もいろいろ交渉はしていますが、売り手との約束事なので、変えるためには交渉努力が必要です。そこにきて、原子力発電の代替として天然ガス消費が増大し、足元を見られています。「買わなくたっていいんだよ」と言われても、他に供給先がなければ高い値段で買わざるを得ず、ご存じのように、3〜4倍のガス価格で日本は買わされています。

座談会の様子 そのように、燃料費として海外に輸出してしまっている現状ですが、これも原子力が停止している以上はやむを得ないことです。

 カタールとの交渉でも簡単に価格を下げてくれません。そこで日本は「アメリカのシェールガスを供給する」「サハリンからの天然ガスを供給する」など、さまざまなオプションを提示すると、バーゲインニングパワーになって相手との交渉力になり、コストを下げることになります。しかし、政府の問題も絡むので時間がかかります。

 一番早いのは原子力発電所の再稼働をできるだけ早く実行することです。しかし、現状では再稼働の難しさがあり、日本はしばらくこういう形で経済的な痛みを続けていくしかないのだろうと思います。

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