北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

’13新春フォーラム「再生可能エネルギー」の可能性と課題
【第二部】
座談会「再生可能エネルギーの可能性と課題を探る」

(9-5)

熱は社会を支える大きなエネルギー

内山

【問題】容器に入った質量m[kg]の水を5度だけ上昇させるために必要な熱と等価な仕事を、水の容器を持ち上げたときの高さで計算せよ。ただし、容器の熱容量と重量、水を運動させるときの抵抗は無視する。重力加速度は9.81[m/s2]とする。

 ここで問題を出します。やかんの中に水が入っています。質量mの水をガスで5℃だけ温度を上げます。それに必要な熱と等価な仕事を、容器の重さは無視して、水を何メートル持ち上げないと等価にならないかを計算してもらいたいんですが。ただし容器の熱容量と重量、水を運動させるときの抵抗は無視し、重力加速度は9.81m/s2とします。

 答えは100m、1000m、2000mの三択。水を5℃上げるのに必要なエネルギーを位置エネルギーに換算すると何メートルかという出題です。100mだと思う人は?いないですね。1000mだと思う人は?では2000mだと思う人は?それ以外の方はわからないということですね(笑)。計算すると、2134mです。要は、熱というのはものすごいエネルギーだということを言いたかったわけです。

風力、水力、水蒸気の出力密度

 風の力、水の力に比べ、熱の力というのは、とてつもないエネルギーです。世の中に熱機関が普及している理由はここにあるわけです。今の発電技術は運動エネルギーを使って発電しています。風の力、水の力、水蒸気の力。これらはすべて運動エネルギーです。

 これを単位面積あたりの出力に換算するとどのくらいになるか。例えば、風の力が毎秒20m。これを出力密度にすると、単位面積あたり5.16kWになります。水の力というのは100mの落差を運動エネルギーに変え、単位面積あたりの出力にすると43,500kWです。風よりも水のほうが圧倒的にパワーがあります。だから津波が怖いんです。あっという間にあらゆるものを破壊してしまう。水の脅威というのはすごいものがあります。

座談会の様子

 でも、それ以上に怖いのは水蒸気です。火力発電所に注いでいる水蒸気の速度で計算すると、なんと単位面積あたり2,370,000kWです。この図で比較すると風力の46万倍のパワーを持っていることになります。だから、火力発電所や原子力発電所のように小さな発電所で、巨大な出力を供給できるシステムが必要になります。そういうところでパワーを作り出し、送電線で皆さんの家庭や工場に配られるというのが世界的な電力ネットワークです。

 これを太陽光でやろうとすると、単位面積あたり0.947kWです。風の力の0.18倍しかありません。いかに大きな面積がいるか、いかに多くの設備がいるかということです。これはエネルギー工学の基礎なので、ここを理解しないとエネルギー問題は語れません。

 こうしたことから、今の社会がなぜ産業革命以降、熱機関で成り立っているかを考えてもらいたいと思います。自動車に代表されるように、動力機械のほとんどが熱機関ですね。家庭の暖房もそうです。ロードヒーティングも熱でしょう。熱というのはすごいエネルギーだからです。

 

再生可能エネルギーはコストが課題

内山

再生可能エネルギーの電力効率

 再生可能エネルギーの電力効率を比較すると、一番すごいのは水力発電で、90%以上の効率があります。火力発電所が43〜55%ですから、水力発電は圧倒的に効率の良い技術です。原子力発電は33%、バイオマス発電はガス化すると35%ぐらい。風力は30%です。太陽熱が25%程度、太陽光が15%程度ですね。波力だと4%、海洋温度差は3%程度の効率です。

 つまり何を言いたいかというと、希薄なエネルギーというのは変換効率がものすごく悪いということです。だから、設備だけ大きくなってお金がかかるんです。そういう技術を導入するのであれば、費用負担を皆で考えないといけない。そういうことをぜひ理解していただきたいと思います。

発電プラントの建設単価

 発電プラントの建設単価がどうなっているかについてですが、kW当たりでは原子力は25万円、石油火力が18万円、LNG複合が15.5万円、石炭火力が26万円、水力が55万円、太陽光が60万円、風力が30万円。いろいろな努力で格差を縮めていますが、ここで大事なこととして、建設はkW単価ですね。

電力量当たりの建設費(=kWh当たりの資本費)は設備利用率に影響される

 ところが、発電してkWhにしたとき、この費用がどのくらいになるかを計算してみます。このときは設備利用率が重要です。

 原子力や火力は75〜80%で1年間稼働しますね。ところが太陽光は天気任せなので、せいぜい15%。風力もせいぜい20%程度。風任せで燃料ではないですから。

 同じ電力を作るのに必要な設備単価はいくらかというと、下の表ですが、原子力が25万円、水力は80万円、太陽光は320万円。風力は120万円になってしまいます。この分を燃料費でカバーします。もちろん原子力は燃料費がありますから、核燃料サイクルコストなどを企業でカバーしなければなりません。補って、採算が合うようにしなければならないということ。

 火力は設備単価が安く、石油火力が19万円、LNG複合が17万円。石炭火力はちょっと高く28万円です。これは燃料費が別途あるので、それで他の技術と折り合いがつくようにしていかなければなりません。

 ところがどう見ても、今の状況では水力も太陽光も風力も高い。化石燃料が安すぎるのか、原子力の燃料費が安すぎるのかという問題もありますが、現状はそういうことです。

主要電源の発電コスト:2030年モデルプラント

 これは、去年のコスト等検証委員会から出された主要電源の発電コストです。その結果を見ても、今回の事故の費用を外部コストに入れても、原子力が火力並み。それに対して再生可能エネルギーはかなり高いコストになってしまいます。どこでもこういうコストでできるというのではなく、一つの参考例として提示されたものです。

供給に変動がある

 供給に変動があるという点では、言うまでもなく夜には太陽は照らず、晴れの日はいいですが、曇りの日や雨の日はほとんど出力がありません。風力は風が吹かなければ出力がなく、常に変動があります。安定供給するためには、供給力としての能力がないので蓄電処理をしなければいけない。

 蓄電池は各設備と同じコストが新たに必要なので、さらに安定供給のためのコストは高くなります。これもなんとか工夫して高い費用で電気自動車を併用し、スマートグリッド、スマートシティなどが盛んに研究されているので、付加価値の高いものと組み合わせて導入を工夫していくことが必要です。

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