北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える
【第一部】 世界情勢からみた日本のエネルギー問題

(7-5)

日本の国家戦略と反対運動

宮崎 ありがとうございました。基礎になるお話をいただきました。お話の中で気になったのは、新興工業諸国がものすごくエネルギーを使うようになったという点です。地球全体でどうしていくべきかという考え方が必要になっています。さらに、今後は産油国ですら新しいエネルギーを模索しているという中で、原子力などのプラントについて国際的な売り込み合戦があるわけですね。わが国は科学技術について最高水準を誇っていながら、国際競争では負けているわけです。それには外交との兼ね合いもあって、国家としての戦略が密接に関わってくると思います。橋本さんからお話をいただけますか。

 

橋本  優れた技術力は大きな戦略のもとに位置づけられなければ、十分に生かされません。最近のレアアースの問題もそうですが、中国からの輸出がストップされると日本はお手上げです。なぜもっと早くから考えていなかったのか。もはや一企業の問題ではなく、国家の戦略としてどうするかということです。その点で韓国は、ハブ空港などを国家の大きな戦略として進めている。

パネリスト 橋本 五郎 氏  エネルギーは日本にとって死活問題です。そのことが国家の行く末を左右するという認識が、政治の世界にあるかどうか。どういう考えで進めるべきかという総合的な戦略を持っているかどうか。北海道洞爺湖サミットのころは認識があったけれども、それが終わると、もう忘れてしまっている。何か起きれば「大変だ」という話になる。この繰り返しです。国としての戦略が見えないところに大きな問題があると思います。

 

宮崎 この点について、小沢さんはどうお考えになりますか。

 

小沢 私が原子力の問題に関わり始めたのは政権交代のはるか前、自民党政権のころですが、政治家からエネルギー戦略について話を聞いたことは一度もありません。

 当時何が話されていたかというと、原子力発電所の立地地域に何を建てるかについてです。学校や温泉施設を作るとか、そういう話ばかりで、それに反対する人がいると「反対運動をどう封じ込めるか」という話になる。原子力エネルギー政策について国会でまともな討論が行われたのは、私が知る限りでは皆無です。政治家に来てもらって円卓会議で話を聞いたこともありますが、学者の先生たちや賛成・反対の人、設計をした人や東海村の村長さんもいるような中で、エネルギーについてどういう議論をしていいかわからないという状態でした。

 日本の原子力発電の歩みを振り返れば、もともと原子力を戦略的に活用したいという人はいました。そこで福井県が最初に手を挙げ、若狭湾で始めたわけです。

 当時の知事さんや村長さんは、県内移動にも苦労しがちな交通の不便を改善し、将来に向けインフラを整えようと考えた。雇用機会を作ることも必要だった。「それには原子力しかない」と懸命に原子力発電所を誘致したわけです。ところが地元で反対運動が起きた。「なぜ東京で作らずに過疎のところに作るんだ」と。さらに村の人たちも「我々には危ないものを押しつけられた」という印象を持ってしまった。

 つまり、一部の人たちには戦略があったけれども、国家がエネルギー問題という大きなテーマで戦略を持っていたわけではなく、「村おこし」のような短絡的な発想しかなかった。原子力はそういう不幸な生まれ方をしてしまったわけです。

パネリスト 小沢 遼子 氏  また、原子力には反対運動が多くありますね。日本は被爆国であるにもかかわらず、前政権は長い間、他国に対して「二度と原子力を兵器に使うな」というリーダーシップを執ってこなかった。アメリカに対しても「他のことでは仲良くできるが、原爆を落としたことだけは認められない。しっかりと責任を持ってほしい」と一度でも政府が言ってきたかどうか。しかし、それとは別に「原子力はエネルギーとして必要だ」と考えればよかったんですが、被害者としての意識を一方で育てつつ、他方ではアメリカにきちんとものを言えずにいます。

 沖縄の基地問題でもわかるように、日本国の依って立つところはどこか、日本が言っていいこと、遠慮したほうがいいことは何かを明確にしていませんね。アメリカや中国に対する姿勢を国民の目に明らかにしないままに、面倒なことは全部後回しにしていて、この国は政策を考えるという訓練をしてこなかった。政治家もしなかった。だから反対運動を怖がるし、逃げるんです。

 原子力発電所が必要だから作りたいと思っても、言い出すと反対運動が起きるから怖がってやってこなかった。そういうことが、いまも影響していると思います。民主党だって、野党時代は違うテーマで自民党と闘ってきたわけだから、エネルギー問題を真剣に討論したことはないでしょう。政権交代したからといって、「原子力でこうやります」という戦略を急に求めても無理なんです。

 また、先ほど韓国の話が出ましたが、私は韓国ドラマが好きでかなり観ています(笑)。現地へ行って片言ながら運転手さんと話すと「もう日本には負けない」と彼らは言います。というのは、韓国は中国や日本に占領された歴史があるために、自分たちの国を一流の国だと思えなかった。だから一生懸命です。近隣諸国への意識から「国ととして強くならなきゃいけない」という思いがあるんです。

 日本はどうでしょう。占領されたも同然の歴史を持っていながら、日本の置かれている立場を冷静に考えて「ここだけは譲れない」「これはわが国だ」という風にやってくる歴史を持たなかったせいだと思います。

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