北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える
【第一部】 世界情勢からみた日本のエネルギー問題

(7-4)

今後求められるエネルギーとは何か

 

電源別の二酸化炭素(CO2)排出量

 

奈良林 この図は、発電をしたときにどれくらい二酸化炭素を出すかを示しています。

 石炭、石油、LNG(液化天然ガス)、コンバインド(ジェットエンジンに使われているようなガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた)発電は二酸化炭素を出します。ただ、効率良く発電すれば二酸化炭素排出量は減ります。そこでいま盛んに研究されているのが、石炭をガス化してガスタービンと蒸気タービンを回す発電方式。石炭でもコンバインドと組み合わせた発電ができるよう、日本で研究が進められています。

これからのエネルギーの本命は?

 また、太陽光、風力、原子力、地熱、水力は、発電時には二酸化炭素を出さない発電方式です。先進国として日本が今後普及させなければならないのは、こういうエネルギーです。このように二酸化炭素を出さない社会のことを「ゼロ・エミッション社会」といいます。

太陽光と風力発電

 ただ、太陽光や風力は難しい面があります。例えば100万kW級の原子力発電所を1基作ると、約3000億円かかるといわれます。泊3号機は91.2万kWですから、100万kWに近いですね。これを1基作るのと同じだけの電力を太陽光でまかなうとしたら、どのくらいの面積が必要だと思いますか。洞爺湖の面積の0.8個分です。それだけ広い場所に太陽光パネルを敷き詰めなくてはならない。予算は3000億円どころか、その13倍の約4兆円かかります。

 いま民主党では、子ども手当2兆円の財源を捻出するために努力していますが、原子力発電所1基分と同じ電力を太陽光で作ろうとすると、4兆円もかかってしまう。これから日本では原子力発電所を9〜13基作ろうとしていますが、これを太陽光でまかなうと国家予算を上回ってしまいます。ですから、国が経営破綻しないよう、経済のことも考えながら太陽光を普及させなければなりません。

 また、風力発電所を作るときには、何十メートルも間隔を空けて建てなければなりません。原子力発電所1基分の電力を風力でまかなうとすれば、洞爺湖の3.5倍の面積が必要です。日本は土地が狭いうえに、風が強くて風力発電所を建てられるような土地は少ないですね。広大な土地を確保し、全部電線でつないで電気を送れるようにしなければならない。それには大変なコストと労力が必要になります。

 太陽光や風力は自然エネルギーとして注目されていますが、これらを普及させるには地道に長く取り組んでいく必要があります。そうしているうちに化石燃料がなくなってしまうかもしれない。ですから、どうやって生き延びていくかを真剣に考えなくてはならないと思います。

 今年6月、サウジアラビア王立大学の先生2人が北海道大学にお見えになり、「原子力教育を行うために、北大にぜひ協力してほしい」と依頼がありました。「サウジアラビアはもう石油が出にくい状況なので、いまから原子力発電所の建設をしなければならない」と言うんです。そこから約1カ月で協定を結びました。私もこれからサウジアラビアに行く機会が増えると思います。どんどん石油がなくなっているということは産油国がいちばん知っているわけです。

風力発電

 もう一つ、自然エネルギーの難点は、発電しないときがあるということです。雨の日、曇りの日、風のない日、蒸し暑い日。こういうときにどうやってエネルギーを得るか。天候によらず、きちんとエネルギーが確保できるようにするには、太陽光や風力だけではどうしようもないわけです。自然エネルギーとともに、今後も原子力をしっかり取り組んでいくことが大事だと思います。

エネルギー自給率我が国の現状

 他の先進国に比べ、日本はエネルギー自給率が圧倒的に低い国です。食料自給率は約40%ですが、日本の自前のエネルギーはたった約4%。これに原子力を加えると19%になります。実は、日本が輸入している石油の30%を供給しているのがサウジアラビアです。サウジアラビアから今後石油が来なくなったとき、日本はどうやって生きていくかについて真剣に考えなければならない時代に入っています。

家庭からのCO2排出低減は可能か

 今年の猛暑で冷房が大活躍し、そのことで二酸化炭素排出量が増えました。皆さんの家庭からも二酸化炭素を削減することが必要です。家庭のエネルギー消費量では、冷暖房などが半分以上を占めています。図を見ると、二酸化炭素排出量はここ20年くらいで約40%増えています。

 マイカーは今後少しずつ電気自動車に置き換わり、冷暖房も電気を使い、給湯も二酸化炭素を出さない方法が主流になっていくでしょう。家庭でもこういう努力が必要だと思います。ここに「低炭素社会に向けた12の方策」とありますが、ゼロ・エミッションに向けては、原子力はもちろん、交通システムなども含めて考えていかなければならないと思います。

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