北海道エナジートーク21 講演録

 
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北海道エネルギー環境教育研究委員会

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える
【第一部】 世界情勢からみた日本のエネルギー問題

(7-1)

'10「原子力の日記念フォーラム」これからの原子力を考える 【第一部】世界情勢からみた日本のエネルギー問題
 

コーディネーター  
  千葉商科大学 政策情報学部長、教授 宮崎 緑 (みやざき みどり) 氏
     
パネリスト  
  評論家 小沢 遼子 (おざわ りょうこ) 氏
  読売新聞 特別編集委員 橋本 五郎 (はしもと ごろう) 氏
  北海道大学大学院 工学研究院教授 奈良林 直 (ならばやし ただし) 氏
     

エネルギー問題と政治的リーダーシップ

宮崎 皆さん、こんにちは。私はいま奄美で美術館の館長を務めており、平日は千葉の大学で仕事をして、週末は奄美に行くという生活をしています。報道でご承知の通り、奄美が先日から大変な豪雨災害に見舞われています。

コーディネーター 宮崎 緑 氏  私は降り始めのときからいましたが、先日の雨はすごいものでした。普通は空から水滴が降ってくるイメージですが、それよりもっと激しく、滝壺で打たれているような降り方でした。地球が怒りを爆発させたように思いました。亜熱帯ですから、ザーッと降ってすぐ止むようなゲリラ豪雨には慣れていますが、それとも違って、とにかく止まない。あんなすごい雨を経験したことはありません。

 今年の夏は暑く、北海道も猛暑でしたね。もしかすると地球は人類に猛省を促しているのではないかとも思います。そうした中で、私たちはこれからどんな姿勢で未来と向き合っていくかを考えるとき、少なくとも政治的リーダーシップがこの国できちんと機能しているだろうかと案じることもあります。

 例えば、尖閣諸島の問題をどう思いますか。あの地域は1895年1月に日本の領土であると宣言して、周辺諸国も合意していた。1920年には、尖閣諸島で中国の漁船が遭難したのを住民が助け、当時の中国から日本に対してわざわざ感謝状が贈られたくらいでした。中国が領有権を主張し始めたのは1970年代に海底油田があるとわかってからです。油田があれば天然ガスもありますから、あの一帯が地下資源の宝庫だとわかったときから、領有権争いが持ち上がったわけです。つまり、エネルギーが国際社会を揺り動かしている。エネルギー問題というのは高度な政治性を含んでいることがわかります。

 また、今年12月にメキシコで行われるCOP16(気候変動枠組条約第16回締約国会議)の行方も気になります。現在は、ポスト京都議定書の枠組みがまだ作れずにいます。一方で、新興工業諸国が台頭し、中国の石油輸入量が日本を上回るなど、世界は激動しています。こうした状況下で母なる地球が沈没してしまったら元も子もないわけで、私たちはどう生きるべきかがいま問われているのではないかと思います。

 エネルギーを取り巻く昨今の動きについて、橋本さんはどうご覧になりますか。

 

橋本  いま最も求められているのは、政治がどのようにリーダーシップを発揮するかだと思います。

パネリスト 橋本 五郎 氏  先日の小惑星探査機「はやぶさ」のニュースは私たちに大きな勇気を与えてくれましたね。3億kmも離れたところに行って7カ月間くらい行方不明になり、それを探し出した。隣の家のおじいさんがどこにいるかもわからないこの時代にあって(笑)、私たちに大きな感動を与えてくれました。

 そこで、「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー川口淳一郎さんにお話を聞きました。専門家集団をどうまとめたのかと聞いたら、ポイントとして3つ挙げていました。

 1つは目標・目的が明確であること。太陽系の小惑星「イトカワ」に行って星のかけらを持ってくるという目的は一貫していました。2つめは、リーダーがぶれないこと。どんな困難に遭っても揺るがないこと。3つめは、若い人たちのさまざまなの意見を取り入れ、採用すること。

 これらを日本の政治に当てはめるとどうでしょう。地球温暖化問題では、二酸化炭素排出量を25%減らそうという目標ですが、「とてもそんなことはできない」という声をよく聞きます。確かに目標値の是非論はありますが、北海道洞爺湖サミット開催時にあったあの盛り上がりが失せていることのほうが気になります。

 政権交代後、政府は25%という削減目標を打ち出した。その後内閣が替わった。菅首相は先日の所信表明演説でこう言っています。「気候変動問題については、COP16に向けてすべての主要国による公平かつ実効的な国際的枠組みを構築するべく、米国・EU・国連などとも連携しながら国際行使を主導します」。

 つまり、アメリカ・ヨーロッパ・中国は対立して三すくみになっていますが、その中で日本は他国をリードしながら決めていくと宣言したわけです。しかし、具体的に何をやっているかが聞こえてきません。聞こえてくるのは政治とカネの問題ばかりです。これから地球をどうするかという問題は一体どこへ行ったのでしょう。25%削減目標も、打ち上げたはいいが、はしごを外された格好で後が続かず、宙に浮いている感じです。いま大切なことは、直面する問題を解決すること。ずっと先をにらみながらも、自分たちが何をするべきかを政治の責任において明確にすることです。

 2年前の北海道洞爺湖サミットでは、あれだけ盛り上がりましたね。「水道の蛇口をちゃんと閉めましょう」などを日常的に呼びかけていた。でも、いつの間にかどこかへ行ってしまった。それは国民の問題でもありますが、いまこそそういう意味で、地球温暖化問題に対する揺るがない政治の意志を示さなくてはいけないと思います。

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