北海道エナジートーク21 講演録
 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '10新春エネルギー講演会 
(8-7)
    「原子力を巡る最近の諸情勢〜泊3号機完成を振り返って〜」  

核不拡散条約とインドの事情

 

 世界と伍して原子力ルネッサンスの恩恵を受けようとするなら、日本は稼動率を良くしないと勝ち目はありませんが、大きな商談ですから国の協力もまた必要です。フランスはサルコジ大統領が、アメリカはクリントンさんがUEAに行かれたと聞きますが、日本からは誰も行っていません。

 先日、鳩山首相がインドへ行かれましたが、インドの宿願である原子力協定の締結すら約束されませんでした。これはご承知のように、核不拡散条約(NPT)にインドが入っていないためです。原爆を受けた日本は「そういう国に原子力は売りません」という意思表示をこれまでしてきました。北海道洞爺湖サミットのとき、麻生元首相のところにインドのシン首相がわざわざ来て、「日本の原子炉は品質がいいから何とか購入したい。原子力協定を結んでくれないか」と言ったそうですが、けんもほろろにお断りになったという話をインド人から聞いております。

 日本がインドとの交渉に応じないのは当たり前だと思われるかもしれませんが、例えばアメリカのウェスティングハウスがインドと契約して、東芝に原子炉を発注することは認められているのです。アメリカやフランスが原子力協定を結んでいるので、そういう下請になる抜け道はありますが、これは馬鹿げたことで、商売上のおいしいところを全部、アメリカやフランスに取られていることになります。この点はよく考える必要があります。

 原爆を受けた日本が核不拡散条約を守るのは当然との考えがあります。インドは、日本が原爆を受けた痛みは非常によく理解できると言っています。同時に、300年間イギリスの支配下に置かれて非人間的な扱いを受けたインド人の気持ちも理解してほしいと言います。イギリスの統治下でインドは、不平等な条約を押しつけられ、非常な人間差別を受けていたことは周知の事実です。インド人は「NPT条約は、核を持っている国は核の製造が許され、そうでない国はダメという不平等な条約だから、インドの国民感情として参加は許せない」と言っています。

 国にはそれぞれの事情があります。日本の国民感情が「原爆反対」、インドの国民感情は「不平等条約が嫌だ」というわけです。ところでNPT条約というのは原爆反対の一つの手段ですね。手段は大切ですが、それにあまり拘泥すると変な事になるのは、先ほど"安全"と"品証"で話はしました。このあたりについても、日本はもう少し考えていかないと、世界の原子力ルネッサンスの恩恵を受けられないことになるでしょう。インドと原子力条約を結んだアメリカもフランスもNPT条約とのすり合わせに苦労したようです。日本はダメ一点張りです。このままでいると、先ほどお話した「ガラパゴス症状」だと言われて世界の除け者にされるかもしれません。日本の原子力市場を国内だけで閉鎖して進めていくのなら話は別ですが。

会場の様子

  7/8  
<< 前へ戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) 続きを読む >>