北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '09「原子力の日」記念フォーラム
(7-7)
    低炭素社会とエネルギー問題 〜CO削減目標と核燃料サイクル〜

    【第二部】     新政権における低炭素社会とエネルギー問題への取り組み



原子力政策に必要な国家戦略

宮 崎   橋本さん、いまの秋元さんのお話を受けて、一言お願いします。

 

橋 本   フランスやドイツでプルサーマルの使用実績が高いとのことですが、国民の受け止め方にどうしてこんなに違いがあるのか、そこに関心があります。それについてはいかがですか。

 

秋 元   国民性の違いはあるかもしれませんが、原子力を政争の具に使ったドイツと、国家戦略の基本に据えたフランスとの違いは大きいと思いますね。

 このたびドイツでは総選挙があり、メルケル首相が勝ちました。前回の総選挙では社会民主党が大連立を組んで何とか生き延びたのですが、今度は命運尽きて野に下るわけです。実はドイツで原子力を始めたのは社会民主党です。ところがその後、キリスト教民主党に長い間政権をとられていたので、それを奪還する戦略として、そのころ議席を増やしてきた緑の党と手を組んで原子力反対をふりかざして政権を奪還した。その後旧ソ連でチェルノブイリ事故が起き、社会の原子力に対する恐怖心も高まりましたが、そうした社会不安を政争にフル利用したという経緯があります。

 その点、フランスは中央集権型のしっかりした国家で、発電所の新設はすべて原子力でという政策を何十年もやってきました。高レベル放射性廃棄物や再処理など核燃料サイクルにまつわるいろいろな問題についても、議会が宿題を出し政府機関が、10〜15年計画の研究開発を進めて解決していきます。そのようにドイツとフランスでは、政策の進め方に大きな違いがあります。

 

橋 本   フランスの場合、エネルギーだけでなく金融危機についても、国家単位で戦略を練っていますね。今回の金融危機でもEUの中でフランスが主導的役割を果たし、世界をリードした。

 役人が相当しっかりしていて、誇りも高いからです。フランスの国家としてのあり方を日本も参考にすべきではないかと思います。国家戦略であるエネルギー問題を常に政治や行政のレベルで考えていくという姿勢について、フランスから学ぶことは非常に多いと思います。

 

コーディネーター宮崎緑氏宮 崎   フランスは中央集権で、ドイツは地方分権。メディアのあり方なども、ドイツでは地域ごとに細分化されていますが、フランスは中央集権なので全国版が最も力を持っている。今おっしゃったように、日本の霞が関にあたる中央省庁に最も優秀な人材を集め、そこで国家戦略を立てる。わが国ではいま「脱官僚」「脱霞が関」と言っているので、フランスとは逆行していますね。

 時間が迫ってきましたので、いままでのお話を総括して、今後のあるべき姿についてまとめのお話をいただければと思います。まず橋本さんからお願いします。

 

橋 本   これからの日本には、国としてのあるべき姿を示しつつ、普通の人の素朴な疑問にきちんと答えていく姿勢が必要だと思います。これを私は「鳥の目」「虫の目」と呼んでいます。国民を幸せにするためにはどうしたらいいのかという大きな戦略と、ごく普通の人の感情を大切にする視点。その両方をかみ合わせながら、どううまくやっていくかが大事です。

 原子力の問題はこれまで、その2つをかみ合わせるのが最も難しい分野であったと思います。今回の政権交代をむしろ好機ととらえ、テコに使うことができないだろうかと思います。それほど選択肢がない中で、何を選んだらいいのかを国民に訴えかけていく。そのための良いチャンスとして考えていくべきではないかと思います。

 

秋 元   環境問題について対策を進めていくときに「自然との共存」という考えがよく出てきます。

パラダイム技術の出現なしに文明社会は支えきれない

 自然と共存できた理想的な時代が江戸時代ですが、現在の日本の人口はその4倍に増え、エネルギー消費は数十倍になった。交通でも通信でも、かつての百万倍、十億万倍のポテンシャルをもつパラダイム技術が普及している。この世の中を持続させていくためには、生態系に負担をかけないだけではなく、世の中の進歩に見合うほどに大きなポテンシャルを持つエネルギー技術を選び社会の中できちんと育てていくことが非常に大事だと思います。ポテンシャルが大きいほど、社会はそれに対してアレルギーを感じやすい面がありますが、本当にいいものを受け入れ、新しい社会インフラの中に取り入れていく勇気と知恵を持たなくてはならないと思います。

 

宮 崎   ありがとうございました。先ほど「鳥の目」「虫の目」というお話が出ましたが、さまざまな性質をきちんと分析して発展させていく“科学技術の眼”。社会全体を見つめ、記録し、発信していく“メディアの眼”。こういうものもしっかりと磨いていくことが大事ではないかと思います。地球は次世代に渡していくものではなく、「自分の先の世代から一時お預かりしているものだ」という態度で臨み、それをお返ししていくことが大事なのではないか。そのために低炭素社会を作り、エネルギー問題にどう取り組むかという姿勢を一人ひとりのレベルで考えていく必要があるのではないかと思います。では、ひとまずこのコーナーはここで締めさせていただきます。ありがとうございました。

 

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