北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '09「原子力の日」記念フォーラム
(7-3)
    低炭素社会とエネルギー問題 〜CO削減目標と核燃料サイクル〜

    【第二部】     新政権における低炭素社会とエネルギー問題への取り組み



原子力のイメージはどう作られるか

宮 崎   さて、エネルギーセキュリティーを考えると、どうしても原子力の話になります。核燃料サイクルの話についても避けて通れないわけですが、秋元さん、いかがですか。

 

「原子力の日」記念フォーラムの様子秋 元   いま日本のエネルギー自給率は4%。先進国でこんな国はありません。イタリアも日本よりはましです。ただ、日本では原子力を含めると自給率16%と言っています。「燃料のウランは海外から買ってくるのだから自給率には入らないだろう」と思われるでしょうが、そのために、日本は核燃料サイクルに取り組んでいます。原子炉の中で新しくプルトニウムという国産資源が生まれる。リサイクルを進めこれを燃やすから自給率16%になるんです。

 しかし、16%と言っても世界に比べると非常に低い。ヨーロッパのようにエネルギーネットワークで他国と支え合うしくみもありません。孤立した島国としてエネルギーの安定供給を図ろうとすれば、核燃料サイクルをきちんとやっていくことが重要になります。北海道では新しく泊3号機が完成し、いずれプルトニウムのリサイクルも行うと聞いています。プルトニウムの利用は日本の戦略として是非やっていかなければならないことだと思います。

 

宮 崎   橋本さんはいかがですか。

 

橋 本   僕が普段から思っていることですが、原子力に携わっている専門家の方々と、普通の国民との意識のギャップが非常に大きいと感じます。専門家は原子力技術に自信を持っていて、何か事故が起きたとしても「それは本質的な事故じゃないんだ」と言う。新潟県中越沖地震のときも「柏崎刈羽原子力発電所の本体は大丈夫だったじゃないか」と言う。

 あのとき発電所の周りで起きた火事は、確かに本質的な話じゃない。しかし国民は「あそこの火事もきちんと消せないようじゃ、果たして本体は大丈夫だろうか」と見てしまう。過敏になっている国民と、そうした人々の気持ちに少々鈍感と思われる専門家。そこにあるギャップを埋めるものがない。本来は、それを埋めるのが政治の役割なのだろうと思います。

 

宮 崎   それはマスコミに責任があるのじゃないですか(笑)。

 

橋 本   そう言われると困るんですが、その通りですね(笑)。原子力についてはできるだけ客観的に報道することが大事です。そういう努力はできるだけしているつもりですが、原子力の必要性について具体的に話が進まないのはなぜか。住んでいる人たちの賛成が得られなければいけない以上、そのためにどんな努力をすべきか。また、国民の側も、日本のエネルギーがどうなるかについて関心を持つことが大事だと思います。

 私自身も普段そのように報道しているつもりですが、例えば施設周辺から煙の上がっているシーンがテレビで何度も映されると、僕なども「大変だ」という意識になってしまいます。ですから、原子力の持つ功罪両方の面を、学校教育で取り扱うことも必要になりますね。

 

宮 崎   テレビというメディアの特性を考えると、「いま燃えている」とわかるような映像に意識がどうしても向いてしまう。そうすると「木を見て森を見ず」のように、起きていることの全体像が見えなくなりやすい。このあたりのことが非常に難しいですね。

 こうしたマスメディアとは違い、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のようなメディアだと、細かいところには行き届くかもしれないけれども、正しくない情報が多く飛び交っているかもしれない。どう情報を読んでいくかについて、秋元さんはどのようなご意見をお持ちですか。

 

秋 元   先週NHKの番組で、原子炉の廃炉について取り上げたサイエンス特集がありました。精力的に取材を重ねた調査報道でしたが、テレビは情緒に訴える要素が大きいですね。音楽や映像などの扱いようによって、全く同じ内容でも「怖い」とも「美しい」とも感じさせることが出来る。情緒的手段が乱用されれば、報道番組もたちまちホラー番組に変身してしまう。

 先日の番組では、いかにも重苦しく、まるで地獄を想像させるような音楽をバックに、廃炉の情景が放映されていた。しかも廃炉がうまくいっているアメリカやフランスのケースに全く触れずに、廃炉作業が危険と膨大な廃棄物を生むといった誤った印象をふりまこうしていた。ホラー仕立てにすれば視聴率は上がるかもしれないが、これが公共放送の取るべき姿勢とは思えません。

「原子力の日」記念フォーラムの様子
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