北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '09「原子力の日」記念フォーラム
(7-1)
    低炭素社会とエネルギー問題 〜CO削減目標と核燃料サイクル〜

    【第二部】     新政権における低炭素社会とエネルギー問題への取り組み


新政権における低炭素社会とエネルギー問題への取り組み
 

コーディネーター  
  千葉商科大学 大学院政策情報学研究科 教授 宮崎 緑 (みやざき みどり) 氏
     
パネリスト  
  (財)日本原子力文化振興財団 理事長
三菱マテリアル(株)名誉顧問
秋元 勇巳 (あきもと ゆうみ) 氏
  読売新聞特別編集委員 橋本 五郎 (はしもと ごろう) 氏
     


「グリーン・ニューディール」の背景

宮 崎   第2部では個別の問題に迫っていきたいと思います。第1部では25%削減の問題で盛り上がりましたが、ここで目を世界に転じてみます。

 アメリカのオバマ政権は「グリーン・ニューディール」という政策を打ち出しています。これは環境と経済を両立させる政策で、環境関連の投資分約7870億ドルによって50万人の雇用を生み出すと謳っています。このグリーン・ニューディールについて、橋本さんはどう評価しますか。

 

橋 本   新しい政権ができると、当然のことながら前の政権を否定し、それを乗り越えながら新しい政策を打ち出そうとします。どこの国でも同じだと思います。

パネリスト橋本五郎氏  オバマ政権にとってのこの政策の背景を考えてみましょう。前のブッシュ政権は科学技術に相当お金を使っていました。その技術を、オバマ政権では環境という形で生かそうとしています。これには歴史があり、クリントン政権時代の副大統領だったゴアさんが「不都合な真実」でノーベル賞を受賞したように、環境問題が世界的に脚光を浴びたという背景もあります。もっと大きな歴史認識として、地球はこのままでいいのかという問題もあります。

 いまのオバマ政権では「環境」と「核」の2つが大きな軸になっている。これからアメリカをどうするかを考えたときに、背景には大きな哲学があるのだろうと思います。単に希望を示すだけでなく、希望を実現するために「グリーン」というキーワードを大きな柱に した。核廃絶にしてもそうですが、前政権とは違うことをやろうという発想があるにしても、世界に対する大きな衝撃を与えるものであり、歴史的にも意味があると思います。

 

宮 崎   数字上のつじつま合わせなどテクニックの問題ではなく、哲学のある政策でなければ通用しないということですね。グリーン・ニューディールの実効性についてはどうご覧になりますか。

 

橋 本   非常に難しいところですね。一つは金融危機で経済が大変な状況になっている。こうした経済環境がグリーン・ニューディールにとってプラスになるのか、マイナスになるのか。しかし、政治のなすべきこととして、グリーン・ニューディールという目標を徹底的に追求する姿勢は必要だと思います。具体的にやるのは大変でしょうが、逆に、経済が大変な状況だからこそ突破口を作るためのいろいろな技術革新を、環境を中心にしてやっていく。そういう形でいまの状況を切り抜けようと進めていくべきでしょうね。

 

宮 崎   秋元さんはこの方向性についてどうお考えですか。

 

秋 元   環境対策を既存の施設に施そうとすると、たいていの場合はマイナスに響きます。ですから従来、環境対策はマイナスイメージが強かったわけですが、グリーン・ニューディールでは、環境対策がむしろ経済にとってプラスに働くよう進めるんだという話になっています。デメリットをインセンティブに変えていくという発想自体は大変結構なことだと思います。

 ちなみにカリフォルニア州にバークレー研究所という原子力の基礎研究で世界をリードしてきた研究所があります。私は去年そこに行きましたが、昔は放射線や原子力物理学一辺倒の研究所だったのが、環境を意識した研究所にかなり様変わりしていた。ここの所長が、今度米国エネルギー省の長官に任命された。このような研究活動によって、実体経済に効果を及ぼすような政策が出てくれることを期待してのことだと思いますが、残念なことに、まだあまり具体的なものは出ていません。いまのところは、前政権がやってきた原子力政策を変えるという動きだけが目立ち、新しいものが見えていない感じがします。

 

宮 崎   なるほど。アメリカも新機軸を打ち出す部分と現実とをどう沿わせていくかについて苦労しているのかもしれませんね。

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