秋 元 それはまさに原子力を担当している者が反省しなければいけないところですね。原子力施設は特殊な設備を扱う高度技術の社会ですから、そこで何が起こったかについて、生活レベルの言葉で理解していただけるように説明するのは、なかなか難しいことです。
放射能レベルについても、何万ベクレルという単位を出すと、「それは大変なことなんでしょうか」という反応が返ってくる。例えば、いまこの会場で我々が浴びている放射能レベルとの比較で話をすればわかってもらいやすいのですが、技術屋はもともと口下手な人が多く、なかなかそこまで気が廻らない。
現場を預かる専門家は、なにかトラブルが起きた場合でも、必要な対応措置に気をとられ、施設の外には成り行きを心配する多くの目があることを忘れがちになる。そして周辺の目が厳しくなればなるほど、下手に説明して騒ぎが大きくなってはと報告をかまける悪循環がまわりはじめる。
こうしたことを原子力関係者もかなり反省していて、いまでは情報の透明性がかなり高くなりました。皆さんにわかっていただけるような形で説明し、起こったことについては大小もらさず聞いていただくのが大事だという意識はずいぶん徹底してきたと思います。その点ではここ5年、10年の間にずいぶん変わったと思いますが、一度揺らいでしまった信頼は、すぐにはなかなか戻ってこない。やはり皆さんに信頼していただけるような状況に早く戻していかなければならないと思います。また、こういうことを進めていくために、政治や行政などを含めた周囲の皆さんも、ポピュリズムに流されない、地に足のついた支えをしていただきたいと思います。 |