北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '09「原子力の日」記念フォーラム
(7-4)
    低炭素社会とエネルギー問題 〜CO削減目標と核燃料サイクル〜

    【第二部】     新政権における低炭素社会とエネルギー問題への取り組み



原子力に対する意識の差

秋 元   ここで日本の原子炉の稼動率についてお話しします。原子力発電を地球温暖化防止に役立てる一番の近道は原子炉の稼働率を上げることです。いまやアメリカや韓国、ドイツでさえも、原子炉の稼動率は90%を超えています。それが日本では70%を超えられないのには理由があります。世間が原子力について不安を持っているために、動かして然るべきものを動かせない。そういうことの繰り返しでかっては80%以上になった稼動率が低迷しています。

 

宮 崎   点検などのために原子炉を止めるので稼動率が低いということですか。

 

秋 元   いえ、点検で止めることもありますが、それが直ちに稼動率が低くなることにはつながらない。

 

宮 崎   心理的な要素が働いているということですか。

 

パネリスト秋元勇巳氏秋 元   そうです。日本の場合は一度原子炉が止まると、再び動き出すまでの手続きや判断に時間がかかりすぎます。アメリカの4倍半程度は時間がかかっている。

定期点検以外のことで原子炉を止める必要が出てくることを「計画外停止」と言います。一定震度以上の地震が起こればとめるのがいい例ですが、原子炉の温度が予定よりもちょっと上がったりして、その原因を確認するために一度停止することも起こります。そういう計画外停止が起こる回数は、実は日本は世界でいちばん少ないのです。つまり、日本の原子炉はそれだけ安全に運転されているわけですが、一度原子炉の稼動を止めてしまうとなかなか立ち上がれない。点検を始めるにも、大変な手間手続きがかかるのですが、点検が終り日本の安全当局が「これで安全だから大丈夫」とお墨付きを出していても、「まだ安心できないから動かしてもらっては困る」などいろいろなところからストップがかかって現実には動かせない状況になるのです。こういうことが解決されないと、今後原子力を日本の基幹電源として進めていくことが難しくなってくると思いますね。

 

橋 本   原子力の問題については、やはり「全体から個別に」「個別から全体に」という両方の観点でうまく説明しなければならないと思います。

 資源の少ない日本がこれからどう生き延びていくかを考えると、選択肢はそんなにありませんね。先ほどご説明にあったように、まず風力や太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーを開発する。原子力を利用する。あるいは、節約しながら別の電源を再構築する。さらには省エネを徹底的にやる。そのように、選択肢はあまり多くない。その中で、何にどれくらい重点を置いて進めるのがいちばんいいのかというのが問題です。

 もう一つ、どうしても事故は避けられないものです。もしも起きたときに、それが重大な事故なのかそうでないのかという問題もあります。そういうときに、私はやはり専門家の皆さんの説明能力が欠けていると思います。いままでは、事故が起きると「隠そう」という意識があったのではないと思う。事態が重大だということをあまり見せたくない意識から、情報を表に出さなくなってしまう。しかし、一般の人たちも相当知識が高くなっているわけだから、正直に説明することによって理解を求めればいい。そういう説明を一体誰がするのか。事故が起きたときに、事故そのものより、どう説明するかということがものすごく影響するものだと思います。

 

秋 元  それはまさに原子力を担当している者が反省しなければいけないところですね。原子力施設は特殊な設備を扱う高度技術の社会ですから、そこで何が起こったかについて、生活レベルの言葉で理解していただけるように説明するのは、なかなか難しいことです。

「原子力の日」記念フォーラムの様子  放射能レベルについても、何万ベクレルという単位を出すと、「それは大変なことなんでしょうか」という反応が返ってくる。例えば、いまこの会場で我々が浴びている放射能レベルとの比較で話をすればわかってもらいやすいのですが、技術屋はもともと口下手な人が多く、なかなかそこまで気が廻らない。

 現場を預かる専門家は、なにかトラブルが起きた場合でも、必要な対応措置に気をとられ、施設の外には成り行きを心配する多くの目があることを忘れがちになる。そして周辺の目が厳しくなればなるほど、下手に説明して騒ぎが大きくなってはと報告をかまける悪循環がまわりはじめる。

 こうしたことを原子力関係者もかなり反省していて、いまでは情報の透明性がかなり高くなりました。皆さんにわかっていただけるような形で説明し、起こったことについては大小もらさず聞いていただくのが大事だという意識はずいぶん徹底してきたと思います。その点ではここ5年、10年の間にずいぶん変わったと思いますが、一度揺らいでしまった信頼は、すぐにはなかなか戻ってこない。やはり皆さんに信頼していただけるような状況に早く戻していかなければならないと思います。また、こういうことを進めていくために、政治や行政などを含めた周囲の皆さんも、ポピュリズムに流されない、地に足のついた支えをしていただきたいと思います。

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