北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '09「原子力の日」記念フォーラム
(7-5)
    低炭素社会とエネルギー問題 〜CO削減目標と核燃料サイクル〜

    【第二部】     新政権における低炭素社会とエネルギー問題への取り組み



原子力施設をめぐる住民感情

秋 元   実は最近、非常に力づけられたことがあります。九州電力が川内発電所の第3号原子炉を建設するということで、環境影響評価準備書を国に提出しました。

「平成21年度電力供給計画の概要」における原子力開発計画

 先ほどお話ししたように、日本では建設中の原子炉が3基あり、2018年までにあと6基の建設が予定されています。川内3号機は2020年までの建設を目指し、いま国や電力会社が計画している9基に次ぐ原子炉と位置づけられていました。

 今度九州電力が国に申請を出したところ、小沢環境大臣が「温室効果ガスの排出抑制には原子力発電の最大限の活用が必要である」という意見書を、経済産業省あてにお出しになって建設支援の意思を明確に表明された。所轄大臣として当然の意見を公式に述べられたのだといえばそれまでの話かもしれませんが、いままでは政治レベルで、特に環境行政の側から原子力の推進が公式に公文書の形で示されたことはなかったと思います。新政権でこのような動きが出てきたことを嬉しく感じています。民主党のマニフェストにも、原子力の着実な推進について書かれていますから、国として原子力をきちんとサポートしていくという動きになればすばらしいと思います。

 

宮 崎   その点を橋本さんにうかがいたいのですが、施設建設をめぐる住民感情を表す言葉として「NIMBY」というのがありますね。「Not In My Back Yard」の頭文字で、施設の必要性は理解するけれども「自分の裏庭にはあってほしくない」という心理を表しています。

 また、リスクに関する情報を共有するプロセスを「リスク・コミュニケーション」と言いますが、もしも何か起こった場合に、生命や財産に大きなダメージを与えるかもしれない確率をどう考えるか。ひどいことが起こるかもしれないが、起こる確率が少なければリスクは小さくなる。たいしたことがなくても頻繁に起これば、掛け算をしたときに確率が大きくなってしまう。人間は、自分の手に負えないような科学技術に対して必要以上にリスクを感じやすいところがあります。あるいは「あっちの人は何でもないのに、なぜ私だけがこんな目に遭うの」という不公平感があると、リスクを大きく感じてしまう。

 そのように、原子力発電所の立地地域と、そこから離れた大消費地との間で、心理的なズレがあるかもしれません。このことをどうお考えになりますか。

 

橋 本   それはおそらく永遠の課題でしょうね。パネリスト橋本五郎氏ダムの問題もそうですが、期間の長さをどう考えるか。「100年に1度の災害に備えるために必要だ」とする考え方もあるし、「いや、もっと短い期間で考えればダムはいらない」という考え方も成り立つでしょう。また、住民感情の問題は原子力発電所の立地地域に限らず、米軍基地移設問題をめぐる普天間や名護の場合も同じだと思います。

 私は新聞記者としてずっと政治を担当しているのでつくづく感じますが、こういう場合の政治の役割はとても大きい。「地元に迷惑をかけるかもしれないが、国全体にとっては必要なことだから、ぜひお願いしたい」と、いわば使命感を持って地元の人たちと話をする手段は政治しかないんです。そういう部分にこそ政治が必要だと思いますが、どうも日本の政治家は使命感が欠けている気がします。エネルギー問題を語るときも、政治家は「それによって次の選挙で票に結びつくか」という意識が働いてしまう。その考えを乗り越えてほしい。国の将来に対して責任を持てる政治家ができるだけ多く出てきてほしいと思います。

 

宮 崎   政治家とは次の世代のことを考える人のことで、次の選挙のことを考えるのは“政治屋”と言うのだそうですね(笑)。

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