北海道エナジートーク21 講演録
 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
パネルディスカッション
 地球温暖化とエネルギー問題 〜なぜ今、核燃料サイクルなのか〜

 
(7-6)
    【第二部】 「核燃料サイクルの必要性・安全性」

スイスでは原子力発電の熱利用も

宮 崎    リスク・コミュニケーションという言葉がありますが、リスクに関する情報を利害関係者の間でどう共有するかを考えたときに、いちばん不安になる要素は"わからないこと"ですね。知らないことについてはリスクを感じやすい傾向があります。もう一つは"不公平感"ですね。遠く離れた大消費地で恩恵を享受している人たちに比べ、供給源にいる人たちが不公平じゃないかと見る場合もあります。そういう不公平感も、リスク感覚がより強くなる要素といえます。このあたりについてはいかがでしょう。


中 村    世の中は持ちつ持たれつなんですよ。東京の人は新潟や福島で作った電気のおかげを被っている。北海道でいえば札幌の人は泊で作った原子力発電の恩恵を受けている。「だから泊は札幌の犠牲になっている」と考える人もいるかもしれません。でも、泊に近い岩内で獲れた魚、周辺で獲れた野菜や米などは札幌の人に買ってもらっているわけですね。札幌市内に田んぼをたくさん作るわけにいかない。金額の多寡は別として、お互いに助け合っているんですね。一方、工場がたくさんある地域は汚れた空気になりますが、そこで製品を作って空気のきれいな地域の人に買ってもらっている。その持ちつ持たれつの関係をお互いよく理解し合うのが大事ですね。


宮 崎    助け合いのサイクルというお話ですね。
 秋元さん、ちょうど話が出ましたが、泊発電所も次の段階に向けて動いているところですね。地元のメリットやデメリットについては具体的にいかがですか。


秋 元    北海道はいち早く原子力を始めましたから、今回のような原油高の影響を比較的和らげることが出来たのではないかと思います。これからも原子力比率が高いか低いかによって、地域毎に石油価格変動の影響が違ってくるでしょう。また発電に当たり炭酸ガスを出さない原子力の比率を高めることが、クリーンエネルギーを得る重要な手段になってくる。もちろん風力や太陽光などの再生可能エネルギーにもその力はあるのですが、残念ながらポテンシャルが非常に小さい。これから道内でいろいろな産業を伸ばしていくうえでも、使う電気がクリーンであるということがいちばん大事です。そういう意味で、泊発電所の活躍には大いに期待したいと思います。


奈良林    地元のメリットという点でお話しします。

 スイスに非常にいい例があります。スイスは面積が北海道の2分の1、人口が北海道の1.3倍。電力では水力発電所が55%、41%が原子力発電です。化石燃料は1.4%しかありません。ですからスイスは世界の先頭を切って二酸化炭素を出さない発電を行っている国といえます。

スイスのエネルギー環境政策
(出典:atel社プレゼンテーション資料他)

【資料解説】  写真では原子力発電所の周りに橋のようなものが見えますが、これはお湯のパイプラインです。スイスのベツナウ原子力発電所では、地元の人たちに電力会社からお湯が供給されています。ここには私も行きましたが、一般家庭に発電所のお湯が来ていて、全室床暖房をやっている。ある主婦に聞くと「私のうちはベツナウ発電所からお湯が来るから、石油の値段が上がろうが全然関係ないわ」と喜んでいます。発電所からのお湯を使うのは有料ですが、石油のようには上がらないんです。


宮 崎    まちづくりとしても面白いですね。お堀で周りを囲んで、そこに橋のようにパイプラインを通して。


奈良林    原子力発電所では蒸気タービンを使うので冷却水が必要です。ただ、スイスでは周りに海がなく、川の水を利用します。ベツナウ発電所は川の中州に建っていて、ここからお湯のパイプラインが約85kmにわたって延び、約2万人がこのお湯を使っています。

スイス生協(COOP)での原子力の熱利用

 ここに「COOP」とあるのは生協で、スイス生協では原子力発電所のお湯を使って店舗の暖房をしています。このようにヨーロッパでは、地元の人たちにとって原子力発電所が非常に身近な存在として位置づけられています。


宮 崎    泊でも周辺地域を暖かくしてもらうことは可能なんですか?


奈良林    技術的には可能ですが、その前に、まず地元の方たちの理解が得られるまでに時間がかかると思います。早く始めると良いですね。


  6/7  
<< 前へ戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) 続きを読む >>