北海道エナジートーク21 講演録
 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
パネルディスカッション
 地球温暖化とエネルギー問題 〜なぜ今、核燃料サイクルなのか〜

 
(7-2)
    【第二部】 「核燃料サイクルの必要性・安全性」

奈良林

ウラン235とウラン238の変化

【資料解説】  ウラン235は水で減速されたスピードの遅い中性子が近寄ってくると、ウラン235の中に取り込み、核分裂反応をします。赤い丸が2つありますが、これが核分裂生成物という別の物質に変わります。このときに核エネルギーを出し、熱として先ほどの水を熱水に変えます。

 核分裂しないウラン238は、中性子が取り込まれるとプルトニウム239という物質に変わります。プルトニウムと聞けば原子爆弾を連想するでしょう。これも純度100%のプルトニウムを集めると原子爆弾になりますが、濃度が低ければまったく問題ありません。

燃料集合体と原子炉

 また、北海道には自慢できることがあります。室蘭にある鞄本製鋼所の室蘭製作所です。ここは、大型の原子炉圧力容器を作ることができる世界唯一の工場です。室蘭で圧力容器を作る順番によって、世界で原子力発電所を建設する順番が決まってしまうとアメリカが心配しています。

 燃料棒の中には、チョークとほぼ同じ太さで長さ1cm程度のペレットがあり、これを固く焼き固めてパイプの中に入れて束ね、格子状に配置して炉心を形成します。上にある制御棒を抜くと、核分裂反応が起きます。これを人間がコントロールしながら発電するわけです。

ウラン燃料を使うとプルトニウムができる
(出典:鈴木篤之著「原子力の燃料サイクル」)

先ほどのウラン235とプルトニウムについてですが、炉内ではじわじわとプルトニウムができるので、2年、3年と燃料を使い続けるうちに、後半はプルトニウムによる発熱量のほうが多くなります。炉内で新しい燃料が生み出され、その燃料も発電に役立っているわけです。

発電後に燃料内にプルトニウムが生成
(出典:鈴木篤之著「原子力の燃料サイクル」)

【資料解説】  例えば新品のウラン燃料が1トンとすると、発電に使って3年くらい経ったときにはウラン235が10kgくらい残ります。その他30kgくらいの核分裂生成物ができ、これが高レベル放射性廃棄物になります。このときに高レベル放射性廃棄物を取り除き、もう一度ウランをリサイクルするというのが核燃料サイクルにおいて非常に重要なことです。

ウラン資源のリサイクル(プルサーマル)

【資料解説】  使用済燃料全体の95%が再利用でき、あとは高レベル放射性廃棄物が取り出されます。これが再処理工場です。再処理工場では高レベル放射性廃棄物を取り出し、回収したウランとプルトニウムを、核分裂しないウランと一緒に取り出します。日本では、回収したウランとプルトニウムを混合して取り出し、酸化物としてもう一度焼き固めます。これを「MOX燃料(Mixed Oxide Fuel)=混合酸化物燃料」と呼んでいます。プルサーマルでは、このMOX燃料がリサイクル燃料として使われます。海外ではすでに多くの使用実績があり、日本の原子力発電所でも順次使われるようになります。こうすることで高レベル放射性廃棄物の量が半分になり、ウランの利用率が上がるというメリットがあります。

ウラン資源のリサイクル(高速増殖炉)
(出典:資源エネルギー庁「原子力2007」)

【資料解説】  この技術はさらに高速増殖炉という技術に発展します。高速増殖炉は液体金属ナトリウムで動く原子炉です。軽水炉に比べ、高速増殖炉は燃料であるプルトニウムの増え方が格段に大きいのが特長です。これを使うことで人類は2000年のエネルギーを手にすることができます。福井県には、数千億円の国家予算を使って開発を進めてきた「もんじゅ」という高速増殖炉がありますが、温度計のさや管が折れて2次系のナトリウムが漏洩した事故以来ずっと止まっています。非常に不幸なことです。安全性を確認していずれ運転されることになりますが、軽水炉のサイクルと高速増殖炉のサイクル、この2つが今後あるということです。

高速増殖炉の開発も世界中で再開

 高速増殖炉は世界中で一時的に中断されていましたが、化石燃料への不安から、フランス、アメリカ、中国、インド、日本で高速増殖炉の開発が再開されました。中国やインドなど多くの人口を抱える国でも本格的に開発が始まりました。高速増殖炉は新しいタイプの原子炉ですから、トラブルもまだあると思います。ただ、安全性をしっかり確認し、トラブルがあればまた直して、着実に一歩ずつ開発していくべきものだと思います。


  2/7  
<< 前へ戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) 続きを読む >>