北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム
「これからの日本のエネルギーを考える」

【第一部・講演】

(5-5)

再生可能エネルギーはコストが高い

山本 では、二酸化炭素を減らすためにどうすればいいか。化石燃料のうち、石炭は非常に多くの二酸化炭素を出します。一番出さないのは天然ガスですが、それでも石炭の6割ぐらいは出します。

化石燃料による発電上位国

 火力発電設備では、日本は世界のベスト5というかワースト5というか、常にランクに入っています。それだけ日本は化石燃料を多く使っているということです。原子力発電所が止まっているのでしかたありません。

 こうした問題を解決するために一つ考えられるのが再生可能エネルギーですが、どの国もうまく行っていません。先ほどお話ししたように、電気代がすごく高くなるというのが問題です。

ドイツの再エネ発電量推移

 ドイツの再生可能エネルギー発電量の推移を見ると、増えていますね、設備はもっと増えています。ドイツは設備の半分以上が再生可能エネルギーになりました。発電量は3割です。しかもバイオマス、水力が多く、太陽光、風力を合わせても20%に満たない。設備はすごくあるのに発電量がそんなにないのはどうしてか。夜には太陽光は発電できません。風が吹いていなければ風力は発電できません。いつもは発電できないということです。

不安定電源-再エネの問題

 いつも発電できないと、どういう問題があるか。デンマークでは、風力で半分以上発電していますが、風が強く吹くと輸出しなければならず、電気が余っても捨てられません。逆に、風が吹かないと輸入しなければいけない。だから、輸出する電気は安く、輸入する電気は高い。ということで、デンマークの電気代は世界一高くなります。

再エネのシステムコスト

 これは国際エネルギー機関のデータで、アメリカ、イギリス、ドイツで、風力や太陽光が入ったら余分にどれだけお金がかかるかという試算です。なぜ余分にお金がかかるかというと、いつも発電できないから。いつも発電できない電気をうまく使うには、安定化させるための発電源や蓄電池が必要です。そういうコストを考えると、これだけかかるということです。このお金は誰が払うのかというと、電気料金で払うしかありません。ですから、発電源でいくら安くても、私たちが手元で見たときにその電気が安いかどうかは別問題ということです。

欧州主要国の家庭用電気料金推移

 これはヨーロッパ主要4カ国の電気料金です。再生可能エネルギーが導入されたことによって電気料金がどんどん上がっていきます。イギリスが一番遅く始めましたが、上がり方がすごいですね。こういうのを見ていたスウェーデンは、「2040年に再生可能エネルギー100%で発電する」と言っていたのを、昨年の半ばにやめました。理由はコストがかかるから、ということです。

原子力発電をめぐる世論の違い

山本 原子力発電の話をします。世界の原子力発電所はどんどん増えていきます。具体的には北欧、東欧、イギリス、インド、中国です。

原子力発電に関する意見の変化

 また、福島の事故後に「原子力発電所をどうすべきか」と意見を聞いたら、ドイツでは「直ちに閉鎖」が半分を超えました。でもイギリスやアメリカは「直ちに閉鎖」が減っています。なぜかと言うと、イギリス人の多くは、原子力発電所は温暖化対策とエネルギー安全保障の面で必要だと考えているからです。「事故のリスクはあるけれども、原子力発電所のないリスクのほうが大きい」という考え方です。イギリスではだいたい6割の人が原子力発電所は必要だと考えています。

 アメリカの場合は、エネルギー安全保障に関心を持っている人が非常に多いからです。アメリカ人は自分の身は自分で守る。だから原油の生産量が増えて値段が下がると、原子力発電への支持が下がります。エネルギー安全保障とエネルギーコストに非常に関心を持っている人が多いということです。アメリカの国民性ですね。

浜岡原発再稼働に関する意見

 これは日本の再稼働に関する意見です。ちなみにアメリカでは、原子力発電賛成はお年寄りに多い。50歳以上と50歳以下を比べると、明らかに50歳以上の支持が多いですが、日本は逆です。朝日新聞の世論調査では、20歳代の原子力再稼働賛成が6割です。

 これは私が静岡県で行った調査ですが、20歳代の再稼働肯定は66%。年齢が上がるにつれて反対が増え、日本で一番原子力発電所に反対しているのは60歳代です。理由はよくわかりません。おそらく小学校のときの教育が影響しているのか、「戦後行われた原子爆弾に関する学校教育の影響ではないか」とイギリス政府の人は言っていました。ただ、若い人に再稼働賛成が多くても、NHKの世論調査の回答者の半分は60歳以上です。NHKによると、20歳代は3%しかいないそうです。年齢で意見が違う問題の場合、世論調査結果をそのまま信用できるかという問題があります。高齢者の意見が非常に強く反映されている可能性があるということです。

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