北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム
「これからの日本のエネルギーを考える」

【第一部・講演】

(5-2)

平均年収は下がり、日本は一億総下流化

山本

主要国平均年収

 主要国平均年収を見ても、日本はイタリアより少しましなぐらい。どうしてこういうことが起こるのかというと、産業と非常に関係しています。日本だけでなく、アメリカでもイギリスでも同じことが起こっています。

産業別就業者数と平均給与の推移

 日本の平均給与の推移では、2002年450万円。1997年には467万円でした。日本では人口1億2千700万人のうち約半分が働いています。日本では高齢化が進んでいますが、働く人の数が変わっていないのはなぜか。定年が延びているから。もう一つは、働く女性が増えているからです。

 この平均給与というのは約6千数百万人の平均ではなく、一年を通して働いている人を指します。日本人の3人に1人ぐらいで、約4千数百万人の平均です。これが下がり続けています。20年前に比べると年収が1割減っています。どうしてこうなったのか。

 右側に、どの業種で働いているかが出ています。これを見ると、製造業で働いている人はこの15年間に200万人減りました。北海道でも同じだろうと思います。実は日本が一番景気の良かった90年代半ば、製造業で働く人は1500万人いましたが、いまは1000万人。500万人減りました。建設業で働く人は600万人から500万人。100万人減りました。この15年間に、製造業で働けなくなった200万人と建設業の100万人は、結果的に介護に行ったわけです。介護はこの15年間で雇用が400万人増えています。製造業、建設業をリストラされた人たちは介護に吸収されたわけですが、これが日本人の給料が下がった理由です。

 日本人の給料を見ると、製造業が年収500万円で高いですね。建設業も高い。しかし、介護は平均より低い。ということは、給料の高い業種から人が移っているから平均給与が減りますね。非常に単純な話です。

年収と生活実態の推移

 私たちの給料が下がってくると何が起こるか。いま、日本人で「生活が苦しい」という人は61%います。「生活が大変苦しい」という3割弱と「生活がやや苦しい」という3割強を合わせると61%です。給料が下がると生活が苦しくなるのは当たり前です。これは、金儲け上手な人とそうでない人との格差が拡大しているのだろうと思うかもしれませんが、日本は違います。

 いま、国民の85%が老後に不安を感じています。日本で働く人のうち、年収300万以下の人は40%を超えています。

格差は拡大しているのか

 では、格差が拡大しているからお金を儲けている人が増えているのかと思うと、年収1000万円以上の人は1997年に5%以上でしたが、いまは5%を割っています。みんな給料が下がっているので、生活にゆとりがある人は国民の3%ぐらい。これは格差が拡大しているのではなく「一億総下流化」。日本人がみんな貧しくなっているということです。特別な人はひと握りで、働いている人の大部分は年収が減ってきているのが日本の実態です。こういう状態を何とかするには、電気代、エネルギーコストというのが非常に大きな影響を与えます。

観光は成長産業として期待できるか

山本 「観光で何とかなる」と言う人がいます。先ほどの業種別年収グラフをよく見た方は気がついたかもしれません。外食、宿泊という観光産業は大きな産業で、平均年収が日本で一番低い産業です。平均年収240万円ぐらいの観光を伸ばしていって、日本は豊かになれるのでしょうか。

 例えば「ゆるキャラグランプリ」というのがあります。昨年は全国から1421ものゆるキャラが出ていますが、どの県や市町村も、「ゆるキャラを作っておけば何とかなる」「うまくいけば当たるかもしれない」と思っている。こういうもので観光客を呼び込めるのでしょうか。

訪日観光客の消費額-3兆4174億円

 これは、2015年に日本に来た外国人観光客がいくらお金を使ったかというグラフです。3兆4千億円のうち半分が北海道なら大きな儲けになりますが、そうではありません。

 なぜかというと買い物です。銀座三越に行ったら、地下1階の化粧品売り場にいるのは店員も客も中国人ばかりです。普通、デパートの化粧品売り場は1階に置きますが、銀座三越はなぜ地下に置くか。1階にあったら日本人がびっくりして多分出て行ってしまうからだと思います。

 買い物に行く先というのは、銀座三越やヨドバシカメラ、ビックカメラなどですが、宿泊費や飲食費で1兆5千億円ぐらいのうち、東京都で外国人が使う分は1兆1千億円。つまり7割以上が東京で消費されています。

延べ宿泊人数

 もちろん、北海道にもたくさん来ています。日本で宿泊した外国人観光客述べ6500万人のうち、560万人は北海道に泊まっています。しかし、使っているお金は1割もないということ。3兆4千億円が日本全国で使われていても、そのほとんどが東京ということです。交通費も、東京に本社のある会社がかなり取っているということ。残念ながら、外国人観光客はそんなに期待できない。では日本人観光客に期待できるかというと、できません。日本人が貧乏になっているからです。

2人以上世帯月平均支出額推移

 このグラフは、世帯平均でひと月に使っている金額を表したものです。15年前、2人以上の世帯で月当たり32万円を使っていました。いまは29万円。1割も支出を減らしています。支出を減らそうとすれば、まずお父さんのお小遣いから減らしますね。2番目は外食費、旅行費。支出が減ったことにより、旅行費は月6000円から4000円に減り、3分の2になりました。ということは、観光で儲けようと思ったら、日本人が平均的に余裕のある状態にならないと、観光にはお金を使わないということです。

日本の分野別名目付加価値額の推移

 これは観光の付加価値額、儲けの額です。10年間で宿泊・外食は3兆円以上減っています。昔は17兆円近くあったのに、いまは13兆円台です。日本人が貧乏になり、宿泊や外食にお金を使わなくなっているから儲からないわけです。

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