北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム
「これからの日本のエネルギーを考える」

【第一部・講演】

(5-4)

日本の電気は本当に足りているのか

山本

日本のエネルギー事情

 これは日本のエネルギー事情です。家庭部門、業務部門でエネルギー消費量が増えていますね。逆に産業は減ってきています。

 家庭用が増えているのには理由があります。最近はウォシュレットが増えています。どのマンションでも、ウォシュレットがついてないと売れませんね。こういう電力消費が増え、家庭用の電気量が増えているわけです。

家電製品の効率推移

 このグラフは、家電製品を買い替えるなら何が得かということ。10年前の冷蔵庫を買い替えたら電気代が3分の1になりますが、10年前のエアコンを買い替えても電気代は減りません。10年前のエアコンを買い替えようと思っているのだとすれば、フィルターを掃除するほうがはるかに電気代は下がるということです。

電気は足りているのか-東電の供給力

 「電気が足りているから原発はいらない」と言う人がいます。電気は確かに足りています。ただし、足りていても我々が払える価格でないと困ります。いま電気代は払えていますが、震災前に比べて家庭用の電気代は25%上がっています。なぜ上がったのかといえば、燃料の購入量が増えたこと、固定価格買取制度が始まったこと。もう一つはこれです。これは、東京電力が夏場に一番需要があった日のグラフです。5000万kW弱の需要に対してこれだけの供給力があれば余裕だと思うかもしれませんが、そうではありません。

北海道電力の揚水発電所

 これは、北海道電力が一昨年の暮れに初めて作った純揚水発電所です。上にある丸い池は人工で、夜間に電気使用量が減ると、余った電気で下の池の水を上の池に揚げます。昼間に電気が足りないとき、北海道だと冬場だと思いますが、上の池の水を落として発電します。

 原子力発電所が動いていれば、夜間電気が余っているので、水を揚げるのにそれほどお金がかかりません。いまは原子力発電所が動いていないので、石炭とか石油を燃やして上に水を揚げています。ということは、皆さんさんが払っている電気代のたぶん2倍ぐらいのコストがかかっています。こういうことをしなければ電気は足りていません。ですから、量が足りているからいいと言っても、どの値段で足りているかというのが問題なのです。

温暖化の影響は今後どうなっていくか

山本

 ここから温暖化の話です。この写真はアフリカです。アフリカでも大きい湖のチャド湖の水がない状態です。昔はナイジェリアやチャドなど4カ国にまたがる湖でしたが、いまその面積は20分の1以下になっています。この湖の水がなくなった原因の半分は人為的なことで、水の使いすぎです。もう半分は温暖化。温暖化で雨が降らなくなっています。

 温暖化は、気候変動といわれるように、雨が降るところでは極端に降りますが、降らないところでは極端に降りません。アフリカはその影響をすでに受けています。アフリカの大半の国では、働いている人の8割ぐらいは農業に従事しています。温暖化の影響で雨が降らなくなると、農業ができなくなる。自給自足のアフリカにとっては死活問題です。こういう人たちが困るから温暖化対策を進めようというのが、国連の基本的な考え方です。

過去135年の気温推移

 これはアメリカ政府の観測データで、135年の間に気温が1.2度ぐらい上がっています。なぜかと言うと、二酸化炭素が毎年増えていっているからです。光合成が活発な時期には二酸化炭素が減りますが、不活発な時期には増えます。

マウナロアとマウナケア

 二酸化炭素の濃度を測っているのはこういう場所です。雪が積もっていますが、ハワイ島で標高4000m以上のマウナケアという山の上に天文台があり、反対側のマウナロアというところにアメリカの観測所があります。

日本各地の二酸化炭素濃度

 日本は大船渡、南鳥島、与那国の3カ所で測っています。ハワイ島とこの3カ所の共通点は、人為的活動がほとんどない地域だということ。要は自然の二酸化炭素濃度が測れる場所として、人があまり住んでいない場所が選ばれています。3カ所の二酸化炭素濃度はどれも400PPM以上。産業革命の時代は280PPMぐらいでしたから、それくらい二酸化炭素が上がっています。それが温暖化の原因です。

2100年の地球の気温

 2100年の地球の気温は最大4.8度上がると予想されています。実は最小は0.3度です。予想にも幅があるので、2100年の地球の気温がどれくらい上がるかというのは全くわかりません。しかし、5度以上上がる可能性もある。もしも対策をしないと、さまざまなことが起こります。

 環境省によると、例えばリンゴの栽培地は本州から北海道に移るなどの影響があるそうです。それはあまり問題ではないと思いますが、先ほどのようにアフリカの人たちのことを考えると対策をしたほうがいいので、日本は2030年までに温室効果ガスを26%削減するという目標値を定めています。同様に、アメリカとEUもそれぞれ目標値を定めています。

 日本はこれを達成するために、電気の44%を原子力と再生可能エネルギーでまかなう、つまり二酸化炭素を出さない電源で電気を作ることを目標としています。

 また、エネルギー効率を改善するという目標も立てていますが、たぶんできないと思います。なぜかと言うと、エネルギー効率が改善するためには、工場の設備が入れ替わらなければいけません。実はオイルショック以降、エネルギー効率は35%ぐらい改善しました。年率4〜5%で経済が成長すれば、設備投資をしてもエネルギー効率の改善になりますが、政府が想定している経済成長率は1.7%です。それで設備の入れ替えはできないでしょう。達成は非常に難しいといえます。

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