北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'11新春講演会『地球温暖化問題の今』
【第一部】 講演〜地球温暖化問題の今〜

(6-5)

グリーン産業で経済成長は可能か

 

新産業可能性への警告!

 では、環境技術を使った太陽光パネルなどのグリーン産業はどうでしょう。民主党政権は、そういう分野で経済成長を目指そうとしていますが、これにも大きな誤解があります。

 「ミクロのエピソードは、マクロ経済を救わない」とありますが、何か一つが売れたからといって経済全体が良くなるわけではないという意味です。例えば、ハイブリッド車が売れ続けても、日本経済全体が救われるということにはなりません。グリーン産業以外の産業における影響も全部含めて考えなければいけません。一つの品物が売れることを強調しすぎると、正しい判断ができないことがあります。

 オバマ大統領はいち早く、環境産業で経済を立て直すと宣言しました。しかし、20カ月以上、アメリカの失業率は9%を上回ったままで、何ら雇用は増えませんでした。なぜかというと、例えば、エコポイント制度で太陽光パネルの産業を支援しても、実際には中国の太陽光パネルの工場が増えただけということがよくあるのです。エコポイントは皆さんの税金を基に補助金を出しているので、税金を使って中国の雇用を増やす形になっているだけです。ですから、アメリカもドイツも「グリーン産業論」に疑問を持ち、そういうことをやめ始めています。

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環境税は所得分配に影響する

 

【参考1】石油石炭税の税率上乗せの概要、【参考2】エネルギー起源CO2排出抑制対策の例

 これは、先ほどお話ししたことですが、「石油や石炭の税金が本当に上がるの?」という人のために「本当です」ということをお伝えするための資料です。原油・LNG・LPG・石炭はこれだけ値段が上がることになります。

温暖化対策税の根本的問題

 ここで問題なのは、環境税は所得分配に非常に影響するという点です。特に低所得者層や地方にすごくしわ寄せが来ます。なぜかというと、エネルギーの値段が上がるわけですが、エネルギーは生活必需品ですね。お風呂に入る、電気を点ける、テレビを見るなど、生活の大事な基礎であるわけです。

収入分位別の世帯当たり年間エネルギー支出の増加

 エネルギーの値段が上がるときに、節約できる余地がどれだけ残っているかを考えると、一番所得の低い年収345万円以下の人は、節約する余地が少ない暮らしをしています。エコ生活です。そうなると、量を減らすことができないので、エネルギーの値段が上がった分はそのまま支出の増加になります。ですから、負担率を見ると、所得の低い人たちが一番困ることが分かります。

 例えば、消費税を導入しようとするときに「食料品は免税にしてほしい」と皆言いますね。それは所得の低い人が困るからです。しかし、環境税というのは、所得の低い人により厳しく課税するのに、このような配慮がありません。その上、課税によって得た税金は太陽光パネルの補助金として使われ、高所得者層を支援する結果になります。それが実態です。

 涙ぐましい努力をするのは、その次に所得の低い年収345〜463万円の人たちです。ギリギリまでエネルギーを使う量を減らそうと努力します。「たばこ税が上がったから節煙しよう」というのと同じです。

所得階層別の世帯数の相対度数分布(2008年の所得)

 日本の所得分配はこういう形です。今お話しした年収350〜450万円の人たちは、左から4、5番目くらいの位置にいます。昔はこの山がもう少し中央に寄っていたはずです。ところが、格差拡大によって平均所得以下の人たちが6割以上もいます。環境税は、いわば「弱きをくじいて強きを助く」という政策です。

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