北海道エナジートーク21 講演録

 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'11新春講演会『地球温暖化問題の今』
【第一部】 講演〜地球温暖化問題の今〜

(6-2)

日本にとって不利な京都議定書

 

 こうした排出の状況下で、国際交渉が進められていますが、皆さんは京都議定書をご存じでしょうか。簡単に申しますと、京都議定書は、人間が出すCO2等の温室効果ガスを減らすために各国に排出目標を定めたりした国際条約です。

 その中に大きな欠陥があります。京都議定書では、先進国だけがCO2を削減する法的義務を負っており、途上国には削減義務がないという点です。

 なぜかというと、途上国の「温室効果ガスを出してきたのは、化石燃料を使って経済成長してきたアメリカやヨーロッパ等の先進国だから、先進国が削減すべき。これから経済成長しようとする途上国は、化石燃料を使ってはいけないのか」という主張があるためです。これを「歴史的排出責任論」といいます。

歴史的排出責任について

 図の緑色の部分を見て下さい。確かにこれまでの歴史上、CO2を多く出してきたのはアメリカとヨーロッパです。日本は歴史的に見ても4%しか出していません。途上国である中国が日本を既に追い抜かしています。黄色の部分を含めて見ると、2030年までの予想では、やはり中国が相当増えることになります。つまり、歴史的にも中国が責任を負い始めているという意味です。

 そういう中で、アメリカは京都議定書の内容に関して「途上国に削減義務がないので、自分たちは京都議定書に入らない」と主張して、ブッシュ政権のときに京都議定書から抜けてしまいました。よって、今ある京都議定書で削減義務がかかっている主な国は、日本とヨーロッパ、ロシアだけです。

 しかも、ロシアの削減目標は、何も努力しなくても達成可能な数値です。ヨーロッパもすごく易しい目標しか持っていません。ですから、京都議定書で削減義務を負う国の中で、一生懸命に頑張っているのは日本だけなのです。

ページの先頭へ

地球温暖化問題はエネルギー問題

 

京都議定書(1)

 京都議定書で対象となっている温室効果ガスは6つで、化石燃料を燃やしたときに出るCO2だけでなく、メタン、一酸化二窒素、代替フロン3ガスがあります。北海道のように森林の多いところは、木が育つことで光合成が進みCO2を吸収してくれるので、その吸収分はマイナスできます。京都議定書における日本の目標は、「1990年の量に比べて、2008〜2012年の5年間の年平均でマイナス6%」というものです。

 現在、この目標を達成する見通しはあるのでしょうか。

 実は、京都議定書を批准したとき、経済産業省の担当課長は私でしたが、当時は、日本も経済成長し、エネルギーを使い、その分CO2を出すという見通しだったので、この目標は達成できないと思われていました。しかし、今の見通しでは何とか達成できそうなんです。これは、リーマンショック以降の不況によるものです。経済状況が悪くなると、エネルギー使用量が減りCO2も減るということです。

 地球温暖化問題は、煤塵や水質汚染、有機水銀などのいわゆる公害問題とは違い、実はエネルギーと切り離せない問題です。エネルギーは我々の生活に深く関わっていて、みなさんが家庭で灯油や電気を使うことによってCO2を出してしまっている。その点では全員が加害者です。ある特定の企業だけが悪者ではありません。そして、誰が被害を受けるかというと、これもまた全員です。

 例えて言うなら、警察のようなものです。警察は皆あったほうがいいと思うでしょう。しかし、そのコストを自分一人が負担したいとは思わない。

 同じように考えると、温暖化の心配のない、住みやすい地球には誰もが住みたい。しかし自分では温暖化対策のコストを払いたくない。他人が払ってくれるならそれに越したことはないと思う。こういう特徴があるために、地球温暖化問題の国際交渉をまとめるのが非常に難しくなっています。

ページの先頭へ
  2/6  
<< 前へ戻る (1) (2) (3) (4) (5) (6) 続きを読む >>