北海道エナジートーク21 講演録
 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会
 '09新春エネルギー講演会 
(5-2)
    【第二部】 「原子力を巡る最近の諸情勢」

行き過ぎた「安心」が作り出すもの

 

 さて、私が経済の話をするのもおこがましいのですが、この最近の日本経済について考えるところがあります。

「原子力を巡る最近の諸情勢」

 「派遣切り」の問題だけではなく、自動車産業の販売台が激減、ソニーが営業赤字のために希望退職者を募集、自動車産業不振による粗鋼の減産など、最近は暗いニュースが流れています。今日聞いたニュースでは、来年度のGDPは世界全体で0.5%しか伸びないだろう、その余波で日本はマイナス1.6%くらいになるだろうとの予測です。

 なぜこうしたことが起きるのでしょう。地から湧いて出てくる石油のお金、汗を流さないで手にしたオイルマネーが悪さをすると経済がおかしくなるのです。その量は莫大で、日本にもその影響が集中して及ぶと、株価が高くなったり、逆に下がったりして、一喜一憂させるまでになっています。オイルマネーは遊んでいません。利を得るために、人々が生活の安定、安心のために持ちたい住宅や土地を買うための投資に使われています。やがて値上がりするからと、住宅が持てない人に資金を貸す、それで家を買う人が増える。だが思ったほど値上がりしないので、利子が負担になって、払えなくなってきたというのが、この経済不況の発端といわれるサブプライムローン問題です。

 この先物投資で、昨年8月には石油の価格が160ドルにまで上りました。アラブの人に言わせれば、石油は50〜60ドルの値で売れれば十分だそうです。それがあんなに上がったのは、マネーゲームをやっている人たちが先物取引で操作しているからです。「私たちは石油高を非常に心配している」とアラブの人が言っていました。それがいまは30〜40ドルに急激に値下がりしました。これが先物投資の危険性です。先物投資が生まれる所以は、人々が必要な物を将来に備えて安定的に確保し、安心したいという心理からきています。安定した価格で物が供給され続けることは、企業にとっても、家庭にとっても望ましいことです。このため、先物取引をするこの「安心したい」という考えが度を過ぎて、100年に一度といわれる経済不況を生んでいるわけです。

「原子力を巡る最近の諸情勢」  私は「安全」はしっかり守るべき課題だと思います。国民の過大な負担にならない範囲で安全は守らなければいけない、規制は行われなければならないと考えています。だが、「安心」は行き過ぎると、今回のような経済不況にもつながります。本末転倒の現実を招来しています。気をつけなくてはなりません。それは「安心」は個人個人の欲望、つまり「エゴ」が作るものですから、「安全」は、私たちの社会全体が科学的、合理的に合意し、しっかり守っていくべきものです。この2つは大いに違うと思います。最近の日本は、何でも「安全・安心」と並列に扱い、ときには安全より安心が大事であるかのようにも見受けられます。今の日本では特に、地方自治体にこうした風潮が見られますが、これは間違いです。

 さて、この経済不況をどのようにお考えでしょうか。日本は今円高傾向で、1ドル90円くらいです。つい最近までは1ドル110〜120円でした。これだけで日本人は2、3割得したわけです。

「原子力を巡る最近の諸情勢」

 ところで、イギリスの株価はどうでしょう。1ポンド200〜250円だったものが、現在は約130円。ロシアの株価はもっと落ち込み、2,500ルーブルが500ルーブルくらいまで下がっています。半分から4分の1に財産が減ったのです。逆に日本の場合は財産が2、3割も増えたと思えば良いのです。仮にGDPが1.6%下がったとしても平気です。国内の購買力はあるわけですから輸出が減っても心配する必要はないと思います。 経済状況というのは、気の持ち方なのです。政府もマスメディアも、不安をあおるようにしているのが良くないのではないかと思います。これは原子力の問題も同じだと思います。

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