エネルギー講演会「脱炭素化に向けた日本の針路」
【第一部】講演
(7-3)

北海道はどうかというと、産業別雇用者数を見ると、製造業は全国よりも小さい。建設業が大きいのは、北海道はインフラが大規模になりますから、当然そうですね。医療・介護で働く人が多いということは、全国より高齢化が進んでいるからです。

では、どの分野が稼いでいるのかというと、医療福祉のうち医療業です。お医者さんや看護師さんの稼ぎが大きいということ。産業構造を見ると、稼ぎの額がわかるわけですが、あとは建設業で、製造業はありますが、北海道は食品製造が中心ですね。この一人当たりの付加価値額、稼ぎに応じて年収が決まります。

全国と北海道の産業別年収のグラフです。北海道は赤色で、全国平均を上回っている分野はありませんが、その中でも年収が高いのが、卸・小売業と医療福祉です。北海道は製造業が低いです。コロナの影響が表れた2020年のデータですが、北海道は食品製造業の占める割合が大きいので、2020年は相当大きな影響を受けています。観光客はなく、飲食店も閉まってしまうので売れない。製造業は全国では年収が減っていませんが、北海道は大きく落ち込んでいます。昨年前年比で50万円ぐらいは減っています。食品製造に関わる人が多いから、コロナの影響を受けてしまったわけです。

日本人は給料が減っています。日本の世帯所得分布というものがあります。いくら以上あれば平均より上か下か。ここには平均552万円とあり、これ以上所得の多い人は、日本の世帯の4割以下です。日本の世帯の6割以上は、552万円より下です。どうしてそうなるかというと、ものすごく所得の多い世帯があるからです。例えば孫正義さんや柳井正さんのように、年収何十億円という世帯の影響を受けています。
一方、上から50%、下から50%の中央値は437万円です。日本の世帯の標準は年収437万円ですが、1994年、平均年収はいまより100万円以上多い664万円でした。100万円以上も減っています。
北海道は少子化が非常に激しい地域だということをご存じですか。日本の少子化の一番進んでいる都道府県はどこかというと、東京都です。一人の女性が生涯に産む子どもの数を表す合計特殊出生率(2020年)は、東京都は最も低く1.13です。次に低いのが北海道で1.21です。北海道は、戦後すぐの間は全国平均よりも高い出生率でした。子どもの数が多かったんです。でも50年ぐらい前から全国平均を下回るようになりました。いまは非常に低迷し、子どもを産まない人が多くなりました。
どうしてか。多様性などいろいろ言われています。でも、県によって地域によって子どもを産む人の数がなぜそんなに違うのか。理由のひとつはおそらく収入なんですね。

これは20代、30代が結婚しているかどうかの調査結果ですが、年収が増えるに従って結婚している人が増えます。
年収1,000万円を超えると、結婚している人が少し減ります。なぜかというと理由は2ついわれています。ひとつは、年収1,000万円を超えると忙しくなって婚活ができないという理由。もうひとつは、年収1,000万円を超えると遊んでしまって、結婚する気がしない。年収1,000万円以上の人は別格として、いずれにしても年収が増えないことには結婚できない。北海道の問題はたぶんこれです。
これから考えなければいけないことは、北海道はどうやって稼ぐか。子どもを産めるような環境をどうやってつくるか。それをいまから考えたいと思います。

≪講演会の様子≫