
さて、鳩山前総理は1990年比25%削減という目標を掲げました。一昨年、民主党に政権交代したときに華々しく打ち出した最初の大きな政策でした。この政策には皆が拍手を送りました。国連でも拍手を受けました。
実はこの目標は、日本の一般の方々には人気が高い。いろいろなメディアで紹介されましたが、あるラジオの討論番組で「25%削減目標に賛成ですか、反対ですか」という問いに対して、「賛成」が5割、「反対」が3割、「わからない」が2割でした。
しかし、賛成の方の大半はこの目標を「志の高い努力目標」ととらえていました。「やろうと思っても多分無理だが、志の高い目標に向かって努力する姿勢は国際的に評価されるべきだ。だから鳩山さんは偉い」というのが理由でした。
しかし、これはまったくの誤解です。この目標は、達成しないと罰則が生じる国際的な法的義務になる可能性があるものです。これについては「知らなかった」という方が多いのですが、25%削減目標というのは、そういう性質のものです。
例えば企業で、ノルマと比べて実績がどうだったかでボーナスが増減するなら、ノルマを少なくしようと上司と交渉しますね。「9千万円くらいはできるかもしれないけれど、ノルマが5千万円で済めば、得をする。」と考えるはずです。実は、ロシアやヨーロッパはそういう交渉のしかたなんです。
日本は非常に人が良くて、非常に高い目標を掲げたので、「CO2を出してもいい権利」のことを排出権といいますが、ヨーロッパやロシアはその排出権を日本に売り込めると考えて、拍手したわけです。
日本政府が他国から排出権を買う場合、そのお金はどうするのか。皆さんから徴収する税金でそれを支払うことになります。
実は来年度から、石油や石炭にかかる税金が上がり始めます。それがつい最近決まりました。皆さんはご存じでしょうか。増税という形で結局つけが回ってくるのに、こういうことがなかなか皆さんの耳に届いていない。これが一番の問題です。
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