北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギーシンポジウム
「これからの日本のエネルギーを考える」

【第二部・パネルディスカッション】

(4-3)

再生可能エネルギーの現状と課題

橋本 イメージからすると、ヨーロッパの電気はすごく豊かだと思い込んでいました。

 

川口 いつも豊かなわけではありません。スイスでも、やはり冬に1基止まると結構厳しくなります。そこで、いま動いている発電所を長く運転するという考え方に変わっていくのではないでしょうか。イタリアはチェルノブイリの後原発を止めたまま、火力も作れず、他国に電力を依存しているので、非常に電気代が高い。

 ドイツは脱原発を宣言したときに、他の国に相談せずに決めてしまったことが非常に問題だといわれています。再生可能エネルギーの電気が余ると、勝手に隣の国に流れていきますが、隣の国も満杯のときはそれは困るわけです。チェコやポーランドなどは、国境のところに電気を遮断する機械をつけ、いらないときにむやみにドイツの電気が入ってこないようにしています。

 オーストリアも去年、それをつけましたが、ドイツメディアは「EUの電力統合をオーストリアが妨害している」と書いていました。それはドイツの身勝手な言い分です。

 

橋本 遮断機だなんて踏切みたいですね。山本先生、再生可能エネルギーというのはそういう性質のものですか。

 

山本 

山本 隆三 氏 再生可能エネルギーというのは、風が吹いたら当然電気ができますが、余ったからといって捨てられないですよね。ということは、その電気がどこかに流れていきますが、送電線がつながっているということは、ドイツで電力消費がなければ、隣のポーランドやオーストリアの送電網に入っていきます。電気というのは足りなくても停電しますが、余っても電圧が上がり過ぎて停電してしまいます。ですから、ドイツから勝手に電気が流れてくると、ポーランドは停電してしまう。だから遮断することを決めた。これはしょうがないですね。

 再生可能エネルギーが増えるとそういう問題が出てきます。再生可能エネルギーでなければ、突然発電が起こるということはないので、そういう問題は生じません。これは、ヨーロッパが再生可能エネルギーを入れた結果出てきた問題です。

 

川口 ヨーロッパはつながっていますから、小競り合いはあっても、いざというとき助け合うことができますが、日本は島国ですから、そうはいきません。脱原発と言っている台湾も、海底ケーブルなどで他国とつなげるのなら別ですが、電気が余っても困るし、足りなくても困ります。ですから、再生可能エネルギーだけでやっていくのは不可能だと思いますね。再生可能エネルギーの技術をどんどん進化させるのは賛成ですが、電源をうまくミックスして補い合うしかないでしょう。

 

山本 再生可能エネルギーの電気をうまく使おうとすると蓄電装置が必要ですね。電気を貯めておくことは非常にコストがかかります。日本の企業は、昔は蓄電池開発が非常に得意で、世界シェアの半分以上を持っていました。いまはもう世界シェアの10%もない。どこにやられたかと言うと、韓国と中国とアメリカです。

 アメリカのエネルギー省は、蓄電技術にはものすごい予算をつけています。日本と二桁違う予算です。蓄電技術を開発して再生可能エネルギーをうまく使おうというのが世界の流れですが、いま日本にそういうものを導入したとしたら、電気代がたぶん3〜4倍になります。ですから、技術開発をある程度待たざるを得ないというのがいまの状況だと思います。

日本とアメリカ、経済事情の大きな差

橋本 山本先生はアメリカの視察から戻られたばかりだと聞きました。トランプさんのお話はどうですか。

 

山本 トランプ政権ではまだ予算案が出てきていないので、エネルギーと環境政策ではよくわからないところがあります。ただ、一つはっきりしているのは、石炭の復活です。アメリカは市場経済なので、政府が石炭を復活させる政策を入れるにしても限度があると考えられています。なかなか難しいかもしれません。

 トランプさんが大統領になれたのは、日本と同じような事情です。アメリカの産業別雇用者数推移によると、日本と同じように製造業が減って、介護が増えています。介護に従事する人は増えていますが、日本と同じで給料は安い。給料が安くなった製造業でクビになり、介護や小売、観光などに行った人たちが非常に不満を持ち、「政権を変えよう」という流れでトランプさんに入れたということです。

 ですから、今回トランプさんが勝った州を見ると、アメリカで製造業の比率の高い5州で全部勝っています。そのうち3州はいままで民主党が勝っていましたが、逆転したわけです。製造業に不満を持った人というのは、日本と同じ状況で、給料の高い製造業の仕事が減っているということです。

 日本とアメリカの違いは、アメリカは経済が大きく成長しているので、給料の高い情報・金融などの仕事も増えていること。平均給料は上がっています。日本との違いはそれです。日本は全部の職業が沈む中で、給料の安い介護だけ伸びている。アメリカはそうではなく、平均給料は増えています。

パネルディスカッションの様子

 ただ、アメリカでもイギリスでも同じような状況があって、みんなトランプや脱EUなど新しい方向に動いた。ということは、日本もこういう状況を放置していると、とんでもないことが起こるのではないかという気がしています。

 どの国でも製造業の雇用が減り、製造業で給料の高かった人たちが給料の安い仕事に就かざるを得ないというのが共通した悩みです。ただ、日本がその中で悩みが深いのは、日本経済が成長していないということ。イギリスやアメリカは経済が成長しているから、不満はある程度吸収できるわけです。

 私は大学教員ですが、こんなことやっていたら若い人に希望がなくなってしまいますよ。給料が下がっていくだけですから。うちの大学で就職の第1希望は公務員。安定しているからです。若い人に原発再稼働支持が多いというのは、それが電気代に直結しているということを、彼らは理屈の上でわかっているからです。だから、早く電気代を下げて景気をもっと良くして、給料を上げてほしいということなのだと思います。

 私は反原発の集会にも平気で行きます。反原発の人たちは「子どもたちの未来のために」と言いますが、だとしたら原発を動かして電気代を下げないとダメだろうと思います。この状態がずっと続く日本経済だと、それこそ子どもたちに未来はないかもしれない。少子化を止めるには、保育所を作るよりも、給料を上げるほうが効果はあると思います。「生活が苦しい」という人が6割というのは異常です。バブル期の後でも「生活が苦しい」という人が国民の3分の1でしたから、それくらいの状況に戻さないと日本経済に未来はないのではないかという気がします。

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