北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギー講演会
「環境とエネルギーについて、一緒に考えてみませんか?」

【第二部・対談】

(4-3)

電気料金はなぜ上がったのか

 

東日本大震災後の電気料金の推移

 

山本 電気料金の話をします。上の「電灯」というのは家庭用で、震災後に平均で最大25%アップしています。「電力」というのは産業用です。産業用は最大38%アップしています。なぜそんなことになったのか。理由は三つあります。

 一つは原子力発電所を停止させ、燃料の購入費が増えました。そこで2013年1月に日銀が金融緩和を宣言し、4月からアベノミクスが始まりました。そうすると、すごい円安になりました。円安は輸出にはいいですが、80円が100円になったら、それまで100ドル8000円だったものが10000円になります。原油はドルで買うので、日本円に換算するとどんどん上がっていくわけです。

電力業界の化石燃料使用量推移

 この青い線のように、日本が原子力発電所を停止したころから原油が上がっています。100ドルを超え、2014年秋まで100ドルを超えた状態が続きます。円安と原油価格の値上がりで大変影響を受けました。

電気料金と再エネ賦課金額の推移

 また、時の政府の政策が影響しています。2012年夏、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を導入しました。当時の電気代は22円か23円でしたが、太陽光パネルを付けたら1kWhあたり42円で買ってくれたわけです。その差の20円は皆さんの電気代で負担していますが、この負担金がどんどん上がってきました。いまは1kWhあたり2.25円。負担金は産業用電気料金の1割以上、家庭用電気料金の1割近くです。ということは、この負担金によって電気料金は約10%上がっています。こういう制度を原発停止と同時に始めたら、電気代がどれだけ上がるのかということです。

 もう一つの問題は、私たちの生活が苦しくなってきています。給料はこの20年間ずっと下がっています。日本経済で一番給料が高かったのは1997年、平均給料は467万円でした。2014年は平均給料415万円。10%下がっている中で電気代の負担だけが増えています。国民生活にどれだけの影響があるかを考えるべきだったと思います。

 ちなみに、製造業の支払う電気代は1兆円増えました。もしもこれを人件費に回したとしたら、製造業で働く人たちの給料は3%賃上げが可能でした。その1兆円がサウジアラビアやインドネシアに支払われているわけです。サウジアラビアやインドネシアの人は給料が上がっても日本で買い物をしてくれませんから、日本の景気は良くなりません。

省エネや再エネはどこまで進むか

 

家電製品の効率推移

 

山本 これをご覧ください。10年間で家電製品の効率がどれだけが良くなったか。エアコンは10年前と比べて全然効率が変わっていません。買い替えるのよりもフィルターを掃除するほうが、よほど電気代が下がります。冷蔵庫を見ると、10年間で消費電力量は3分の1ですから、冷蔵庫は買い替えたほうがいいですね。ブラウン管テレビを液晶に買い替えたら10分の1ぐらいに下がります。

 次に再生可能エネルギーについてお話しします。再生可能エネルギーは二酸化炭素を出さないので、地球温暖化には非常にいい影響を与えそうです。

ドイツの発電設備と発電量

 これはドイツの例ですが、風力と太陽光で発電設備の40%ぐらいです。ただ、発電量は風力と太陽光を合わせても10数%しかありません。なぜかというと、再生エネルギーはいつも発電できないからです。例えば、北海道の東側は日照時間が長いですが、太陽光パネルを設置して発電することを考えると、夜間や降雪時にどうするのかという問題が出てきますね。

不安定電源-再エネの問題

 実はそういう問題に直面している国が、世界最大の再エネ大国デンマークです。デンマークは電気の半分以上を風力発電でまかなっています。北海に面しているので風が強く、洋上に風車を作ったらいくらでも発電できます。

 このデータをご覧いただくと、輸出をしながら輸入をしていることに気づくと思います。どちらかをやめればいいのに、やめられないのはなぜか。風が強く吹くのは世界共通で夜ですが、夜に電気を使う人はいません。ということは、デンマークは夜に発電量がすごく増えますが、電力需要がないので、仕方がないから隣国のドイツ、ノルウェー、スウェーデンに電気を輸出しています。だから輸出量があるわけです。

 ところが、ドイツもスウェーデンもノルウェーも夜に大きな電力需要はなく、かといって電気を捨てるわけにはいかないので引き取ります。電気が本当に要らないとなったら、お金をつけて引き取ってくださいとお願いするしかありません。一方で、昼間の凪の時は、停電するので電気を輸入します。輸入するときには、当然足元を見られて高い電気を買う。こういうことをやると電気代はどうなるか。デンマークの電気代はいま世界一です。ちなみに世界2位はドイツです。再生可能エネルギーを大きくすると、それだけ電気料金に負担がかかるということです。

 そういうことを見ていて、隣のスウェーデンは「2040年に再生可能エネルギーに全て切り替える」と言っていたのをやめ、原子力発電所を全て立て替えて使うと言い出しました。再生可能エネルギーにすると電力コストが約3倍になり、国民生活に影響があるとの試算があるからです。

世界一高くなったデンマークの電気料金

 電気代のデータです。デンマークは再生可能エネルギーが増えたときに上がって、そのまま下がりません。ドイツも高いですね。再生可能エネルギーを増やすのはいいのですが、それなりに覚悟がないとできません。これを安定的に使うとなると蓄電池を入れなければなりませんが、コストが高い。いま世界の主要国が蓄電池の技術開発競争をしていますが、日本は負けぎみです。5、6年前は蓄電池といえば日本メーカーの独壇場でしたが、いまやシェアは10%を切り、韓国、中国、アメリカと競っています。

 再生可能エネルギーは二酸化炭素を出さず、きれいでいいですが、その分電気代が上がってしまうのが悩みです。多くの国はいま、これを一時的に中断する方向に入っています。いま熱心に進める政策を活用している国は、アメリカと中国だけと言ってもいい状態だけです。

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