北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギー講演会
「環境とエネルギーについて、一緒に考えてみませんか?」

【第二部・対談】

(4-1)

【第二部・対談】増田 明美 氏 × 山本 隆三 氏
 

スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授 増田 明美 (ますだ あけみ) 氏
常葉大学経営学部教授
NPO法人国際環境経済研究所所長
山本 隆三 (やまもと りゅうぞう) 氏
司会(フリーアナウンサー) 橋本 登代子 (はしもと とよこ) 氏

温暖化問題はいまどうなっているか

山本
山本 隆三 氏 山本でございます。よろしくお願いします。日本経済は失われた20年といわれていますが、私たちの生活はどんどん苦しくなり、貧しくなってきているというのがいまの日本の姿です。

 最初に温暖化の話をしたいと思います。最近では「温暖化」というより「気候変動」という言葉を使うことが多くなりました。先ほどの増田さんの話にエチオピアが出てきましたが、サブサハラといわれているアフリカ・サハラ砂漠の南側には、約10億人が住んでいます。このあたりは、温暖化によりこれから大変なことになりそうです。

 なぜかというと、この写真ではペットボトルを持っていますね。水を汲みに行っています。牛はやせ細り、雨が降らないから大地には草が生えません。湖も干上がっています。気候変動といわれるように、温暖化が進むと、雨が降るところはものすごく降ります。逆に、降らないところは全然降らない。すでにその兆候はこういう場所で現れているといわれています。

 増田さんの話にもありましたが、こういうところに住んでいる人の7〜8割は農業を営んでいて自給自足経済です。温暖化が進むと、雨が降らないということは農業ができなくなる。こういう場所に住んでいる人が一番困るということです。

地球環境と経済発展

 これは、衛星から撮った地球の地図をつなぎ合わせた夜間の地球です。日本列島がはっきりとわかります。電気をこれだけ使っているということですね。また、韓国は島のように見えますが、北朝鮮が真っ暗で海のように見えます。アフリカ・サハラ砂漠の南には10億人が住んでいますが、電気がほとんどついていません。この人たちのほとんどが一日100円以下で生活している人たちです。温暖化を防がなくてはいけないと思っている多くの人は、こういう人たちには大変な問題が起こるだろうと予想しているわけです。

過去135年の気温推移

 これはアメリカ政府のデータですが、135年間で1.2度ぐらい地球の気温が上がっています。波を描きながらですが、地球の気温は上がり続けています。なぜかというと、二酸化炭素が増えているからです。

2100年の地球の気温

 これは環境省が国連のIPCCと呼ばれる機関のデータを基に作ったグラフですが、2100年に最大4.8度上がると予想されています。温度上昇の予想の幅は非常に大きく、あまり上がらないケースだと、逆に下がるかもしれないという研究結果もあるほどです。2100年になると、ひょっとすると地球の気温が下がるかもしれない。なぜこういうことがわからないかというと、地球のことなので実験できないからです。温室効果ガスといわれる二酸化炭素や雲もそうですが、こういうものは太陽の光を通しますが、地球の表面で反射された熱赤外線は通さない性質があります。

 実験をすれば確認できますが、地球がそうなっているかどうかを誰も確認できません。したがって、テレビで「温暖化なんか起こっていない」という主張があっても誰も否定できません。でも、オバマ大統領は、この問題の研究者の99.5%は、温室効果ガスが温暖化を引き起こしていると認めていると言っています。

温暖化の行方は?リスクがある時に経済学ではどう対処するか?

 これはマサチューセッツ工科大学が作った「MITルーレット」あるいは「GHGギャンブル」と呼ばれるものです。

 皆さんの中で自宅に火災保険を掛けていない方はいらっしゃいますか。実は、家が火事になる可能性は1000軒に1軒ぐらいらしいです。普通は、万が一火事になったら何千万円も損するからということで保険を掛けます。月数千円なら保険を掛けるのが一般的な考え方です。

山本 隆三 氏 温暖化の問題も同じです。これは2100年の気温を示していますが、5度以上上がる可能性が4%ぐらいあります。でも1度下がる可能性もあります。非常に不思議なグラフですが、5度以上気温が上がったら札幌でマラリアが出るかもしれません。そういうリスクがあるのだったら、火災保険と同じように保険を掛けざるを得ないということです。

 ただ、火災保険料は月数千円だから掛けられますが、月50万円の火災保険だったら誰も掛けないでしょう。それと同じで、あまりにもお金がかかったら温暖化の対策はできない。「保険は掛けなければいけないが、保険料には限度がある」というふうに私たちは考えています。

温暖化問題と主要国の世論

 これは世界200カ国調査です。どの国の国民が温暖化を一番信じているか。世界200カ国で温暖化を信じている国民は圧倒的に一番下の国です。つまり日本人。国民の82%が温暖化を信じています。世界全体を見ると、温暖化は起こっていないという人のほうが多いかもしれません。非常に環境に熱心だといわれるドイツでも、実は国民の58%しか信じていません。日本人は非常に不思議ですが、みんな温暖化を信じているのに、温暖化対策にはあまり熱心ではないんですね。

2030年温室効果ガス排出目標

 世界では昨年12月にパリ協定ができました。温暖化問題に対処しなければいけない、温室効果ガスを減らさなければいけない、ということでこういう約束ができています。日本は2030年に向けて温室効果ガスを26%減らさなくてはなりません。あと15年ぐらいで減りますか。難しいですね。しかし、これをやらなければ地球は壊滅的になるかもしれない。これぐらいの保険料は払えるでしょう、というのがいまの国連の考え方です。

 

増田 温暖化と騒いでいるのは日本人なのに、温暖化対策についてはあまり熱心ではないんですね。

 

山本 そうですね。温暖化対策に世界で一番熱心な国の一つはイギリスですが、イギリスも首相が代わりました。メイ首相が就任して最初にしたことは、気候変動エネルギー省の廃止でした。彼女は温暖化にあまり熱心ではありません。なぜかというと、保険料が高すぎるから。景気を良くすることを第一と考えているようですね。

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