北海道エナジートーク21 講演録

 
トップページへ
 
組織紹介
事業計画
行事予定
活動内容
入会案内
講演録
会報誌
リンク集
ご意見・お問い合せ
 
エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

エネルギー講演会
「環境とエネルギーについて、一緒に考えてみませんか?」

【第二部・対談】

(4-2)

電力自由化で電気代は下がるか

増田 電力自由化が話題になっていますが、これから自由化のもとで電気代は下がっていくのでしょうか。

 

山本
 結論から言うと下がりません。一瞬下がるような感じがするかもしれませんが、中期的に見ると電気代は上がります。なぜかというと、電気というのは非常に難しい商品だからです。一年を通して需要が大きく変動し、一日の中でも変動します。そうなると、電力会社は一年のうち数日や数週間しか使われない発電設備を持っていなくてはいけません。電気は貯めることができますが、貯めたら皆さんの電気代はたぶん3倍か4倍になってしまいます。貯めるのにすごくコストが掛かります。

火力発電設備利用率

 これは震災前の関西電力の数字です。石油火力は一年のうち17%しか動いていません。あとの80%以上は休んでいます。会社勤めの方はおわかりだと思いますが、こんな工場があったら会社はつぶれますね。でも、電力会社はこういう設備を必ず持っていなくてはいけない。自由化したときに、こういう設備を持つ人が出てくるかどうかというのが一番問題になっています。こういう設備を持っていたら損をするので、誰も持ちたがりません。主要国で最初に自由化を始めたのはイギリスですが、27年たってもまだ回答が見つかっていません。

1kWh当たりの燃料費とCO2の排出量

 これは燃料費と二酸化炭素排出量です。石炭はいまものすごく安いです。石炭火力だったら電気代は安くなります。ただ、二酸化炭素をたくさん出します。先ほどお話しした温暖化の問題で、ひょっとしたら国は、あまり石炭を使うなと将来言うかもしれません。いまアメリカは、石炭火力を廃止しろとオバマ大統領が指示しています。そうなると、燃料代がいくら安くても将来使えないかもしれないという問題があります。

電気のコストの内訳

 これは電力会社のコストです。減らせるものがどこにあるのかと思います。少なくとも税金を払わなくてはならず、配電や送電のコストもあり、発電のコストもいりますね。その内訳を見ると、ほとんどが燃料費や減価償却費、よその会社から電気を買ったお金です。反電力会社の方が人件費を下げろと言いますが、人件費は7%しかありません。これは中部電力の例ですが、だいたいどこでも10%以下です。これを下げても、どれだけ電気代に影響するのかということです。

欧米の電力自由化からの学び

 いままで電力自由化を進めてきた国で何が起こったかについて、アメリカの例を見てみます。黄色いところは、電力自由化を始めたけれども中断した州です。白は、今年3月までの日本と同じように総括原価主義の規制州です。なぜアメリカは市場経済を信じているのにこういうことになっているのか。その理由は、一度自由化して失敗しているからです。

 「カリフォルニア大停電」という象徴的な出来事がありました。市場に任せていたら、電気代を上げるために売り惜しみをする電力会社が出てきたためです。自由市場ですから、政府は電気を売れとは命じられません。売り惜しみのすえ電気代が上がってしまい、それに味をしめた電力会社がどんどん停止していったら停電してしまった、というものです。他の州はそれを見て自由化をやめてしまったというのが、いまのアメリカの姿です。

英国の天然ガス生産と消費量

 イギリスは1990年から自由化して電気代が下がりました。政府が自国で採れた天然ガスを安く電力会社に卸したからです。ところが2000年代前半に急激に天然ガスの生産量が減り始めました。そうなると安く売るわけにはいかず、輸入したものを安く売ったら逆ザヤですから、天然ガスが上がったら電気代も上がってしまった。いまイギリスはエネルギー貧困と呼ばれる、暖房を選ぶか食べ物を選ぶかという家庭がかなり増えているといわれています。やはり電気がないというのは非常に大きな影響がありますね。

 

増田 北海道では冬に暖房をたくさん使いますから、電気代の影響は大きいですね。

 

山本 一番の問題は、電力を自由化すると、どの電力会社も発電設備を作りたがらないこと。なぜなら、発電設備を作っても自分のところの設備を使ってもらえるかどうかわからないからです。冬あるいは夏の一時期にしか使ってもらえない設備になってしまうと大損します。そこで、いまイギリス政府は何とかしようとあの手この手を使っていますが、まだ正解が見つからない状態です。

 このことについて経済産業省の方と話をしたことがあります。方策は考えなければいけないが具体策はこれから考えていくことになります。ですから皆さんは、「電力を自由化したから電気代が下がる」とは思わないほうがいいかもしれません。イギリスを見ると寡占化が進み、大きい電力会社がどんどん大きくなって電気代が上がっていったというのが実態です。

ページの先頭へ
  2/4  
<< 前へ戻る (1)  (2)  (3)  (4) 続きを読む >>