北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

’13新春フォーラム「再生可能エネルギー」の可能性と課題
【第一部】
特別講演「再生可能エネルギーの光と影」

(4-4)

世界と日本、今後のエネルギー情勢

 

日本の将来

 日本の将来を考えると、太陽光、風力については、大容量の蓄電池とスマートグリッドのような有効なシステムを込みで考えなければ難しいと思います。日本のような小さな島国にとって、スマートグリッドのような新システムの利用は今後重要になると思います。

世界の将来

世界の将来

 それで、皆さんに考えてもらいたいことがあります。棒グラフは、年間一人あたりの電力使用量を国別に示しています。多く使っている国はカナダ、アメリカ、韓国、日本などです。世界平均以下の国は、中国、ブラジル、インドの順です。中国は日本の約3分の1。インドはカナダの約26分の1です。これを見て、皆さんは怖いと思いませんか。

 何が怖いかというと、円グラフで国別の電力使用量を見ると、1番目のアメリカが22%、2番目の中国が19%、インドは4%です。日本は3番目の5%です。先ほど、一人あたりの電力使用量で見たときには、中国やインドは世界平均に満たなかったですね。

高嶋 哲夫 氏 世界の人口割合では5%にすぎないアメリカが電力使用量では22%を占め、人口割合17%のインドは電力を4%しか使っていません。中国の人口は約13億で日本の10倍。インドの人口も12億人を超えています。その人たちが、一人あたりでは世界平均以下しか電力を使っていないのです。そして、中国やインドの人たちも、日本やアメリカ並みに電力を使う権利があり、それを実際に望んでいるわけです。暑いときには涼しくなりたい。寒いときには暖かくなりたい。テレビを観たい、いい音楽を聴きたい。これは人間としての欲求ですね。

 そういう世界中の人の権利を否定することができないということは、今のエネルギーの10倍、20倍以上が間違いなく必要になります。今後、地球温暖化もますます加速されるでしょう。これからは日本だけではダメで、世界的なスケールで物事を考えていかなければダメでしょうね。日本のエネルギーをどうするかという問題を、日本人だけで考えてもある意味寂しいわけです。

世界の将来

 世界全体のエネルギーについてもう少し考えてみると、南アメリカの電化率は90%、アフリカ中南部の場合は26%しか電化が行われていません。世界には電灯もなく、冷蔵庫も使えず、テレビを見ることもできない国や地域がまだまだたくさんあるということです。

世界の将来(原子力)

 これは、3.11前の世界における原発の建設計画です。中国は2020年までに32基を計画していたことになります。トルコは5基、アラブ諸国は10基。インドは16基。先ほど見たように、インドは一人あたりの電力使用量では世界平均の4分の1以下でした。そういう人たちが「日本並みの生活を送らせろ」と言ったときに、それを否定することはできません。原発は危険だから造るなとは言えないわけです。そうなると、エネルギーについてもう少し大きな視野で考えていく必要があります。

 

「世界の中の日本」という視野で考える

 

原油の使われ方

 この図は原油の使われ方です。電力を生み出す資源には石炭、石油、天然ガスなどいろいろありますが、石油も大きな割合を占めています。しかし石油はガソリンや重油、軽油、灯油などに精製して燃やしてしまうばかりではなく、様々な化学製品の原料にもなるものです。皆さんが座っている椅子も、絨毯やデスクなども石油製品ですし、身の回りにある非常に多くの部分が石油でできています。

 ですから、石油は燃やすばかりが能じゃありません。「石油がなくなったらエネルギー資源を太陽光、風力などの自然エネルギーで補えばいい」という考え方はあまりに短絡的です。石油でしかできない化学製品もあるのです。ですから、長い目で見ると、石油は確保しておかなければならないものです。

世界の中の日本

 今後重要なのは、エネルギーは日本一国ではなく、世界レベルで考えなければダメだということです。世界人口70億人の中で日本人は1億3千万人にすぎません。世界の多くの人たちは、まだ十分なエネルギーの恩恵を受けていません。そういう人たちにも、我々と同じようにエネルギーを使う権利はあるということです。

 中国やインドなどにいる何十億という人たちが日本やアメリカ、ヨーロッパなみにエネルギーを求めるようになってくると、エネルギー情勢は5年、10年単位で非常に大きく変わっていくと考えられます。とにかく絶対量が求められることになります。

 ですから僕は新エネルギーの研究も非常に大事だと考えています。できれば、日本が先頭に立って進めてほしい。原子力や火力など従来型の発電方法、さらに発電と送電のシステムを今より効率良く改良していくことも非常に重要だと思います。

 エネルギーというのは、いわば連立方程式の一つの解です。エネルギーについては経済、工業、人々の生活、地球環境、資源、政治など様々な要素が複雑にからみ合っています。これらを解にした連立方程式なのです。その式の一つの係数が変わると、すべての解に影響が出てきます。その影響をうまく修正して答えを出す必要があります。

 やはり、日本は世界から期待される国であってほしい。そのためには、70億人の中の1億3千万人であるということを意識しながら、よりよい解を見つけ出していく必要があると思います。

 以上です。ご清聴をありがとうございました。

特別講演の様子

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