北海道エナジートーク21 講演録

 
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エネフィーメール21
 
北海道エネルギー環境教育研究委員会

'11新春講演会『地球温暖化問題の今』
【第二部】 トークセッション〜求められる温暖化対策〜

(5-3)

原子力技術の発展に向けた課題

橋本  では、澤先生、環境政策のお仕事をなさってきた立場から、原子力についてどのようにお考えになりますか。

   

 私は1981年に役所に入り、資源エネルギー庁総務課に配属されましたが、当時の原子力の割合は10%以下でした。

 皆さんも覚えていらっしゃると思いますが、1973年の第1次オイルショックのときに、日本中がパニックになりました。当時の日本は8割近くを石油火力で発電していたことから、「石油の供給が止まる=電気が止まる」という事情でパニックになったわけです。最近、石油の値段が非常に上がっていますが、パニックにならないのは、そのことによって電気が止まったりしないからです。

澤 昭裕 氏  1981年に私が役所に入ったときは第2次オイルショックのあとでしたが、「原子力をどうやって伸ばしていくかが日本の電力の安定につながるんだ」という強い思いで仕事をしていました。今振り返ると、よくここまで来たという気がします。しかし今後も、原子力を進めていかなければならないということを忘れてしまうと、また何かあったときに日本全体がパニックになる可能性もある。そういうことも考えながら進めていかなければならないと思います。

   

橋本  そうですね。そのために、原子力や省エネ技術など、日本のすばらしい技術を伸ばしていく必要がありますね。

   

 確かにそうですが、日本の技術には唯一の欠点があります。それは日本人の生真面目さに関係しているのですが、日本の製品は最後のギリギリの信頼度を0.01%上げるためにものすごいコストをかけていることが多いんです。ですから、日本の技術は非常に信頼度は高いですが、その分値段も高い。途上国でこれからインフラを整備していくときに、日本の技術を使えればいいのですが、途上国のほうが高い信頼度よりも安さを選ぶことが多いので、日本は選ばれず負けてしまうことが多い状況です。

 もちろん原子力の場合は、信頼度よりコストというわけにはいきませんが、日本は「中程度の質で中価格」というものも開発していかないと、新興国といわれる韓国や中国、ブラジルなどとの闘いに負けてしまうかもしれない。それが日本の弱点でもあります。

 安全や安心に対して、他国の人に比べれば圧倒的に日本人の要求水準は高いと思います。日本社会の一つの特徴だと思います。逆に、外からの技術は日本のインフラになかなか使われてきませんでした。日本では「消費者としていい加減な技術は嫌だ」という風潮があるからです。また、日本の技術者には誠実な人が多いということもあります。そうしたことが相互に作用して、高い技術が社会からも強く求められるし、それに対応する人材を育てようとする。それによって技術に対する期待値がまた上がる。そういう循環があるのだと思います。

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日本の国際交渉の問題点

橋本  澤先生、日本が進めようとしている25%削減目標について、エレベーターに例えた話をされていましたね。

   

 はい、国際交渉の話ですね。では簡単にお話ししましょう。皆さん、エレベーターに日本人の自分と外国人が3人乗っている場面を想像してみてください。外国人は太っていて、日本人はアスリート体型。この4人の重さで、エレベーターという地球が壊れてしまいそうな状況にあるとします。さて、誰から体重を削減すべきかというときに、「私がいちばんやせます!」と日本人が手を挙げてしまったのが今の状況です。

 こういう場合、減らせる余地が大きい人が減らした方が簡単で、国際交渉ではそう主張するべきでしょう。自分が手を挙げたからといって、他の人が同様に頑張ってくれるとは限らないわけですから。

 「このまま放っておくとエレベーターが落ちる」という恐怖感のもとで、誰が先にやらせるか、誰が先に弱気を出してしまうか。よくチキンゲームといわれますが、先に弱気を出した人が一番損をすることになっているわけです。

   

橋本  鳩山さんが25%削減を宣言したという橋本 登代子 氏先ほどのお話について、国際的に法的義務となる可能性があるなんて、皆さん知っていましたか。国民にそんな負担となって返ってくるのだったら、世界中で発表していいなんて言わなかったと思うんですが。25%削減について、日本は撤回できないのですか。

   

 仮に、挙げた手を下ろすとすれば、非常に慎重にしなければならない。25%削減目標には、「公平で実効ある枠組みの構築と、主要国の意欲的な目標合意」という前提条件があります。ですので、辛くもまだ法的義務にはなっていないのです。

 ところが、25%を下ろすとしても、「25%のところを23%にして、前提条件も外す」という考えもあるので、もしも下ろすとしても慎重にしなければいけないのです。

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